概要
古来より悪を滅する使命を連綿と受け継ぐ忍者集団『龍の一族』の末裔であるリュウ・ハヤブサが、様々な忍術を駆使して世界を脅かす巨悪に立ち向かう。
忍者である設定を活かしたアクロバティックなアクション性や場面に応じた忍術の使い分けが問われる戦略性に富む一方、プレイヤー心理を的確に捉えた綿密な敵の配置や行動パターンが著しい進行の妨げとなっており、『魔界村』や『悪魔城ドラキュラ』に並ぶ高い難易度を誇る。
その反面で、細密なドット絵やBGMを巧みに組み合わせたビジュアルシーンを毎ステージの前後に挿入し、映画のような展開で臨場感と重厚感を表現する独自の演出手法「シネマディスプレイ」を確立した画期的な作品でもあり、その絶大な人気に後押しされてテクモ(現・コーエーテクモゲームス)の看板シリーズに名を連ねた。
作品
忍者龍剣伝
1988年10月に北米地域でアーケードゲーム版『NINJA GAIDEN』が稼働開始。1ボタン付き8方向レバーと筐体の2ボタンを組み合わせた5種類の動作『忍者五体技』と道中のアイテムを駆使するベルトスクロールアクションゲームであり、「シノビ」(曲解された日本のイメージに登場する忍者)をコンセプトとしている。
ただし、この時点ではリュウ・ハヤブサとしてのキャラクター設定が成されていない(実際の主人公も「忍者」としか記されておらず、後のシリーズ設定においてもリュウ・ハヤブサと同一人物であるかは明言されていない)ため、「最初の忍者龍剣伝」でありながら正史としては扱わないという意見が多数を占める。
同年12月9日になると、コンシューマゲーム作品として大幅な路線変更を施したファミリーコンピュータ版が発売される。これから約8ヶ月前に発売された『キャプテン翼』を元祖とするテクモシアターシリーズの第二弾であり、前述のゲーム性と演出の相乗効果によって一部で爆発的な人気を博す。この結果、正史の第一作としてはこちらが採用される運びとなり、さらにテクモシアターシリーズの代名詞として燦然と輝く作品となった。後の1992年1月24日にはグラフィック、BGM、攻撃パターンや配置に手を加えたリメイク作品がPCエンジン(Huカード形式)版で開発され、ライセンス契約を結んだハドソンが販売を手がけた。
この当時から、海外で大きなゲーム市場を有する北米方面での販売に注力しており、アーケード版の輸出の後も1989年3月にライセンス契約を結んだNOA(Nintendo of America)経由でファミコン版が、1991年には同じくライセンス契約を結んだAtari社経由でAC版の移植がAtari Lynx(他にもHi-Tech ExpressionsからのIBM-PC移植版がある)に発売された。
一方、欧州ではAC版『SHADOW WARRIORS』がOcean SoftwareからAmiga、コモドール64、AtariST、ZX-Spactram、Amstrad CPCに移植されている。これらを起因として北米圏では『NINJA GAIDEN』、欧州圏では『SHADOW WARRIORS』と改題されたタイトルが浸透し、世界的に普及するゲームソフトシリーズの1つとなった。
ドキュメント型バラエティ番組『ゲームセンターCX』で奮闘する有野課長は、特に印象に残っているゲームとして本作を挙げて「魔界村の比ではない」「たけしの挑戦状から数えて最も難しい」と評している。また、これによりマイナーだった本作を広く世に知らしめる一役を担っただけでなく、有野課長が挑戦するゲームに対する名言「鳥ー!!」を生み出し、ドラゴンアレルギーに続いて鳥アレルギーを患ったが、サポートADの礎を築いた東島(初代)、笹野(二代目)、浦川(三代目)の揃い踏みによって感動の完全攻略を果たした。
忍者龍剣伝II 暗黒の邪神剣
1990年4月6日に正式な続編として発売され、この作品からサブタイトルが付与されるようになった。「梯子以外の壁面を自由に昇降できる」という重要なアクション要素が加わって前作の操作性の難点が解消された一方、狭い足場や複雑に入り組んだステージ構成がさらに多くなったことで1ステージのボリュームが格段に増加し、ステージによっては突風や水流、雷の明滅時にのみステージ構成が明らかになる暗闇など、自然現象の概念と影響を取り入れた動的なステージトラップが随所に盛り込まれており、前作を凌駕する難易度を誇る。
忍者龍剣伝III 黄泉の方船
1991年6月21日にさらなる続編として発売され、これを以って忍者龍剣伝における正史三部作が完結する。敵の配置やステージトラップなどに見られる緻密な設定はそのままに、敵キャラクターの大型化や攻撃パターンの見直しと武器強化アイテム『龍神剣』の追加、さらにアイコン入力によるパスワード方式が導入され、難易度が若干抑えられた間口の広い作品となっている。なお時系列としてはIIの前になっている。詰まり時系列で並べるとI→III→IIの順で進行することになる。
