概要
かぢばあたるによる神々のトライフォースのコミカライズ作品。ストーリーは原作を意識しているが数々のオリジナルキャラクターや独自設定によりほぼ別物となる。
著者はこれを手掛ける前に夢をみる島のコミカライズも担当している。
登場人物
パーティーメンバー
- 【勇者の子孫】リンク
伯父ザンジの下で剣技を学ぶ少年。勝ち気でヤンチャな性格。実力は既に伯父を超えているが命のやり取りをしたことがないため真剣勝負の際に相手の殺意に怯えている。次第に勇者に相応しい強さを手にしていく。正体は封印戦争の時にガノンと戦った勇者の子孫。
年齢は不明だが劇中では子ども扱いされることが多い。原作のように盾やアイテムは使わず剣のみで戦う。
- 【カカリコ村の武闘家】ラスカ
メイン画像左下の少年。
リンクの幼馴染にしてライバル。気が強く礼儀知らず。口癖は「インチキ」。
天分八心拳(てんぶはっしんけん)という拳法の使い手。必殺技は、両手に気を込めて放つ掌底《暗打双撞掌(あんだそうとうしょう)》。
何かにつけてリンクと張り合っており、当初は自分がマスターソードの使い手になるつもりだった。基本的にリンクとは仲が良いのだが、彼がマスターソードを引き抜いてからは悪い意味で突っかかって来ることが多くなった。それでも内心ではリンクを認めているが素直になれず、リンクの前では決して褒めたりしない。
リンクと同い年だが、リンクより背が低くショタ寄りの見た目。途中から顔つきが変化して生意気さが増した。
- 【王室騎士団長】アルジュナ
メイン画像左上の青年。
王室付きの凄腕の剣士。アグニムの野望を見抜き、リンクの伯父ザンジと共に立ち向かうが敗北する。大怪我を負ったが復帰後はリンクの仲間になる。メンバーの中でも精神的に最年長のためリンクとラスカを諭したり励ましたりすることが多い。リンクを自分以上の実力者と称するが、リンクやザンジでも気づかれない隠形を見せるなどかなりの実力者。
当初は30代くらいのデザインだったが後に髪型が変化し20代に見えるようになった。猪突猛進気味なリンクとラスカの道しるべにもなるブレーンを務める。
- 【ガノンの元参謀】カニカ
メイン画像右上のメガネ。
元々はとある村の出身で、本来なら王室学士として王宮に迎えられるはずだった。しかしその話を聞きつけたのかガノン率いる盗賊団によって村を焼き払われ家族を殺される。以後は無理やりガノンの配下にされ、聖地まで連れて行かれ600年の時を過ごすことに。聖地にやって来たリンクたちを匿い、ハイラルに変えるために共闘を持ち掛ける。
90年代のオタクっぽい言動の青年だがメガネの下は優しい顔立ちのイケメン。
サブキャラクター
- 【リンクの師匠】ザンジ
リンクの伯父さん。ハイラル城に仕える剣術指南役にしてハイラル最強の剣士。リンクに回転斬りを教えた師であるが強力過ぎるため普段の使用は控えさせていた。
1巻にてアルジュナと共にアグニムの野望を打ち砕こうとするが返り討ちに遭い敗死する。
- 【ラスカの師匠】ラスカの父親
カカリコ村で暮らす豪放磊落なオヤジさん。義理人情や浪花節という言葉がぴったりな人物。
リンクを助けに行きたいが自分まで指名手配されたくないと迷うラスカに稽古を付けることで背中を押した。
- 【七賢者の血を引く王女】ゼルダ姫
アグニムに狙われるお姫様。リンクとは同い年だが年齢は不明。本作ではリンクを嫌っているという、数あるゼルダ姫の中でも珍しいキャラ付けがされている。
アグニムに野望には気づいており、寝所に突撃して来たリンクをアグニムの手先と誤解して剣を向けた。刀のような形状をした剣を用い、腕前もそれなりに立つ。
- 【七賢者の血を引く王】ハイラル王
