共通事項
基本仕様は225系をベースとして、先頭部を521系3次車仕様に変更し、ワンマン運転に対応させた車両となる。
JR西日本の在来線用車両としては初採用となる技術が数多く盛り込まれており、具体的には「新保安システム」(番台毎に異なる)・戸挟み検知機構・伝送速度100Mbpsの制御伝送システム・フルカラーLED式行先表示器・グラスコクピットが該当する。
また、521系3次車以降の標準装備として先頭車間転落防止幌・ドア誤取り扱い防止装置・異常挙動検知システムも搭載する。
321系以降で実績のある東芝製のデジタル制御伝送システムを引き続き採用する。
ただし、本系列では他系列との併結運転や互換性を考慮する必要が無いこと・デジタル制御伝送の信頼性を示すノウハウが蓄積できたことを鑑みて、機器毎の指令線を持たないデジタル伝送主体のシステムに移行し、配線の簡略化を図った。このため在来系列との併結運転はできない。
基幹伝送路にEthernet通信技術を採用し、伝送速度を従来の10Mbpsから100Mbpsにまで向上させた。両先頭車に中央処理装置、中間車全てに端末装置を搭載する構成であり、1両単位での編成組成を可能にしている。
この227系の先頭形状は、その後225系2次車、323系にも採用されており、「227系顔」としてJR西日本の新たな顔となった。もっとも、最初にこの顔を採用したのは先述の通り521系3次車なのだが………
フルカラーLED式表示器
JR西日本では221系以来種別・行先表示器は「種別幕+2色LED」の形態が続いてきたが、とうとう本系列よりフルカラーLED式の採用に至った。これに伴い側面の表示器は種別幕と行先表示器が一体化されている。
この表示器の汎用性を生かして、種別表示部に特殊な表示を出すことも可能であり、0番台にはカープ坊や、1000番台にはパンダや鹿などが入っている。いずれも新製時から用意されており、カープ坊やは2016年のプロ野球・広島東洋カープの優勝を機に満を持して登場、翌年以降も同様の掲出がなされている。
西日本豪雨からの復興時には、「がんばろう!広島」のメッセージを通常表示と交互に出す編成も現れている。
0番台(広島向け)
国鉄型車両が大量に残っていた広島地区向けとして2014年10月に登場。JR西日本発足後、初めて広島地区に投入される新型車両であり、国鉄時代から数えても広島シティ電車政策で導入した115系3000番台以来32年ぶりとなる。
2015年3月より営業運転を開始し、2016年2月までに3両編成42本・2両編成16本の158両が登場。その後2年間の増備休止期間を経て、2018年春より増備を再開。2019年春までに3両編成64本、2両編成42本の計276両が揃い、広島近郊の国鉄形電車を全て置き換えた。
3両編成はA編成、2両編成はS編成となっており、編成ごとに各車両の車番末尾を揃えるため、S編成は車両番号が-65からスタートしている。
外装・車内
カラーリングは「広島らしさ」(県木のもみじ、広島東洋カープ、厳島神社大鳥居など)をイメージした赤基調の新デザインとなっている。このデザインに至るまでは、複数のカラーリング案が検討されていた。駅施設のサインシステムと一体化したこのデザインの評価は高く、2015年度グッドデザイン賞の受賞に至っている。
車内は扉間が2+2列の転換クロスシート、車端部がロングシート。先頭部の幌が翼を広げたように見えることや、将来の広島近郊の公共輸送を担うことなどから、「未来へ羽ばたく赤い翼」という意味の「Red Wing(レッドウィング)」という車両愛称が付けられた。
走行装置
足回りはベース元の225系とほぼ同一で、「0.5Mシステム」を引き続き採用している。
制御装置はIGBT-VVVFインバータで、形式はWPC15A。東芝製と三菱製が存在する。
主電動機は車体風導冷却方式のWMT106A。妻面にワンマン運転用の窓を設けられた関係で、動力台車上の車体側面に冷却風取り込み用のルーバーがある。
台車は、運用上高速走行をしないことから、225系にあったヨーダンパとアンチローリング装置は省略。
中間車のモハ226は、225系のモハ224と違って動力台車が下り側に配されるのも特徴。新保安システムとして、ATS-DWを中心とした能動的車両制御を行う「D-TAS」が搭載されている。
1000番台(和歌山線・きのくに線向け)
JR西日本が保有している105系は奈良・和歌山地区(桜井線・和歌山線・紀勢本線(きのくに線)用)にも残っており、加えて113系・117系も使用されていたことから、その代替車両として2018年9月に登場、翌2019年3月より営業運転を開始した。製造は川崎重工業兵庫工場。