因みにシリーズ通して最も中二病全開な作品。
忍者外伝
ゲームギア用ソフト。外伝作品の1つで、日本システムハウスが開発しセガ(現・セガサミーグループ)から1991年11月1日に発売された。操作性はファミコン版の第一作に近いが忍術の入力が「方向キー下+ボタン」であったりと多少の違いがある(ファミコン版は「方向キー上+ボタン」)。ストーリーは魔人シュラゲインとその配下の者達と戦うという独自のもの。
NINJA GAIDEN
マスターシステム用ソフト。セガから1992年7月に欧州市場向けに発売された。開発はシムス。軽快な操作性や広大なマップを自由に行き来する探索型進行、抜け道によるショートカットや隠し部屋の存在、ファミコン版以上に簡素にまとめられたGUIなど、バンダイナムコゲームスがゲームセンターCXとのタイアップ作品として発売した『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』に収録されている『からくり忍者 ハグルマン3』に酷似する点が数多く見られるが、両者の関連性は不明である。
忍者龍剣伝GB 摩天楼決戦
1991年12月13日に発売された外伝作品の1つ。受注委託開発がメインであるナツメ(現・ナツメアタリ)が開発を担当した外注作品であり、自社が制作したファミコン用忍者アクションゲーム作品『闇の仕事人 KAGE』をゲームボーイ用にプログラムし、その上で忍者龍剣伝の世界観に沿う形に整えた実質上のリテイク作品である。
忍者龍剣伝 巴
1995年8月11日に発売されたパック作品。ファミコン版の三部作をスーパーファミコン用にリメイクして1本のソフトに移植、収録したもので、音源や描画能力の向上に伴うシネマディスプレイの強化と手直し、パスワード方式の共通化、IIIのみ海外版のエネミーパターンを採用して難易度の底上げを図るなど数々の特徴が窺える。
ところが、表現力が豊かになったはずの音源が仇となって原版BGMの良さを損ね、特に海外版の採用によって大幅な変更が加えられたIIIでは一部ステージBGMの差し替えが行われた他、動的オブジェクト(動く足場など)が画面上から消えて無くなる致命的なバグを抱えているなど、移植に際しての手直しの甘さが強調された改悪のイメージが定着したことで黒歴史の汚名を着る結果となった。
後述する『NINJA GAIDEN』の無印版でも、おまけモードとして遊ぶ事ができる。
NINJA GAIDEN
2004年3月11日に発売された外伝作品の1つ。元々は国外販売用に使われていたタイトルを正式に冠し、3Dアクションアドベンチャーゲームとしてシリーズを復刻した最新作。自社が制作した対戦格闘ゲーム作品『DEAD OR ALIVE』シリーズで培った技術による流麗な動作が特徴だが、一対一を前提とした戦闘システムであるにもかかわらず常に複数人との戦闘を強いられる別次元の難易度を誇るために批判が相次ぎ、これに対して開発リーダーの板垣伴信がゲームメディアのインタビューで述べた「難しいならできるようになるまで頑張れ」「上達することも面白さである」とする主旨の発言が物議を醸す事態に発展することとなった。
しかし、国内の冷ややかな評価に対して海外では早々にミリオンセラーを達成したモンスタータイトルであり、これを基本として追加要素を拡充したアッパーバージョン及び続編である『NINJA GAIDEN 2』『NINJA GAIDEN Σ』『NINJA GAIDEN Σ2』『NINJA GAIDEN Dragon Sword』などが展開されている。
余談
- 後に『風のクロノア』を手掛けた吉沢秀雄がFC版の1作目から携わっており(『1』『2』がディレクター、『3』がプロデューサー)、後に同氏がプロデューサーとして開発に参加したニンテンドーDS用ソフト『超劇場版ケロロ軍曹3 天空大冒険であります!』で2つのシリーズのエッセンスを加えている。
ちなみに、吉沢はXbox版以降のNINJA GAIDENシリーズに関与していない。
- 前述の様にシリーズ最初の作品はAC版の忍者龍剣伝だが、これは「最初は北米地域で稼働が開始され、日本版が稼働したのはその翌年(日本でのAC版稼働開始は1989年2月)」という経緯を経ている。そのためこれを知らない者が「FC版の1作目がシリーズ最初の作品」と間違ったことを書くケースも方々で見られた。
- AC版の続編として「ニンジャ外伝2」のロケテストが1994年7月に都内のテクモ直営店で行われたもののそのままお蔵入りになっている。プラットフォームはMVS。少ない情報によると前作同様のベルトスクロールアクションでプレイヤーキャラは3人から選択可能。うち1人は「忍者装束ではなくジャンパーを着た野生味溢れる格好のリュウ・ハヤブサ」というあか抜けた(?)出で立ちであったという(一応、こちらはOPでCS機版作品のリュウ・ハヤブサと同一人物であることが明かされている)。