ゼルダ姫の父親。優しい顔立ちの細面な男で、どこか頼りない感じを受けさせる。アグニムを信用し切っているため良いように利用されている。
- 【七賢者の血を引く娘】イリエル
闇の神殿のジークロックに囚われていた少女。民族衣装風の格好をしているが、性格は陽気でお転婆とギャルっぽい感じがする。
- 【教会の牧師】神父
アルジュナたちの協力者。教会にゼルダ姫を匿い、邪悪な者を寄せ付けない《絶対対魔結界》を展開する。しかし地下には結界が張られておらず、このためハイラル城側の隠し通路からなら境界に入れるという致命的な欠点がある。
- 【現代の七賢者】サハスラーラ
厳かな雰囲気を持った老人。アグニムが討たれた後に現代の七賢者たちを率いてハイラル王にガノンの脅威を伝え、自分たちの行いが今回の原因になったのなら責任を取るべきだと意見する。
- 【退魔の剣に宿る霊魂】先代勇者
マスターソードに宿っていた青年剣士の亡霊。なぜかリンクとよく似た戦い方をする。お供には小さな妖精を連れているが、これは著者の前作夢をみる島に登場した妖精フェリサと同じデザイン。
ガノン陣営
- 【不老不死の魔王】ガノン
600年前、聖地からハイラルに攻め込んだ伝説の魔王。トライフォースの願いによって不老不死になり、歪んだ願いのエネルギーによって聖地の時間が止まり、そこにいる者たちを不老にしてしまう。当時の人々はガノンに対抗するためにマスターソードを鍛えたが、先代勇者でも傷一つ付けられなかったため七賢者によって聖地のピラミッドに封印された。
- 【ガノンの側近】アグニム
ガノン復活のために暗躍する中年の司祭。光の世界では赤い服、聖地では白い服で登場する。リンクの伯父ザンジを殺した仇でもある。
- 【アグニムの配下】ブラインド
自信家で策士を気取っているが実態は功名心が強い小者。
- 【封印戦争の遺物】レプリカモンスター
魔術によって造られたモンスター。ゴーレムドライバーの術によって使役される操り人形。劇中ではアグニムやガノンのレプリカモンスターが登場した。オリジナルに劣るがそれでも凄まじい強さを持つ。特にガノンのレプリカは最近製造された新型。
あらすじ
1巻
不思議な力で病気の人間たちを救う司祭アグニム。颯爽と現れた救世主を、人々は元よりハイラル王も絶大な信頼を寄せていた。しかしアグニムの正体は、600年前に起きた封印戦争の時に聖地に封印された魔王ガノンの先兵だった。人々を救う一方で七賢者の末裔たちを捕らえて聖地に送り込んでいた。
そんなアグニムの野心を見抜いていたのがゼルダ姫、騎士団長アルジュナ、リンクの伯父ザンジだった。アグニム自らゼルダ姫の寝所まで赴こうとするが、アルジュナとザンジに阻まれる。アグニムの敵ではなく二人は魔法弾の前に容易く打ち倒され、アルジュナは重傷を負い、ザンジは絶命する。
ザンジの後を付けていたリンクから仇討ちのため勝負を挑まれるが、先の戦いで魔力を使い果たしていたため苦戦を強いられる。そこで「ゼルダ姫は既に捕らえた」と言ってリンクを騙し、ゼルダ姫の寝所まで突撃させる。
扉を突き破って来たリンクを前にゼルダはアグニムの刺客だと思い込んでいきなり斬り掛かって来る。二人が言い争っている間にアグニム率いる衛士隊がリンクを包囲するが、リンクはゼルダ姫を抱きかかえると窓の外へと飛び降りて姿を消した。
リンクの乱暴な振る舞いに怒ったゼルダは平手打ちをお見舞いするが、今はそんなことをしている場合ではないと叱咤され、手を引かれながら教会まで連れて行かれる。神父の元を訪れて間もなく騎士団長アルジュナも城の隠し通路から教会へと逃れて来る。
