概要
『二次創作』とは、何らかの下地となる作品・表現があり、それらを元にしている創作物および創作行為を指し、英語圏では『fanfic』や『au』とも呼ばれる。
類語として『三次創作』があるが、これは「二次創作に影響を受けて作られたもの」を指し、さらに三次創作に影響を受けて作られたものを『四次創作』と呼ぶなど、以降も付けようと思えばいくらでも増やすことが出来るが、イラスト・同人界隈でのみ通用する言葉であり、本来はどれも二次創作の一種である。
詳しくは『三次創作』の記事を参照。
権利者が作成した画像や文章を少し加工して転載したり、素材に利用した場合は『二次転用』『二次利用』と呼ばれるが、似て非なるものであるため、この記事では割愛する。
二次創作と著作権
二次創作は権利者との間で著作権問題が発生しがちなため、度々“二次創作は法的にグレーゾーン”だとよく言われており、特に権利者に無許可な二次創作は、事件性を帯びる可能性がある。
法務のプロと話し合った所、「いや訴える人がいないから罪にならないだけでほぼ真っ黒です」と言われたをはじめとした投稿意見がネット(SNSも含む)では多々ある事から、ネットユーザーの間では、
- 「何も言ってこない(黙認)ということは合法」
- 「プロや法律専門家がこう言っているから、二次創作は黒に近いグレーだ!」
- 「権利者の著作物を盗んでいるから100%違法」
などと、擁護派・懐疑派を問わず極端な主張をする者もいるが、どれも恣意的な極論であり、後述する創作ガイドラインの存在を全く考慮していないなど、現代の二次創作事情を見ておらず、単に抱いている印象論を法的問題へとこじつけたり、2000年代までの古い知識や認識・常識で語っている場合が少なくない。
著作権は親告罪(権利を持つ人が訴えたら犯罪になる)であるため、当該の二次創作作品が合法か違法かを判断するのは、法律専門家でもネットの意見でもなく、権利者である。
またマンガ出版社などの場合、各作品の著作権は原作者に帰属されるケースが多く、仮に出版社が著作権に厳しいからといって、必ずしも作者本人が二次創作を禁止しているとは限らない事は留意されたし。
ただし出版社は、著作権の一部(例えば出版権)の独占契約を原作者と結ぶことも多い。その場合著作物の出版・流布などは出版社の許諾を得る必要がある。
また出版物については、出版社に著作権が帰属する。そのため、ほとんどの商用作品は出版社に許諾を得る必要があることにも留意が必要である。
特殊な事例としては、製作者が後になって巨大な名声を獲得し、権利者の許諾を受けて商業媒体でのソフト化が行われた庵野秀明総監督の自主製作映画『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』のような作品もある。
アメコミの二次創作は日本の漫画のそれとは考え方が少々異なり、「二次創作も『公式作品の一部』」として扱われる場合が多い(ファンアートによって二次的に創作された要素が公式に逆輸入されるケースが多いなど、「創作物はファンと共に作り上げるもの」という認識が一般的に存在している)。海外のペイントソフト紹介の絵の中に、アメコミキャラクターといった二次創作が掲載されている事があるのはそのため。
日本においても、『ガンダムセンチュリー』を介して内容がガンダムシリーズの公式設定に取り込まれたスタジオぬえの同人誌『Gun Sight』のような類例は存在する。
Open Postにて二次創作を認めている団体を公開されている。
二次創作ガイドライン
2010年代にはTPP問題も相まって、このような二次創作の先行きに懸念が強まったこともあり、「二次創作ガイドライン」を設け、公認する(黙認ではない)ケースが増えてきている。ガイドラインによっては二次創作による営利活動を認めている場合もある。このことから「二次創作はグレーゾーン」とは必ずしも言えないケースが生まれてきている。もちろん、その場合はガイドラインに則った形での活動を求められる。
なお、大手企業の多くは、ガイドラインにて二次創作を禁じている。具体的には、小学館、集英社、講談社、きらら系の芳文社等である(他にもある)。
また、ガイドラインにて例えばウマ娘のガイドラインのように許諾を与える旨の文章は記載されていないことも多い。
許諾を与えるガイドラインもあることにはあるが少数派であろう。そのため、ガイドライン守れば良い、という発言は二次創作をする上で盾にならないことに留意が必要であり、個別に考えるべきである。
