概要
通常の刀を水平にした平刺突(ひらつき)技の一つ「左片手一本突き」を極限まで鍛え、昇華した技である。
深く腰を落とし刀の切っ先を相手に向け、その峰に軽く右手を添えた状態(ビリヤードのキューを構えたような状態と言えばわかり易い)から中距離の間合いを一瞬で詰めて突進、標的を貫く。その特性上、素手で撃つ事もできる。建物の壁や頑丈な門をも一撃で粉砕する威力を持つが、刀に掛かる負荷も大きく、量産品の軍刀やサーベル程度では一度の使用にも耐えられずに折れてしまう。
上述の通り斎藤はこの技を徹底的に鍛え上げる代わり、これ以外の目立った技を持たないが、これは新選組の戦闘に対する考え方として「戦場で2度同じ相手と戦う事は極めて稀であるため、技を見切られる心配をしてあれこれ小細工を弄するよりも、最初の一度で敵を確実に仕留める絶対の必殺技を1つ持つ方が良い」という理論による。
しかし牙突は全く見切られず相手を一撃で仕留め続けてきたのかというとそうではなく、作中だけでも何度か見切られて回避されたり返し技でカウンターを食らったりしたことがある。
ただ、見切った中のうち剣心との戦いは「一度の戦いの中で何度も牙突を繰り返す」という戦略的失敗を犯したからであるのに加え、剣心に刀を破壊されて零式すら出せなくなってしまった(斎藤は素手でも牙突を使えるが、零式の特性上間合いがさらに短くなるので使わなかったと見るべきだろう)
その状態でも制服のベルトを使うことで逆刃刀を弾き飛ばし、そのまま素手でフルボッコして剣心の反撃を受けつつも「次が互いに最後の一撃になる」ところまで追い詰めている(最終的には勝負が水入りとなって流れてしまっている)。
左之助との第二戦では(徒手空拳の左之助に合わせて刀を手放していたので)刀なしの牙突をトドメとして顔面に撃っているが、耐えきられたために逆に左腕を抑え込まれて粉砕されそうになった。この時は右手で左之助を殴り飛ばして窮地を脱している(尤も、左之助はこの時斎藤の左腕を潰す事よりも斎藤を言い負かす事を優先していたので左之助が本気でそのつもりだったら危なかった可能性はある)。
見切ったと豪語して2度目でカウンターを合わせてきた四星・青龍は基本形の牙突を返しただけであり、斎藤がちょっと応用バージョンの行動をしただけであっさりと対応できずに撃破されている(上記でフルボッコにされた剣心からは「牙突を見切ったくらいで斎藤を倒せるのならあいつとの決着は幕末でついている」と酷評された)。
本当の意味で初見の牙突を見切ったのは、至近距離の零式を回避してなおかつ斎藤に痛打を与えて見せた志々雄真実だけと言える。
なお、剣心は刀狩りの張に対して「拙者を突き殺すつもりなら斎藤の牙突以上の技を撃ってこい」と豪語している(つまり斎藤レベルの刺突でなければ通じないということである)。
この技自体は原作者和月伸宏の創作であるが、実在の斎藤一が原型である「左片手一本突き」を得意技として日々腕を磨いていたのは史実であり、和月自身も少年漫画風にこれを発展形の技としてアレンジしたものと単行本ワンコーナー内で公言している。
ちなみにではあるが、右手よりも柄頭付近を握る左手の方の力により重きを置くのは剣術・剣道においては基本(太刀筋の安定と距離が稼げるため)であり、この技や左片手一本突きの史実をもって斎藤を左利きであると思うのは早計である。
そもそも、斎藤は日常シーンでは右手で物を扱っている場面が多い。
当たり前だが斎藤は右片手一本突きも使える。
(キネマ版で外印を倒した時に使用。この時の言動から明らかに手を抜いている事がわかる為、外印のプライドはズタズタになった)。
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牙突の型分け
壱式 |
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通常の型で、突進と共に最短ルートを真っ直ぐに刺し貫く。これだけでも尋常でない破壊力があり、左之助の肩に当たっても尚、背後の土壁を粉砕してのけた。 |
弐式 |
「正真正銘の牙突」。通常の構えより少し柄尻を持ち上げたような状態から突進、斜め上から突き下ろす。壱式より威力が高いと思われるが、作中では一度も命中しなかった。ゲームでは上空から打ち下ろす牙突という扱いになっている事が多い。 |
参式 |
「対空の牙突」。構えから跳躍しつつ斜め上へ突き上げる、対空迎撃用。剣心の龍槌閃を発動前に撃ち落した。 |
四式(ししき) |
「瞬撃特化の牙突」。北海道編で初登場。初動を最小限に抑えた無拍子状態から、最短・最速の一撃を放つ。半身の構えを取る他の型分けとは違い、胸部正中で刀を構えて繰り出す。この際、刃と峰がほかの型とは逆向きとなるのも特徴。他の型よりも瞬発的に繰り出せる利点がある分、威力では最も劣る。作中では劍客兵器部隊将である雹辺双の頭部を刺し貫くが、決定打に至らなかった。さらに、破損した本来の愛刀よりも強度の劣る支給品の刀で放ったため、威力に耐えられず折れている。 |
零式 |
「人斬り抜刀斎用のとっておき」。間合いの無い密着状態から腹筋・胸筋・背筋・両腕等上半身の撥条(ばね)のみで瞬時に極限まで振りかぶった刀を繰り出す、斎藤の奥の手。まともに喰らえば人体が真っ二つに千切れ飛ぶという非常識なまでの破壊力を誇る。(詳細→牙突零式) |
牙突の姿勢のまま突進 |
人誅編にて四星・青龍に繰り出す。技と言うよりあえてイレギュラーな行動をとって見せるための応用行動。牙突を見切ったと豪語する青龍に対して、牙突と見せかけて右手前のまま突進し、顎を掴んで握力で粉砕した。更にその状態から零式に繋げた。 |
余談
pixivでは上記の構えをとっているポーズにも用いられる。
まれに左右逆転していてもタグが付いている。
作中では斎藤がこの構えをとっている(斜め前方からの視点の)コマは比較的多く、汎用性が高く読者の脳内に残りやすい。
「ガトチュ」と言われることがあるが、英語吹き替え版の影響である。
(これは英語版に翻訳する際、英語圏の人には「つ」の発音がしづらく、「チュ」になってしまったのが原因である。)
さらに英訳版で「ガトツ・サードスタイル」「セカンドスタイル」「ゼロスタイル」などの発音が、「ガトチュ☆パンツスタイル」「ガトチュ☆石鹸スタイル」「ガトチュ☆エロス☆タイム」など、散々な空耳で呼ばれているが、実際にそう聞こえてしまうのだから仕方ない。
おまけに日本語版も「こたつ零式」などと呼ばれている。
上記の通り、作中斎藤は素手でも牙突を撃っているのだがゲーム「炎上!京都輪廻」ではよりにもよって左之助との素手での戦闘で牙突を含めた刀を使う技が完全に封印される。このゲームの斎藤の基本的なコンボは牙突・壱式が絡んでいるので主力技を完全に奪われた状態になる。それをゲーム開始二戦目のまだ斎藤の能力にプレイヤーが慣れていない状態でやられる。これにより初見のプレイヤーは原作とは逆に左之助にフルボッコされてしまう可能性が高い……。
MAD作品では牙突の突進状態のコラ画像をひたすら平行移動させるという荒技も多い。
関連イラスト
斎藤一
その他(斎藤以外によるもの)
斎藤一だけど・・・
あんたら作品が違うだろ!