リンクは一般人のため巻き込みたくなかったと語るアルジュナだが、ザンジが死んでしまってはそうも言っていられずアグニムの目的を話す。
伯父の死に泣き疲れて眠るリンクを見たゼルダ姫は、彼を信用出来ないと口にするがアルジュナに諫められる。実力だけなら騎士団長である自分どころかザンジよりも上と言われるが、ゼルダ姫は信じることが出来なかった。
翌日。気力を充実させたリンクはアグニムを倒すべくマスターソードを探しに向かう。
リンクはゼルダ姫の誘拐とザンジの殺害という無実の罪を着せられ手配書が回っていた。行く先々でお尋ね者扱いされてしまうが、カカリコ村に住むラスカとその父親だけはリンクを匿ってくれた。
ラスカの父親もアグニムを信用していたが、リンクがザンジを殺したという話も信じられなかった。事情を聞いた父親はアグニムに激しい怒りを燃やす。だがラスカだけは冷めたような、怯えたような態度だった。
ラスカはリンクに関われば自分までお尋ね者になるとして腰が引けていたが、父親から手合わせという形で活を入れられ「リンクを助けたい」という気持ちに従い、リンクの仲間になった。続けて戦線に復帰したアルジュナを加え、リンクとラスカは2つのダンジョンを攻略して紋章を手にする。
最後の紋章はヘラの塔にあった。アルジュナはリンクとラスカの二人だけで取って来るように告げる。
リンクもラスカも子供とは思えないほどの実力者だが、命を賭けた戦いをしたことがなく実戦経験が不足していた。二人の振る舞いからアルジュナはそれを見抜いていた。
アルジュナの予想通り二人は塔のボス・デグテールに歯が立たず、“死”を実感するほどの苦戦を強いられる。堅い皮膚の前にはラスカの暗打双撞掌も通用せず窮地に陥る。
リンクはここにはいない伯父に助けを求め、かつて教わった禁じ手“回転斬り”の存在を思い出しデグテールを撃破した。
その頃、アグニムは城の隠し通路を暴いて教会へと侵入していた。立ち向かって来たゼルダ姫をあっさりと気絶させ、続けて神父も魔力で吹き飛ばして無力化した。
神父は水晶を使ってアルジュナに連絡を取る。アルジュナはリンクをマスターソードを引き抜かせに向かわせ、自身とラスカはハイラル城に殴り込みを掛けに向かう。
リンクがマスターソードに近づくと青年剣士が現れ襲い掛かって来た。自分と似た戦い方をする青年に翻弄されるリンクだが食い下がり続ける。
青年はマスターソードを守護する者であり、リンクならギリギリ死角があるとしてマスターソードを持ち去ることを認めた。
2巻
ゼルダ姫を手中に収めたアグニム。そんな彼にハイラル王は感謝の言葉を送るが、アグニムにとって彼の存在は用済みでもあった。本性を現したアグニムは王を殺そうとするが駆け付けたリンクによって阻まれ撤退する。命を救われたハイラル王は、真の悪が誰なのか理解した。
一方、ラスカとアルジュナは兵士たちを殺さないように戦っていたことが仇となって多勢に無勢となる。しかしラスカの父親率いる弟子たちが救援に駆け付け、その間にラスカとアルジュナはリンクと合流する。
リンクは眼の前でゼルダ姫を聖地に送られたことで激怒。伯父の仇と一騎討ちを展開する。マスターソードを手にしても尚アグニムとの実力差は埋められず、武闘家のような素早い動きの前に翻弄される。リンクは死角から伯父を殺した魔法弾を撃たれるが、間一髪のところで反射して逆にアグニムを消滅させた。
だがアグニムは消滅の寸前に力を振り絞り、リンク、ラスカ、アルジュナを聖地へと引きずり込んでしまった。
見知らぬ大地に降り立った3人はガノン配下の魔物たちに追い掛けられるが、ガノンの元参謀を名乗る青年カニカが現れ匿ってくれた。