ガイドラインで二次創作を認めている作品については、二次創作ガイドラインの記事にリストがある。
なお、ガイドラインによっては、ファンアートなどを公式が二次創作者の承諾無しに利用することができるなどの規定が設けられている場合がある。
その他、正式に二次創作が可能な例
- pixiv運営と各作品の公式がコラボしたイラストコンテスト。
- 描いてもいいのよタグがつけられたオリジナルキャラクター。
- 古典文学など著作権が切れた作品の二次創作。
- ライダー・ウェイト・タロット(※著作権が切れているが、細部の改変・調整や塗り直しがある場合は著作権が発生する)。
二次創作を一部または全面禁止している作品
- 上記二次創作ガイドラインおよび二次創作に厳しい作品一覧を参照。なお「二次創作に厳しい作品一覧」については、不正確な憶測や風評に基づいて書かれている部分が多いので注意。
二次的著作物に関連する訴訟
ゲームショー取材動画発信者情報開示請求事件 東京地裁令和3.4.23令和2(ワ)5914では
判決文においてポパイのネクタイ事件について言及したうえで二次的著作物として著作物性を有するものについて記された。
判決文9ページから抜粋
(前略)
争点1(権利侵害の明白性)について
(1) 争点1-1(本件原告動画の著作物性(「二次的著作物」該当性))につい
て
ア 「二次的著作物」については,「著作物を」「翻案することにより創作し
た著作物」であると定義されており(著作権法2条1項11号),二次的
著作物の著作権は,二次的著作物において新たに付与された創作的部分の
みについて生じる(最高裁判所平成4年(オ)第1443号同9年7月1
7日第一小法廷判決・民集51巻6号2714頁参照)。
そうすると,本件原告動画が本件プレイ動画の二次的著作物として著作物性を有するとい
えるためには,本件プレイ動画の具体的表現に修正,増減,変更等を加え
ることにより,本件プレイ動画における創作的表現とは異なる新たな創作
的表現が付与されていることを要するものと解するのが相当である。
(以下略)
加えて権利者の許可を受けたと言うのは準備行為であって表現そのものではない、つまりそれだけでは創作的表現が付与されたという根拠とならないという旨が記された。
判決文13,14ページから抜粋
(前略)
(イ) また,原告は,①本件原告動画の作成に当たり,本件ゲームの公表情
報や発表会の実施日程に関する情報を事前に入手したこと,②株式会社
ナムコの担当者から,本件プレイ動画の撮影に関して許可を受けたこと,
③取材方法や撮影アングルなどを検討の上,撮影機材を取捨選択して,
本件プレイ動画の撮影をしたことに創作性が表れていると主張する。
しかしながら,上記①及び②の各行為は,いずれも,本件原告動画を
作成するための準備行為にとどまり,表現行為そのものではないから,
本件原告動画に創作的表現が付与されたことの根拠にはならない。
(以下略)
こうしたことなどから発信者開示に必要な要件を満たすことができず開示請求は棄却された。
最後に
ライトノベル『ゼロの使い魔』原著作者ヤマグチノボルは以下の通り発言した。
法律的にアウトな現状はおかしいし、ヤクザなんかが入り込む余地にもなる。だから法的にセーフになるようなシステムを作ったほうがいいんじゃないかって思うんです。
なお、音楽にはJASRACという組織があり、著作物の利用に関し、権利者に利益を還元する仕組みが構築されている。これは、上記で述べられている「法的にセーフになるようなシステム」と言えるだろう。
そのような仕組みがないために、現時点では二次創作による著作物の無断利用が常態化していると言える。
著作物の無断利用をやめるようにと訴えることは、イラスト・漫画版のJASRACを生み出す原動力になるだろう。
検索上の注意
オリジナルを探す目的で検索から「創作」を検索すると、この「二次創作」タグまでヒットしてしまう可能性があるので、混同を避けたい場合は「一次創作」や「オリジナル」と検索するのが望ましい。しかし、二次創作にオリジナルタグが付けられている場合もあり、注意喚起用の「二次創作にオリジナルタグ」もある。オリジナル作品を探したい場合は「オリジナル -二次創作 -2次創作 -オリジナル設定」など、マイナス検索を併用する事が推奨される。