概要
クモガタ類(クモ型類、Arachnid、学名:Arachnida)とは、鋏角類に分類される節足動物のグループの1つ。
分類学上はクモガタ綱という。古くは蛛形綱(ちゅけいこう)、近年ではクモ綱とも呼ばれるが、誤解を招きやすい。なぜなら本群はクモだけではなく、サソリ・ダニ・ザトウムシなど、他に幾つかの分類群(目)をも含まれる(「クモ」はそのうちの「クモ目」のみに当たる)。
クモガタ類の共通点は、前体・後体(一般に「頭胸部・腹部」と呼ばれるが、体制的には「頭部・胴部」である)という2パーツのみからなる体と、1対の鋏角・1対の触肢・4対の脚を前体に持つこと。昆虫や甲殻類などに見当たる触角や顎はない。目も0、1対から数対の単眼であり、複眼はない(一部の原始的な化石種サソリのみ複眼を持つ)。
ほとんどが肉食性で、液体状の餌しか摂れない。例外としてダニの食性は非常に多様で、ザトウムシは固形物の餌を咀嚼できる。また、1種しかないものの、植物成分を主食とするクモも存在する。
少なくとも4億年以上ほどの長い進化史を持つ。現生のものは、進化史から遺存したような小規模(数百種か百種すら満たさない)な分類群が多い。
しかしその中で、クモとダニが飛び抜けて数万種に多岐して様々な環境へ駆け出したおかげで、クモガタ類は総勢10万種以上を含んだ大グループとなり、節足動物の中では昆虫の次に陸上で最も多様化していた。
誤解されがち
いわゆる「虫」と呼ばれるグループで、同じく陸生節足動物ではあるがよく昆虫だと誤解される。ただしクモガタ類は鋏角類である一方、昆虫は六脚類という別系統に属しており、以下の相違点で区別できる。
毒グモや毒サソリ・病気を媒介する一部のダニ・もしくは単に見慣れない姿から、様々な原因と誤解で恐怖の対象とされやすい動物である。様々な神話・伝承・フィクション作品の中でも、クモガタ類は禍々しい悪役とされがちである。
しかし実際、我々と関わらずに自由生活するダニの方が多数派であり、クモとサソリは自発的に人を襲わず、人の健康に影響を与えるほどの猛毒をもつ種も僅かしかなく、ほとんどのクモガタ類は人間に無害な生物である。
それどころか特にクモは人や人の育てる作物に対して害をなす昆虫を好んで食べるために益虫と呼ばれることも多い。見た目こそ巨体で怖がられるが、衛生害虫である室内のゴキブリ等を好んで襲い、食するアシダカグモは主にネット上でアシダカ軍曹と呼ばれて親しまれており、好まれているクモガタ類の代表格と言えよう。
分類
クモ
本群において最も広く知られる代表格。鋏角は毒牙に変化し、腹部から糸を出せる。風評被害されがち。
サソリ
クモの次に有名なグループ。触肢はハサミで、腹部の後半が毒針を持つ尾のように特化した。
ダニ
まとまった体をもつ微小動物。地球上のあらゆる場所に生息し、生態は非常に多様である。
ザトウムシ
多くの種類は豆のような体を細長い脚で支える。自衛のために自切した脚はしばらく動ける。
カニムシ
土壌や樹皮裏に住む微小動物。尾のないサソリのような姿を持つ。
ウデムシ
触肢は腕のように張り出した鎌。第1脚は触角のように長く伸びる。
サソリモドキ
鞭のような尾をもつ。触肢は頑丈でハサミと鎌を併せたような形。
ヒヨケムシ
くちばしのような巨大な鋏角をもつ。主に乾燥地域に生息。風評被害されがち。
ヤイトムシ
サソリモドキを小型化したような姿をの微小な土壌生物。パワフルな後脚でジャンプできる。
クツコムシ
謎の多い分類群。全身が硬い外骨格に覆われ、口の前に蓋のような構造をもつ。
コヨリムシ
謎の多い分類群。体は白くて色薄く、紙縒(こより)ような尾をもつ微小動物。
関連条目
蜘蛛 蠍 ダニ ザトウムシ ウデムシ サソリモドキ ヒヨケムシ ヤイトムシ クツコムシ コヨリムシ
昆虫(混同)