同年9月に発表通りの2両編成28本が出揃い、9月30日から2021年3月まで和歌山線・桜井線・紀勢本線(きのくに線)和歌山市〜紀伊田辺~新宮間で運用していた国鉄型電車を全て置き換えた。
車体カラーは緑色基調で、車内はオールロングシート。車両側面に入口・出口標識と車載型IC改札機を搭載してワンマン運転に対応している他、2021年に導入される無線式ATCにも対応している。
走行機器は323系で採用された最新型となる。制御装置は主回路にSiC適用型半導体素子を用いたもので、形式はWPC16。こちらも東芝製または三菱製。このうち東芝製は、東京メトロ2000系と共に東芝デバイス&ストレージ製All-SiCモジュール初採用の事例となった。
主電動機は全閉自冷式のWMT107。モーター単体で耐雪性能を得たため、0番台にあった冷却風取り込み用のルーバーが無くなった。ヘッドライトもLED式に変更。
オールロングシートの内装、制御装置にSiC素子採用、主電動機出力220kWである点で見れば、寧ろ323系を名乗るべきに見えるが、設計最高速度(227系は120km/hで323系は100km/h)や起動加速度が違う(227系は2.5km/sで323系は2.8km/s)ことから227系の一員である。
尚、0番台は新保安システム「D-ATS」を搭載、1000番台は車上主体列車制御システム(JR東日本のATACSに近い)対応となっており、現状では新技術の保安装置を搭載(対応)した近郊型車両=227系と見る事が出来る。
500番台(岡山地区向け)
2023年7月22日より岡山地区の一部で運用開始。導入線区は山陽本線岡山~三原間・本四備讃線岡山~児島間・宇野線・伯備線倉敷~総社間で、2024年度までに2両編成13本と3両編成25本の計101両を投入予定であり、同地区を走る国鉄形電車の1/3程度が置き換わる見込みとなっている。そのうち同地区の117系は全て当形式に置き換えられた。
外装は0番台の色違いといったような配色で、0番台の赤部分を豊穏(ほうおん、豊饒(ほうじょう)と穏和からの造語)のピンク(岡山の桃・福山のバラ・尾道の桜)をシンボルカラーにしたデザインで、側帯はピンクと黄色のグラデーション。ライトは1000番台に引き続きLED式となっている。また、将来のワンマン運転を想定して車外カメラ取り付けの準備工事がされている。
車内は基本的に0番台と同一だが、ドア間の転換式クロスシートは5列から4列に減らされており、その分ドア付近のスペースが拡大されているのが大きな特徴となる。また座席モケットは、225系などと同一仕様。
1000番台の後に登場しているが足回りは0番台に準じており、車両制御装置はIBGT素子を用いたWPC15A-G1(ただし本系列では初となる東洋電機製が登場)。車体側面には0番台と同様の冷却風取り込み用ルーバーがあることから、主電動機も解放式IMのWMT106Aのマイナーチェンジ版であるWMT106A-G1-T。
保安装置としてはATS-SWのほかATS-Pも装備しており、山陽線姫路方面への乗り入れも可能。
愛称は「Urara」(うらら)。1月30日に愛称が発表された後2月2日に報道公開された。
デザインの発表以来番台は不明であったが、2022年10月に中国統括本部設置に伴い下関総合車両所に岡山電車区が下関総合車両所岡山電車支所へ統合され、そのことを伝えるポスターにに本番台の番台名がリークし、500番台となることが判明した。
3両編成はL編成、2両編成はR編成となっており、0番台と同様に車番末尾を編成毎に揃えるため、R編成は車両番号が-526からスタートしている。
2024年1月現在、227系は赤穂線への入線が禁止されており、東岡山駅プラットホーム東端に黄色い標識で記述されている。理由は不明だが恐らく地上設備との兼ね合い(誘導波障害対策等が未施工)と思われる。
余談
- 投入地区や車内設備、最高速度から「225系の地方向け簡易版」と言われることが多いが、先述した通り在来系列の上位互換とも言える装備を数多く装備しているため、機能自体は225系の上位互換である点に留意する(車内設備や最高速度などは、あくまで投入線区に適した設定がなされているのみで、性能的な制約ではない)。
- 最初に登場した0番台のA01・A03編成(三菱製VVVF車)は減速時の磁励音がかなり大きく、東洋IBGT車のような爆音を発していた。2本とも営業運転開始までに改修されており、現在では聞くことができない。