カニカは600年前、光の世界のとある村で暮らしていたがガノンによって拉致同然に参謀にされ聖地まで連れて来られてしまった。元の世界に戻りたいという気持ちは同じため手を組むことを提案される。
囚われのゼルダ姫たちを助けるべく各地のダンジョンを目指す一行。だがカニカは学者のため戦闘力がなかった。それを根性無しとなじるラスカ、言い過ぎだと諫めるリンク。二人は言い争いになるがカニカの介入によって和解する。
リンクもラスカも強者のため戦う力が無い者の気持ちを理解できずにいた。それを自覚した後はカニカを責めることなく守るようになる。
けれどアルジュナは、素性の知れないカニカを疑い続けていた。
最初のダンジョンでガモースを倒し、賢者の末裔イリエルを救出する。
彼女の口から七賢者の末裔たちは“血族封鎖の術”という自動防御術によってクリスタルに包まれていることが語られる。イリエルは一時的に姿を現していたが、末裔たちを解放するためには……というところでまたクリスタルに戻ってしまった。
マスターソードは使い手の想いに呼応して力を発揮する対ガノン用の兵器だった。本来なら刃が輝くことで威力を引き上げ、剣ビームを放つことが出来るのだがリンクには出来なかった。
リンクはその内出来るようになると暢気に構えていたのだが、ラスカとアルジュナがダンジョンのトラップによって壁に押し潰されそうになる。リンクは仲間を助けたいと思う気持ちからマスターソードを光らせ、壁の一部を破壊して二人を救出した。
実はこのトラップを作動させたのはラスカであった。ガノンを復活させるには末裔たちをクリスタルから解放する必要がある。そのためには覚醒したマスターソードが、それを扱えるリンクの存在が必要不可欠だった。
なかなかマスターソードの使い手として覚醒しないリンクに焦れたガノン陣営は、盗賊ブラインドを刺客として送り込む。
ブラインドは末裔に化けて「末裔たちはクリスタルから解放された。もうハイラルに戻る方法はない」と嘘を吐いてリンクとラスカを仲間割れさせる。
調子付いて正体を現したブラインドはラスカを殺そうとするが即座に殴り倒され、続けて激怒するリンクに投げ飛ばされて敗北した。
今の話は本当かと問うリンクの質問には答えず、ブラインドは気絶する寸前に切り札を発動させた。
それは封印戦争時代に使われていた“ゴーレムドライバーの術”と呼ばれるものだった。魔術によって生み出したレプリカモンスターを使役するという術で、呼び出されたモンスターはガノンを模したものだった。
あらゆる攻撃が通じず圧倒されるリンクたち。しかしリンクの斬撃がたまたまレプリカの制御帯を破壊したことで偽ガノンは昨日停止する。
だがリンクは崖の下まで落下してしまい、ラスカたちと離れ離れになってしまう。カニカもいつの間にか姿を消していた。
3巻(最終巻)
満身創痍のリンクは魔物たちに殺されそうになる。彼の窮地を救ったのは青年の霊魂であった。しかし魔物の数は圧倒的であり青年でも時間稼ぎがやっとだった。
青年はマスターソードの使い手であるリンクを死なすわけにはいかないと言い、お供の妖精もリンクに逃げるように言う。
だがリンクは拒否。自分を守るために戦う人間を見捨てる人間に世界を救えるわけがない。その想いはマスターソードを今一度輝かせ、ついに剣ビームを発現させた。
魔物たちはリンクと青年によって掃討される。青年は「お前は私より少々優秀なようだ」とリンクを認め、去り際に自身がガノンと戦った先代マスターソードの使い手……リンクのご先祖様であることを明かした。
一方、ラスカとアルジュナは各ダンジョンを周って末裔たちを救出していた。リンクと合流を果たし、3人の同時攻撃でデクロックを倒し最後の末裔であるゼルダ姫を救出した。そしてマスターソードによって彼女たちをクリスタルから解放する。
