「悪・即・斬。それが新撰組と人斬りがただ一つ共有した真の正義だったはず」
演:江口洋介(実写映画)
演:彩風咲奈(Ayakaze Sakina)(宝塚歌劇・雪組公演)
演:廣瀬友祐(2018年新橋演舞場・大阪松竹座公演)
演:山口馬木也(2022年IHIステージアラウンド東京公演)
概要
言わずも知れた、京都守護職会津藩傘下新撰組の三番隊組長「斎藤一」その人であり、幕末における緋村剣心の宿敵の一角。数々の死地を潜り抜け生還していることから新選組で唯一不死身と呼ばれていた。
維新後は「藤田五郎」と名を変え、警官となっており、現階級は警部補であるが、警視庁の密偵でもある。初登場時にはかつての上司・土方歳三が売り歩いていたとされる石田散薬を売っていた。
原作者がデザインした花札では剣心、比古、志々雄、宗次郎、縁と共に最強系の1人として挙げられた。
剣心皆伝のパラメーターでは以下のように記述されている。
三番隊組長時代 戦闘力5・知識知恵4・精神力4・カリスマ3・個別能力したたかさ5
警察官時代 戦闘力5・知識知恵4・精神力5・カリスマ3・個別能力悪即斬5
史実の斎藤一は剣の流派は不明(無外流とも言われる)だが、一応今作において斎藤は溝口派一刀流であることがファンブックにて記されている。
人物
非常に冷徹で無愛想な一匹狼。口癖は「阿呆が」。弥彦からは「殺人鬼みたいな目つきの男」(斎藤を探してその辺の人に尋ねた際の紹介)と称れている。
己の信念でもある「悪・即・斬」を絶対の正義としており、これに反する者は例え政府高官であろうと容赦なく粛清するのが「明治を生きる新撰組の務め」だと考えている。
京都へ行く前に引導を渡そうとしたのもあり、相楽左之助から一方的にライバル視されていたが、京都での終盤に彼が炎の中に姿を消してからは「倒す」のでなく「超える」対象となった。
剣心(緋村抜刀斎)とは幕末の頃から因縁があり、お互いを好敵手と認めあう関係でもあり、いつかは決着をと望んでいた。しかし物語の終盤、剣心が「飛天御剣流が撃てなくなる前に決着を」の意図をよそに、剣心が「人斬り抜刀斎」では無くなってしまった事実を悟り、決戦を拒否した。
本編で明治11年に再会した当初は、その性格故に剣心からも「仲良くやれる奴ではござらん」と言われつつも、共闘を通じて「宿敵だが心から信頼できる仲間でもある」と思われるようになっていく。実際、単に冷徹なだけではなく、無愛想に皮肉を言いつつも、他者への気遣いを見せる場面も少なくない。また、斎藤自身も剣心から「信頼している仲間」と言われても、無言のまま否定しなかった。配下の警官達が敵に殺された際も、一見クールに「治安を守る職に就いた以上、任務の過程で命を落とす場合があるのも当然で、いちいち気にして復讐するつもりなど無い」と割り切る姿勢だが、一方で「無念の死を遂げたやつらのために任務を完遂する」とも言っており、その信念から彼なりの配慮も忘れていない。
蕎麦が好きなようで、『人誅編』にて沢下条張との待ち合わせの場所を「蕎麦屋」としか言わなかった上に、実際に居たのは蕎麦の屋台だったので彼を困惑させていた。
ヘビースモーカーとして描写されており、舶来物の紙巻タバコを吸っている。
明治に密偵として神谷道場を訪れた際は、改名後の「藤田五郎」を名乗っており、当初は眼を細くして温厚な話し方をしていた。剣心、左之助、張 、弥彦、蒼紫らからは「斎藤一」の名で呼ばれており、同僚の川路、浦村、新市らからは「藤田五郎」の名で呼ばれている。
幕末の動乱を生き延びた実力者であるが、その自負が強過ぎる故、初見の相手に対し見下す舐めて掛かる態度を見せることもある。
ストーリー上「確実に勝利」は重ねているが、その性格と牙突の性質から、技自体を簡単に見切られては反撃を食らう事態も多く、『痛み分けの勝利』に終始するケースも少なくない。
