概要
葬送のフリーレンに登場する種族。
人を殺し食らう生態を持つため、当然ながら人類とは激しい敵対関係にある。
かつては魔王を指導者とし、人類との大戦争を引き起こした。
約80年前勇者ヒンメルが魔王を討ち取るとその勢力は弱まったが、魔族自体が滅びたわけではなく、残存した魔族達は未だ各々の目的のため各地で暴れ回っている。
魔族の定義
大魔法使いフランメの定義によれば、魔族とは『言葉を話す魔物』の総称。
見た目こそ人類に近しいが、実は生物としての根底が違う。現状わかっている特徴は以下の通り。
- 魔族の始祖は「助けて」と鳴いて獲物の人間をおびき寄せる魔物。現在は完全に人語を操り、目的達成の為に人間と対話や交渉を行うこともある。前述の通り外見も多くが容姿端麗な人間の姿をしているが、中にはクヴァールの様に人間離れした姿のものもいる。
- 非社会的動物であり、社会性はほとんど無く、社会を運営するために必要な道徳や良識は絶無。唯一、力による上下(隷属)関係に従っている。そのため魔族間での交流は乏しいが、全くないというわけではなく、交友関係があったり、気遣いを見せることも稀にある。
- 多くの魔族は表情の変化に乏しいが、感情自体は人並みに豊か。恐怖や怒り、傲り、また作中の描写から優越感やそこからくる喜びなどもあると思われるが、社会をもたないためか悪意や罪悪感が欠けている(グリュックは正義感もないと推測した)。それ故に人を傷つけたり殺したりすることに躊躇が無い。また前述の通り良識も持たず、善意を見せたとしてもサイコパスのソレのような利己的な性情に沿ったものに留まる。
- 基本的に長命であり、魔王に至っては1000年以上も生きている。また老化で姿が変わることもない。魔物と同様、死ぬと衣服を含め体が黒い粒子状になって霧散・消滅する。
- その殆どが頭に角が生えている。また、人間型の種は総じて耳が尖っているがエルフのように長くはない。
つまりは人類とは姿や振る舞いが似ている(似せている)だけでその本質は全く異なる存在。
魔族の側はこの性質を大いに利用しており、様々な手で人類を欺こうとする。
弱者や善人を装い、人類に歩み寄ろうとする行動も、隙を作るためにしているに過ぎない。
子供の(姿をした)魔族が「お母さん……」と呟いたとしても、「親を失った子供」と見た人間が攻撃性を失うと知っているからその様に口にするだけ。前述の通り非社会的動物である魔族は家族という概念を持たないため、「親という言葉」については知っているのみで理解もしていない。
『言葉を話す魔物』であり、会話自体は可能だが、意思の疎通は難しく、「話し合い」は徒労に終わる。フリーレン曰く、「人の声真似をするだけの、言葉の通じない猛獣」。
そのような「動物の生態」であるため、例外なくその本性は人を欺き、殺すこと。
ここまで人類の捕食に特化しているにもかかわらず人間以外も問題なく食べられるらしく、
しかも満腹でも関係なく人間を襲うことが明らかになっている。
最早「生きていくためには仕方がないこと」かも怪しい。
中には個人的関心として人間に対して興味を持ち、理解し共存することはできないかと試みる魔族も存在するが、そうした魔族もやはり人間の精神性・社会性といった感覚を理解することはできないため、人の習性を自分たちなりに理解しようと検証実験を繰り返すようになる。
結果、人に興味を覚えた魔族はほかの魔族に比べてもより積極的に人を襲うようになり、より多くの人々をより残虐に殺害することを繰り返す、人にとってより危険な存在と化す。
なおカラスなどが光り物を集めるようなものなのか、人の持つ剣や包丁を欲し盗み出すという行為を行う魔族がかねてより複数存在している。
「人類」との違いについて
