概要
オブジェクトクラスとは、怪奇創作サイトSCP_Foundationの用語の一つである。
中には、危険度と表現する人もいるが、あくまで収容難易度に主眼を置いた分類であり、別にSafeだから安全とか、Keterだから危険だとかそういうわけではない。
主要なオブジェクトクラス
Safe(セーフ)
現時点で確実な収容方法が確立されているか、故意に活性化しないかぎりは異常性を発現しないクラス。接触・使用することで確実に人を害するものもざらにあるため、それ自体が安全という意味では断じてない。簡便な例えとして「厳重に管理された核爆弾」は財団基準でSafeに該当する。「Safe」はそのまま英語で「安全」を意味する。
Euclid(ユークリッド / エウクリッド)
性質が十分に解明されていないか、知性や自律性を持ち本質的に挙動が予測不能なものが分類されるクラス。脱走を企てるものも少なくない。知性がある場合「陰で何を企んでいるかわからない」「能力を隠しているかもしれない」のでどんなに協力的であってもここが下限となる。信頼できる収容が常に可能とは限らない一方で、影響範囲がある程度限定されており、Keterほどの脅威にはならないと考えられる。財団にて収容・管理されるオブジェクトの大多数は、性質が十分に解明されるか再分類に値する危険を示すまでは、まずこのクラスに分類される。「Euclid」は古代ギリシャの数学者で「幾何学の父」と称されるエウクレイデス(ユークリッド)の名であり、彼が『原論』にて定義・公準・公理を定めユークリッド幾何学を体系化したことから、これにあやかりSCPにおける最初に分類される基準となるクラスとしてこの名称になったと思われる。
Keter(ケテル / キーター)
現時点での財団の技術では完全な収容が困難もしくは不可能なもの。収容違反により甚大な被害をもたらすものも多く、宇宙そのものを終焉へと導き得る非常に凶悪なオブジェクトも含まれている。勿論あくまで収容難度でしかないため、「あらゆる物理的干渉をすり抜けるが、向こうからもこちらに何も干渉できない幽霊のような何か」や「不定期に世界中のどこかの椅子と入れ替わるだけの椅子」といった「見つからないようにしたい財団にとってはともかく、そこらの一般人にとっても特に害がない」ようなモノがここに分類される事もある。「Keter」とはヘブライ語で「王冠」を意味する他、ユダヤ教の神秘主義における生命の樹セフィロトでは頂点に位置し思考や創造を司る第一のセフィラで、「全ての隠されたものの中で最も隠されている」と呼ばれ、人間には決して理解できないものとされている。
Thaumiel(タウミエル)
財団が他のオブジェクトを収容するために特別に使用するもの。存在そのものが最高機密とされており、財団でもO5評議会と言った一握りの職員にしか知らされていない。創作陣からは「反Keter」「超Keter」とも例えられる、いわば人類側の切り札。ただし、世界を救うことすら可能と言うことは扱いを誤れば簡単に世界を崩壊させることができると言うことである、これらは断じて人類の味方ではない。「Thaumiel」とはヘブライ語で「神の双子」を意味し、セフィロトの対極とされる邪悪の樹「クリフォト」のバリエーションの一つにおいてKeterに対応する位置にあり、分裂や争いを司るとされるクリファである。財団はいわゆる神に属する存在に対しても収容という形で戦いを挑む集団であり、そうした性格が表れた命名と言えるだろう。
Neutralized(ニュートラライズド)
何らかの事情で破壊された、使用不能になった、その他の要因で機能を喪失したか、異常性を示さなくなった元・異常存在。将来に異常な性質が復活した時や、類似する性質のオブジェクトが発見された時などに備え、記録として残されている。性質の解明と対処法の究明が本分である財団にとって、異常性の喪失は基本的に予期せぬ事態であり、報告書においては「なぜ機能が喪失したのか」を明らかにする過程も重要な記載事項となる。「Neutralized」は英語で「無効化/無力化された」「中和された」を意味する。
非標準のオブジェクトクラス
Explained(エクスプレインド)
確認された異常性が後の主流科学によって解明された、虚偽や錯誤によるものと明らかになった、あるいはその異常性が認識されないほど公に流布し(収容に失敗し)たものが該当する。アイテム番号の後ろに「-EX」が付され、他のオブジェクトとは分けて管理される。「Explained」は英語で「説明された」「明らかになった」を意味する。例としてはSCP-1851-EX(南北戦争時代のアメリカで南部の軍医が提唱した「逃亡を行なう黒人奴隷は精神病であり、有効な治療法はムチ打ち」と云う当時の基準からしても何か色々とおかしい実在のトンデモ学説のパロディ)などが有る。