「悪・即・斬」を自らの正義として胸に秘めているが自身を悪と思わず行動をとる服部武雄から指摘された際には思うところがあった模様。
武器
仕込み杖(しこみづえ)
神谷道場での左之助の戦いで使用。
刀身に強度の劣る西洋剣(サーベル)を使用している為、牙突の威力に耐えられずへし折れる。
無銘の日本刀
幕末の頃からの愛刀。永倉曰く新撰組が結成して間もない時分に、京都の夜店で見つけた掘り出し物の刀であり、その夜店で斎藤は二振り購入したが「一本は近藤に差し上げた」と本人は語っている。それを聞いた永倉曰く「これぞ虎徹に間違い無いと信じ込んでたアレ」。
史実での斎藤の愛刀とされる鬼神丸国重と関孫六は別の刀であり、二本とも所有していたが斎藤が両方ともそれぞれ会津戦争と西南戦争にて失ったと語っている。(PSP『再閃』では斎藤の武器として無銘の日本刀と、鬼神丸国重が別に登場する)。
剣心との戦いで返した逆刃刀で両断されてしまった。
業物の日本刀
剣心に折られた愛刀の代わりに調達。
銘は不明だが、八ツ目無名異との対戦時に「化物の血で錆び付かせるには惜しい代物」と発言する。凍座との戦いで素手で粉砕されてしまった。
キネマ版での愛刀
鎺の部分が長方形状に突出しており、そこに「悪・即・斬」の銘が彫られている。
幕末時代に、牙突・零式と剣心の天翔龍閃(てんしょうりゅうせん)との打ち合いで粉々に砕ける。明治時代では、同じ悪・即・斬の銘が彫られた刀を携帯している。
技と能力
牙突
刺突の極地にも等しい斎藤独自の必殺技。
右手を前に突き出し、刀を持つ左手を後ろに引いて、刃を地面に水平に構えた状態で猛烈な速度で突進して突きかかる、平刺突(ひらづき)を絶対の必殺技にまで昇華させた、桁外れの威力の左片手平刺突(左片手一本突き)。避けられても即座に横薙ぎの攻撃に移行できる。平刺突の考案者は新撰組副長土方歳三で、かつて新撰組隊士だった鵜堂刃衛も、剣心との対決で片手平刺突を使用する。
斎藤は牙突以外の目立った技を持っていないが、それは「戦場では同じ相手と二度以上相対することはきわめて稀であり、見切られる心配をして多数の技を考案するよりもおのれの得意技を徹底的に磨き上げ、戦ったその場で相手を一撃で確実に仕留める方が合理的である」とする理論に基づく。キネマ版での剣心からは、「その速度は射矢よりも速く、その精度は弾丸をも貫き、その威力は砲弾をも砕く」と評される。
突進術である故に視界が狭くなり、軸とする右手側から回り込んで間合いの外から攻撃すれば、横薙ぎの攻撃も届かず反撃できない弱点もあるが、斎藤の剣腕さえあればその弱点もいくらでも克服可能(例として青龍戦では、右手を突き出して顔面を抑えた上で零式に繋いで破った)。剣心曰く、「牙突を返したぐらいで斎藤を倒せるのであれば、幕末で戦った時に決着は既に付いている」との事。
史実の斎藤の得意技「左片手一本突き」を少年漫画風にアレンジしたもの(作者談)。史実でも片手平突きからの横薙ぎの戦術は、新撰組隊士に伝えられている。
実写映画版第1作目では剣心と戦った際には使用せず、武田観柳邸のシャンデリアを破壊する際に一度だけ使用される。『京都大火編』では冒頭で志々雄に対して使おうとしたが、構えただけに留まる。『伝説の最期編』では海岸で襲いかかって来た宇水を倒す際に使用され、煉獄の内部で志々雄にも放つが通用しない。
キネマ版では回想での抜刀斎戦でしか使用せず、外印との戦いでは敢えて殺さないようにする為に右片手平刺突を使用する。
下記のように、状況や間合いに応じた型分けがある。
- 牙突・壱式(がとつ・いっしき)
通常の牙突。劇中で最も多く使用された。
片手で放つ以外は通常の平刺突を同じ性質を持ち、刀ではなく拳を放つ無刀版も存在する。
飛天御剣流最速の突進術「九頭龍閃」に匹敵する突進力を持ち、その威力は鋼鉄の扉ですら一撃で粉砕する。
- 牙突・弐式(がとつ・にしき)