本作の世界設定では、エルフやドワーフなど他作品でいう「亜人種」も人間と同等かつ思考形態・精神構造等も同類である知的生命体として、人間と総合して「人類」と呼称されており、魔族とは根本的に異なる生命体と位置付けられている。
ソリテールは人類と魔族が「同じような姿をしているのに全く別の生き物」であることを、海豚・鯱等の鯨偶蹄目の魚形の水生哺乳類と魚類の成り立ちである「収斂進化」という魔王から授かった言葉を使ってマハトに説明した。また「空飛ぶ羽虫がどんな感情を抱いているだなんて想像もできないでしょ?」とも発言しており、人類と魔族の間での「理解」は時間の無駄だと一蹴している。(10巻第88話)
なお、作中世界で魔族がどのようにして生まれているのかも不明。雌雄の差はあるようだが、親という概念を持たないという話を考えると、人のように生殖・出産などで個体数を増やすのか、あるいは魔力的な生成を行っているのか、長生きした魔物がその内魔族に転じるのか、詳細は明らかになっていない。
一応、子供の姿をした幼い姿の魔族が居たり、首切り役人のリーニエが約80年前にアイゼンを見た際には幼女だったのが本編では少女の姿にまでなっているので、老化はしないというが成長はするらしい。
またクヴァ―ルのように老人的な口調となる者・リヴァーレのように自分を老いぼれと称する者もおり、姿はともかく精神面では一種の老化は起こる様子。
魔族の魔法
大半の魔族は魔法に傾倒しており、長い生涯のほとんどを一つの魔術の研究と研鑽に費やすほど。
より優秀な魔法使いで、より魔力が多いものが魔族においては上位の存在となる。
そのため、魔力を絶対の価値基準としており、ソレを狂わされる事には強い嫌悪感を示す。
また、社会性を持たない生物であるため、その研鑽と研究は個人の範囲に留まり、1代限り。
それ故に魔族の魔術は固有のもので、どこかの魔族が極めて危険な魔術を有していたとしても、その魔族一人を討伐できれば他の魔族が同じ魔術を使ってくる危険はほぼ無い。
なお、魔法の術式は魔族独自の脳や精神構造に基づいたものであり、
人類がこれを解析・使用することは(一部の例外を除き)不可能に近い。
- 呪い
魔族や魔物が扱う魔法の中で、生物を眠らせる・物質を変化させるといった所謂状態変化を齎すもの、その中でも特に人類の魔法技術で解析・解除不能なものを指す。
解除するには僧侶が使用する「女神様の魔法」(こちらも詳しい原理が不明)が必要。
あくまで人間の技術基準の分類であり、時代が下ると技術や解析の発展により「呪い」から「魔法」へと区分けされ直すこともある。
- 飛行魔法
その名の通り空を飛ぶ魔法。魔族には珍しく各自の魔法と併用している。
これは魔族にとって飛ぶことは人類が足で歩くのと同じようにできて当然のことだから。
本編の時代の約40年前から人類も使うようになったが、原理不明の術式をそのまま転用しているため応用が利かず、人よりも大きな物はわずかな時間しか浮かせられない。
主な魔族
魔王
魔族を従えた存在。かつて勇者ヒンメル一行が戦い、これを倒した。
人類が最盛期を築いた統一帝国と魔族の戦争が始まって以来、1000年以上の長きに渡り魔族の頂点に君臨し続けてきたという。フリーレン曰く人類との共存を望んでいた魔族であるとのことだが、そのために当時の人類の人口が三分の一になるほどの大虐殺を引き起こした。
拠点を置いていた魔王城は大陸北部《エンデ》にあり、そこは死者が死後に赴く場所『魂の眠る地(オレオール)』があるとされる土地でもある。フリーレンが本編で再度魔王城を目指しているのはそのため。
未来を見通す力を持つ、魔王の腹心。人間の若い男に似た姿で、フードを被っている。
同系統の予知能力を持つ南の勇者との読み合いの果て、互いに「相討ちしかない」という結論に到達。全七崩賢を率いて決戦を挑み、うち三名を犠牲にした上で自身も南の勇者と相討ちになった。
七崩賢
魔王直下の大魔族七名の呼称。