Decommissioned(デコミッションド)
収容する意義に対してコストが釣り合っておらず終了されたオブジェクト。メタ的に言えばあまりに出来が酷すぎるということで終了されたことにして晒し上げにされているオブジェクト。終了記録の出来が良かったせいで敢えてこのクラスになりそうな記事を書く本末転倒な事態に陥り意義を失ったので廃止された。
Joke(ジョーク)
名の通り冗談、実在しないオブジェクトでありネタ項目。SCP-XXX-Jというように番号の後にJがつく。中番も適当だったり「SCP-ウオアアアアアアア-J」のようにとんでもないことになっていたりする事があり、同番号のSCPをネタにしたパロディオブジェクトであることもある。とにかく登場人物や対象オブジェクトのIQが一桁になる作品群なので頭を空っぽにしてあらゆる不都合を無視して見るとよし。
その他のオブジェクトクラス
Apollyon(アポリオン)
「もはや打つ手がない、どうすることもできない、未だ収容できていないオブジェクト」に与えられるとされるクラス。実質的な財団の敗北宣言。ほとんどのApollyonオブジェクトは、能動的にKクラスシナリオを引きおこす。
正式なクラスではないが、最初にこのクラスが与えられたSCP-2317、その後追加でこのクラスとなったSCP-001/S.D.ロックの提言と共に知名度が圧倒的に高く、「ヤバ過ぎるSCP」が出ると比較対象に挙げられ、2021年に正式なクラスとして承認された。
因みに、元祖Apollyonの2317は他のApollyonや、他にもかなりやばい専用オブジェクトクラスの登場により、特別感が薄れてしまったため、著者によりオブジェクトクラスが抹消されている。
名前の由来のアポリオンとは『ヨハネの黙示録』において予言される終末の様相において、第五の天使(トランペッター)がラッパを鳴らした後に現れる奇怪なイナゴたちの頭目として名のあがるアバドンのギリシャ語名称である。
Archon(アルコン / アルコーン)
「収容できる可能性があるが、何らかの理由により収容しない選択をしたオブジェクト」に与えられる、主に現実世界の一部もしくは収容すると悪影響をもたらす可能性があるもの。決して収容不可能ではないが、収容しない方が好都合なオブジェクトを指す。ただ、扱いが非標準クラスであるのに関わらずマイナー過ぎるオブジェクトクラスである。記事も数件程度しかない。
名前の由来のアルコーンとはグノーシス主義に於ける低位な神的存在の名称であり、「偽の神」のことである。
Cernnunos(ケルヌンノス)
「収容は可能なのだが、それに必要なプロトコルに収容する以上の問題があって収容ができないオブジェクト」に付与されるオブジェクトクラス。どうにか他の収容方法を発見してS/E/Kに分類できるよう研究し、それが出来ないならArchonクラスにする判断が下るまでの暫定クラスのようなものになっている。
SCP-4971とSCP-2998-JPに付与されている。
名前の由来のケルヌンノスとは、ケルト神話の狩猟神および冥府神である。
Da'aS Elyon(ダァーズ・エリヨン)
「財団による収容が不可能であり、さらに人々が非異常だと思うように誘導しなければならないオブジェクト」に付与されるオブジェクトクラス。
SCP-2298-JPやSCP-5338、SCP-CN-2879の「フェイクニュース!」に付与されている。
余談だが、SCP-8900-EXがExplained前に割り当てられるクラスとしたらこのクラスが該当する(8900-EXが執筆された当時はこのクラスは存在しなかった)。
Gödel(ゲーデル)
「財団が持っている技術を用いれば説明できてしまうものの、現在の科学などでは説明不可能になってしまうオブジェクト」に付与されるオブジェクトクラス。
SCP-4555(Schrödinger参照)、SCP-5326に付与されている。
元ネタはオーストラリアの数学者、クルト・ゲーデルか。
Hiemal(ヒーマル)
「複数のオブジェクト間に相互関係があり、それらが異常性を互いに抑制し合っている場合、これらを一度に収容しなければならないオブジェクト」に付与されるオブジェクトクラス。
元ネタは冬気候などを意味する単語Hiemal。
Tiamat(ティアマト)