血族封鎖の術が破られた影響はハイラル王たち現代の七賢者も感じ取り、テレパシーによってゼルダ姫たちと対話に成功する。七賢者と末裔たちで転移術を起動させればハイラルから増援が来るという。
しかしアルジュナは、その前にガノン陣営最後の砦であるガノンの塔を落とすべきと進言。敵側が何かしらの手段でガノンの復活を早めるかもしれないと危惧してのことだった。
ガノンの塔に乗り込んだ3人の前に意外な人物が姿を見せる。それは光の世界で倒されたはずのアグニムだった。
実はリンクが倒した“アグニム”はレプリカモンスターに過ぎず、ガノンの塔に陣取っているアグニムこそがオリジナルであった。しかもカニカを人質に取っており、マスターソードを手放すように脅しを掛けて来た。
言う通りにするリンクだがカニカはアグニムの側から離れなかった。そう、カニカはアグニムの配下でありリンクたちを監視するために送り込まれた間者だったのだ。
続けてアグニムは、自身を模した2体のレプリカモンスターを呼び出す。圧倒的不利な状況にも拘わらずリンクたちは膝を折ることなく戦い続ける。その姿に勇気をもらったカニカは反旗を翻し、レプリカの制御を装置を破壊。そしてマスターソードをリンクに投げ渡した。
直後、カニカはアグニムによって胸を貫かれ致命傷を負う。しかしアグニムもまた怒れるリンクのマスターソードに胸を刺され絶命した。
死の間際、カニカはなぜ裏切ったのか問われる。
本来ならカニカは王室学士に迎えられるはずだったが、その噂を聞き付けたのかガノン率いる盗賊団によって村を焼かれ、両親を殺されてしまった。
カニカは「トライフォースの力で両親を生き返らせ、ハイラルにも帰してやる」と言われアグニムに従っていた。また無意識に非力な自分とリンクたちを比較し、その強さに嫉妬していたのかもしれないと口にする。
当初ラスカはカニカを許すつもりがなかった。しかしそういう事情があるなら仕方ないと納得し、3人でカニカを看取った。
アグニムが倒れた直後、ガノンの封印に乱れが起こる。このままではいつ封印が解けてもおかしくないため、光の世界に一時撤退し戦力を固めてからガノンを迎え撃つという方針となった。しかし転送の術を起動するゼルダたちの前に残党である魔物の群れが出現。リンクと仲間たちが応戦に出る。
仲間たちは光の世界に戻ったが、リンクだけは帰ることを拒否。勇者として魔王と決着をつけるべくただ一人で封印地点(ピラミッド)に赴くという展開となった。
ガノンの封印は既に解けていたようでリンクがピラミッドに近づくといきなり攻撃を加え、足場を崩して内部に引き込んでから対峙する。
「相手がだれであろうと
このガノン様の前に立つ者は
たたきつぶす!!」
手始めにトライデントの一撃で床に穴を開け、衝撃波だけでリンクの衣服に傷をつけて恐怖させた。
戦闘ではマスターソードでも斬れない不死身の肉体によって優位に立ち、マスターソードを片手で受け止め文字通り寄せ付けない実力を見せる。
リンクの動きが素早いと見たガノンは、闇を生み出す技によって周囲を漆黒に染め、リンクの視界を奪い圧倒。
劣勢に立たされたリンクは「こんな時、仲間がいたらどう言うか」と考える。その想いは仲間たちの声援を届けさせた。
ラスカ『ケッ! やっぱ、おめーはインチキ勇者だぜ。ひっこんでな! オレがぶっ倒してやる!』
アルジュナ『頑張るんだ、リンク君! あきらめたら、そこで戦いは負けだぞ!』
ゼルダ姫『しっかりしてくださいリンクさん! あなたなら必ず勝てます!』
先代勇者『剣は扱うものじゃない。共に戦う仲間だ! 己と仲間を信じるんだ!』
