オーフェン「ドラゴンと言えばトカゲみてーな姿をして、火を噴いて、財宝を溜めこむ。そんな風に思ってるだろ」
マジク「そうですね」
オーフェン「だがありゃ作り話だ。でかいトカゲなんてのはただのダイナソアに過ぎない。本物のドラゴンは魔術を使う者をさす言葉なんだよ。言うなれば俺達魔術士も広義の意味ではドラゴンだ」
『魔術士オーフェンはぐれ旅2 我が命に従え機械』より
解説
本作におけるドラゴン種族は、一般的なファンタジー作品に登場するような「翼の生えた巨大な爬虫類」ではなく、既存の哺乳類に似た姿をした6種の種族を挿す。
なお、《牙の塔》の紋章のドラゴンは、現実世界のウェールズやブータンの国旗と同様に「力や権威の象徴」としてのドラゴン・龍の「想像図」に過ぎず、ドラゴン種族とは無関係である。(フォルテ・パッキンガム曰く、オーフェン世界の全てを包んでいる巨人「ミズガルズソルムル=ウロボロス」をイメージしている説もある)
かつて神々の持つ全能の力「魔法」を盗み出し、彼らなりの「世界改変能力」である「魔術」を作り上げた。その結果、6種族はそれぞれその代償として健全な肉体を失っている。
そして神々からの追跡から逃れるため、キエサルヒマ大陸に逃げ込み、6種族の代表「始祖魔術士(アイルマンカー)」たちによってアイルマンカー結界を構築。
そうして、6種族はキエサルヒマ大陸を安住の地としながら、いずれ来たるであろう神々の襲来に怯える日々を送り始めた。
オーフェン世界における「魔術士」とは、本来彼らドラゴン種族のことを指し、オーフェンたち人間の魔術士は後発的に誕生した存在である(ただし、オーフェンの生きる時代では「魔術士」といえば、もっぱら人間の魔術士を指す)。
モチーフは北欧神話に登場する神々やモンスター。
各種族
ウィールド・ドラゴン=ノルニル
通称「天人」「天なる人類」。人間に非常に近い種族で、緑色の髪を持つ。数百年単位の寿命を持つ長寿の種族だが、既に絶滅している。使用する魔術は「魔術文字(ウィルド・グラフ)」を媒体とする「沈黙魔術」。魔術と引換に失ったものは明示されていないが、劇中で登場するのは女性のみである。(しかし、これは単に、バジリコック砦の戦いで、ノルニルの男性が絶滅したからである。)
絶滅を避けるため、姿と生殖機能が近い人間種族と交配を行なったが、生まれた魔術士(オーフェン世界では「魔術師」という単語は無く一貫して「魔術士」と呼称される)は純粋な天人ではなく、音声魔術を扱う人間の魔術士に過ぎなかった。
ウォー・ドラゴン=スレイプニル
通称「鋼鉄の軍馬」。巨大な黒馬の姿をしており、思考だけで全てを無に帰す「破壊魔術」を持つ最強の種族。一説には「思念」を媒介とする、と考えられているが詳細は不明。「意識」を奪われているらしく、キエサルヒマ南端の地人領・マスマテュリアに棲息し、ゴロゴロと寝ながら冷気を吹き出すばかりの存在となった。
ディープ・ドラゴン=フェンリル
通称「深淵の森狼」。巨大な漆黒の狼の姿をしている。食事も排泄も呼吸も必要とせず、集団で暮らす。「視線」を媒介とし、無生物にも影響を及ぼす精神支配で世界の法則を塗り替える「暗黒魔術」を行使する。成人(成獣)の個体数を増やす力を失っており、子が成熟する為には親の死が必要となる。が、劇中では親の死を経ずに成熟した個体が登場した(一匹増えた)。
レッド・ドラゴン=バーサーカー
通称「密林の果て無き放浪者」。自分の「肉体と体液」を媒介とし、自らの肉体の全て又は一部を自由自在に作り替える「獣化魔術」を使うことが出来る。赤い熊の姿をしていることからこの名がつけられたが、実際元の姿を見たものはおらず、作中で死亡したレッド・ドラゴンも熊の姿に戻っていない。
フェアリー・ドラゴン=ヴァルキリー
通称「深紅の獅子」。小さな赤い鬣を持つライオンの姿をしている。 「契約」を媒体とし、自然界の法則を使役する「精霊魔術」を使うことが出来るのだが、五感の全てをはく奪されており、今や「聖域」に少数が生息するのみとなっている。
ミスト・ドラゴン=トロール
通称「不死の獣」。塔を背負った犀のような姿をしており、オーフェンの魔術も弾き返すほどの頑健な肉体と、1海里先の鉄鋼船すら沈めるほど強力な火力を持つ一斉奏射を得意とする。「匂い」を媒介とし天候を操る「大気魔術」を使用する。高い知能を有するドラゴン種族の中でこいつらだけ非常に本能剥き出しであり、神々により「知性」を奪われたのではないかとする説もある。漫画版によればヒデなる果実が大好物。