「財団の存在を隠したりすることなどを無視し、全力で挑めば収容できるオブジェクト」に与えられるオブジェクトクラス。Keterの上位互換、Apollyonの下位互換とも言える。Tiamatクラスのオブジェクトの例として、SCP-3396(至天蟲)、SCP-5034(肉の天使たち)が挙げられる。
Ticonderoga(タイコンデロガ)
「収容不可能だが、収容する必要もないオブジェクト」に付与されるオブジェクトクラス。
ただし暫定的なクラスであり、何か事態が動けばKeter等に再分類されることが前提になっている。Ticonderogaクラスのオブジェクトの例として、SCP-4444(ブッシュ対ゴア)を始め、SCP-4270、SCP-1682-JPが挙げられる。
名称の由来のタイコンデロガとは「2つの湖の間」を意味するネイティブ・アメリカンのイロコイ族の言葉で、財団風に訳すと「収容済みと未収容の間」を意味する。
Yesod(イェソド)
「財団の基礎となるオブジェクト」に付与されるオブジェクトクラス。
スパイク・ブレナンの提言とAmamielの提言で使用されている
またSCP-1370-JPにも別のオブジェクトに冠されたクラスとして登場するが、こちらでの意味はこのクラスを付けたO5-12曰く「人類の基礎」とのこと。
「Yesod」とはヘブライ語で「基礎」を意味する他、ユダヤ教の神秘主義における生命の樹セフィロトの第九のセフィラとされている。
イェソドの意味は基礎、Foundationの意味も基礎である。
Argus(アーガス / アルゴス)
「財団よりも適切に扱える人物や組織がいるため、そちらに管理を任せたオブジェクト」に付与されるオブジェクトクラス。
本来ならば収容に特殊な技能や道具が必要ならそれを財団内に組み込むことが多いが、収容を外部に委託するというのは相応にトリッキーなオブジェクトが多い。
主にSCP−2985-JPに適用されている。
名称の由来のアルゴスとはギリシャ神話に出る百眼の巨人でそれを活かした「見張り番」の役目をしていた。
Ain(アイン)
「将来的にも回避不可能なYK-クラス:未定義シナリオを齎すオブジェクト」に付与されるオブジェクトクラス。本来は日本支部により発足したクラスだが、後に本部に逆輸入され承認済み特殊クラスとなった。
SCP-1690-JP(犭貪あるいはウロボロス)、SCP-7881に適用されている。
名称の由来のアインとはカバラの木における「無」「0」を意味する。
この他、様々な理由でこれら以外のオブジェクトクラスに分類されるオブジェクト(物語と連動した専用オブジェクトクラス等)も存在する。
鍵のかかった箱テスト
オブジェクトクラスについては、創作者への指針として「鍵のかかった箱テスト(the Locked Box test)」と呼ばれる非公式のガイドラインが存在する。
簡単に言うと、オブジェクトを「鍵のかかった箱」(「適切な収容手順」の隠喩)に閉じ込め、そのまま放置した場合にどうなるかで適切なクラスを判断しようというものである。
- 「それ」 を箱に入れ、鍵を掛け、そのまま放置したとき、何も悪いことが起こらないのであれば、それはおそらくSafeです。
- 「それ」 を箱に入れ、鍵を掛け、そのまま放置したとき、何が起こるか予測がつかないならば、それはおそらくEuclidです。
- 「それ」 を箱に入れ、鍵を掛け、そのまま放置したとき、それが容易く脱走するのであれば、それはおそらくKeterです。
- 「それ」 そのものが箱であれば、それはおそらくThaumielです。
- 「それ」 を箱の中に入れられず、かつそれが世界を終わらせようとしているなら、それはおそらくApollyonです。
- 「それ」 を箱に閉じ込められるとしても、そうしないことを選んだならば、それはおそらくArchonです。
余談
最近は収容難易度であるオブジェクトクラスの他に更に二つ、確保難易度、保護難易度を指すオブジェクトクラスもちらほら使われている
確保難易度は野晒しで放置した場合どのくらい一般人の目についてしまうか(転じて捕獲しに向かった時確保作業をどれだけの人に見られかねないか)を指す、keterだろうがApollyonであろうがその場から一切動かないのであればここは最低ランクになり、Safeで無害でも好奇心旺盛に走り回るのであれば高めになる。
保護難易度は単純に危険度、スイッチを入れた瞬間周囲8光年を吹き飛ばす爆弾のSafeがあるとすればこのランクはかなり高くなるし、逆にあっちこっちに転移するだけでそれによる害が発生しないketerならここは最低ランクになる。