ラスカの父親『気合いだ気合い――! ビビッたら負けよォ!』
伯父ザンジ『わしはおまえを…信じてるぞ…』
ガノンにはない力――仲間たちの想い。それによって支えられたリンクは心身ともに立ち直る。
リンク「ガノン! やっぱりおまえは絶対俺には勝てねえよ!!」
ガノン「ほう…そいつは一体なぜかな…?」
リンク「そりゃあおまえが、一人ぼっちだからさ!」
ガノン「何をバカな…血迷ったか!? 一人きりなのは貴様とて同じではないか!」
リンク「わからねえか…? いや、わかんねえだろうなァ。だからテメエは、悪党だっつうんだよ!」
直後、マスタソードが眩く光り輝く。仲間への想いからリンクがマスターソードの更なる力を解放させた瞬間だった。これによってガノンは不死身というアドバンテージを破られてしまう。
更にはマスターソードの特性によってガノンの居場所がリンクに伝わり、闇の技も効果を成さなくなった。
リンク「マスターソードはおまえを倒すために産まれた剣! どこにいたっておまえの位置を俺に教えてくれる!」
リンク「そして、おまえを倒すために戦ったみんなの心が…俺と剣に力を、力をくれる!!」
リンク「もう一度言うぞガノン!! 一人ぼっちのおまえにオレを倒すこたぁできない!!」
ガノン「ならば証明してみせろ! その力とやらでオレ様を倒してみせろ!」
ガノン「何が心だ! 何が仲間だ! 戦っているのは貴様自身だ! 600年前もそうだった…ヘドが出るわ!!」
動揺するガノンだが、再びリンクに猛攻を仕掛け渾身の魔法弾を直撃させた。
ガノン「貴様のセリフは、一人では戦えぬ弱者のざれ言にすぎん! 孤独では勝てぬだと…? 笑わせるな! 仲間だの心だの…そんなものに、すがったことをあの世で後悔するがいい!」
勝ち誇るガノン。しかし、それでも立ち上がってきたリンクに今度こそ冷静さを無くす。
ガノン「バカな…! 死ななかっただけでも奇跡だというのに…なぜ立ち上がれる!? なぜ戦えるのだ!?」
リンク「俺の言葉を弱者のざれ言と言ったな……けど俺は、それを支えに立ち上がるぜ…何度でも…何度でも!」
リンク「それは護るべきもののためだ…そう、これは護る力だ! おまえが振るってるのは奪う力…同じ力という言葉でも質が違う!」
リンク「護る力と奪う力…どっちが強いか試してみるか!?」
ガノン「おのれ~~~…まだ言うかーっ!!」
リンク「導いてくれマスターソード!! ただ一直線に!!」
独りで戦うガノンと、仲間たちの想いに支えられたリンク。どちらが勝つかなど明白であった。
最後の激突を制したリンクのマスターソードによって胸を貫かれ、その状態から放たれた回転斬りに胴体を斬断され敗北。
先代勇者ですら傷一つ付けられなかった不死身の肉体が破られたことに驚愕しながら最期を迎えた。
ガノン「バカな…このガノン様が、こんな…こんな子供に…!!」
リンク「けっ…バーカ…悪に立ち向かう心に…大人も子供あるかってんだ…」
リンクはトライフォースの新たな資格者として認められ、仲間たちの待つハイラルへと帰還を果たした。
その後、ハイラルを救った英雄として式典が行われたが「ガラじゃねえや」として抜け出し、伯父の墓参りに。
リンクは「剣のおかげで英雄になれた」ことをよしとせず、墓標代わりにマスターソードの台座に収めていた伯父ザンジ(リンクのおじさん)の形見の剣と入れ替える形でマスターソードを台座に戻す。そして追い掛けて来たラスカに見送られながらハイラルを旅立つのだった。
余談
著者によれば本作のエンディングから漫画版夢をみる島に繋がるとのこと。
著者はあとがきで「夢をみる島を超えられなかった」と述べている。