斜め上から突き下ろす形の牙突。別名正真正銘の牙突。
アニメでの志々雄との対戦時は、高く跳躍してから使用する。
- 牙突・参式(がとつ・さんしき)
対空迎撃用の牙突。別名対空の牙突。上空にいる相手に向かって下から突き上げる。
神谷道場での剣心との戦いで使用。アニメでは志々雄に対しても使用する。
- 牙突・四式(がとつ・ししき)
瞬撃特化の牙突。北海道編で初登場。初動を最小限に抑えた無拍子状態から、最短・最速の一撃を放つ。この際、刃と峰がほかの型とは逆向きとなるのも特徴。他の型よりも瞬発的に繰り出せる利点がある分、威力では最も劣る。
- 牙突・零式(がとつ・ゼロしき)
間合いのない密着状態から、上半身のバネのみで繰り出す牙突。アニメ版では体を回転させて加速を付ける動作が加わった。まともに決まれば相手を胴から真っ二つにする破壊力を誇る。壱式を受け止められた際の追撃にも用いられる。斎藤はこれを「抜刀斎と決着をつける時のとっておき」だと宇水に語る(しかし剣心との対決の機会がなく、結局使用はされなかった)。
京都編での宇水との戦いで初使用しトドメを刺すが、志々雄には初見で回避され反撃を受ける。人誅編での八ツ目との戦いでは、手加減をした状態で使用するが、それでも左腕を完全に粉砕した。暴走した鯨波にも使用したが、持ち前の体躯による頑丈さに加えて、既に精神が肉体を凌駕していた為に平然と起き上がってきた。
OVA『新京都編』では志々雄に繰り出すも、原作と同じく鉢徹に防がれるが、その後の剣心との対決の際にはこの時の一撃が勝負の行方に影響を与える。
キネマ版では新撰組時代に剣心の天翔龍閃(てんしょうりゅうせん ※キネマ版での振り仮名)の迎撃の為に使用し、互いに刀が砕けて引き分ける。
別途 牙突零式 も参照あれ
- 牙突・六刃(がとつ・ろくじん)
PS2『炎上!京都輪廻』でのみ使用するオリジナル技。
超高速で敵に接近し一瞬で牙突の六連撃を繰り出す。技の性質は九頭龍閃に酷似している。
身体能力
剣心と違って徒手空拳でも強く、剣心を捕えて脱いだジャケットで首を締め頸椎を折ろうとしたり、刀を使わずとも怪力自慢の左之助(この時の左之助は手負いだったが)をボコボコにしている。剣心との戦いではベルトをムチ代わりに使って金具で手を砕いたりもしている。
更に八ツ目無名異よりも高く飛ぶ、攻撃を軽々といなす等、身体能力も常人離れしている。
余談
所帯持ちなのは史実の通り(作中では触れられていないが作中、明治11年の時点では既に長男・勉も生まれている)だが、剣心と操がそれを聞いて有り得ないレベルで驚愕し、斎藤の奥さんの時尾をたいへんな人格者だろう(でないと務まらないという意味)と評しており、弥勒菩薩像の様な想像図を思い浮かべていた。
尚、赤間倭子(著)の『新選組副長助勤 斎藤一』では、編集者の勉強不足から帯(帯紙)に「人気漫画「るろうに剣心」の主人公、新選組最強の剣士、斎藤一の激動の生涯を描く」と記され、ネットでは一時総突っ込みとなっていた。本自体は真っ当な本だけに作者はとんだ迷惑である。
人気の高いキャラであるが、原作者から見て失敗したキャラクターの1人と認識されている。
その理由は「コイツの前ではどんな強敵もザコになってしまう」から。仕方ないね。
二次における扱い
あまりにも印象が強過ぎて、斎藤一と聞くとこの剣心に登場する斎藤をイメージする人が多く、斎藤一と妻の高木時尾(藤田時尾)との夫婦イラストには、剣心の斎藤が描かれている場合が多い。
フタエノキワミ、アッー!シリーズにおいては、ゲイの警官としてその名を轟かせている設定。(主に『濃厚なヤツが射精るぞ!アッー☆』『ゲイの警官だブロックしろ!』『レイプする、サノ好きだから☆』等の空耳が原因)。
また、英語版では発音の都合で牙突が「ガトチュ」と聞こえてしまったから、ガトチュが彼の通称として使われる場面も。