かつて三名が南の勇者に、二名がヒンメル一行に討たれた。
そのため、本編の時間軸で生き残っているのは僅か二名である。
いずれも強力無比な魔法を操る大魔族だが、七崩賢に匹敵する実力の大魔族もおり、魔王軍上位7名の呼称というわけではないらしい。魔王軍での立場も上位ではあるが絶対的ではなく、他の大魔族とは対等に話すし、命令拒否を食らうことさえある。
魔王軍に属する魔族で、その幹部《七崩賢》のひとり。生き残りの片割れ。
豊かなピンクの長髪を持つ女性の姿で、左手に天秤を持っている。
魔力に劣る相手を支配する服従させる魔法《アゼリューゼ》の使い手。
勇者ヒンメルの死後に活動を再開し、グラナト領への侵攻を企てた。
「首切り役人」という名の三人の配下を従えている。
魔王軍に属する魔族で、その幹部《七崩賢》のひとり。生き残りの片割れ。
長い赤髪をオールバックにした男性の姿。左肩にかけた分厚いコートは刀や槍に変化する。
自他共に認める七崩賢最強の魔族で、万物を黄金に変える魔法《ディーアゴルゼ》の使い手。
現在は自らが黄金に変えた城塞都市ヴァイゼに封印されており、
ヴァイゼを取り戻そうとするデンケンやフリーレンたちの前に立ち塞がる。
魔王軍に属する魔族で、その幹部《七崩賢》のひとり。フリーレンの回想で僅かに登場した。
明かされている姿は人間からはかけ離れているが、これが鎧兜などの装飾によるものか、
本人の素の姿なのかは不明。なかなかの巨体で七崩賢では一番の偉丈夫。
強力な結界魔法の使い手だったが、結界を脱出したヒンメル一行に討たれる。
魔王軍に属する魔族で、その幹部《七崩賢》のひとり。
見た目はおかっぱ頭に長身痩躯の青年男性。
相手に幻覚を見せる楽園へと導く魔法《アンシレーシェラ》の使い手。記憶の操作も可能。
回想で名前が判明した後、過去に飛んだフリーレンを襲撃する形で本格的に登場した。
最終的にはヒンメル一行に討たれたとみられるが、詳細は不明。
- ほか三名の七崩賢
現時点では既に死亡していること以外ほぼ不明。南の勇者との決戦の際の集合シーンでわずかに姿が確認できる。3名とも姿は人間に近い。
内訳は中背で髪の短い若い男に似た姿の個体(右端に立っている)、中背でボブカットの若い女に似た姿の個体(左端に立っている。隣のベーゼの胸辺りに頭があるのでかなり長身という可能性もある)、背の低い少女に似た姿の個体(中央に立っている)。
将軍
熟練の魔族の戦士であり、強大な魔力で身体能力を強化し武術を操る。人間のそれとは当然違うが戦士らしく独自の美学がある模様。なお、魔王軍の役職などではなくあくまで人間側からの呼称。
魔王軍の将軍のひとり。巨躯であり鎧兜に身を固めた姿。
1000年前に軍勢を率いてエルフの集落を襲撃するも、フリーレンに倒された。
魔族の将軍のひとり。上半身は人に近いが四本腕で下半身は蛇という異形。
魔法で作り上げた重さを自在に変えられる四本の剣「神技の砕剣」を武器とする。
魔族の将軍のひとり。人間型ながら蓬髪にスパイクの付いた肩当てという荒々しい外見。
魔王の死後手下を率いて要塞都市ヴァイゼへと迫るがマハトによって討たれた。
マハトによると「聡明だと思っていた」らしく魔王という統率者がいなくなってしまった為、軽挙な行動で身を滅ぼしてしまったとマハトは推測した。
魔族の将軍のひとり。「魔族最強の戦士」を自称する大魔族で戦闘狂。
人間そっくりの魔族としてはトップクラスの巨躯。長髪に垂れ目、歯をむき出しにする癖がある。
グラオザームやソリテールを若造扱いするなどかなりの高齢な様子。
かつてヒンメル一行への襲撃に参加。現代でも生き延びておりシュタルクの故郷を滅ぼした。
その他の魔族
CV:安元洋貴
魔王軍に属する魔族で「腐敗の賢老」の異名を持つ。
人間離れした容姿をしており、がっしりした数メートルの巨体を持つ。
人を殺す魔法《ゾルトラーク》を開発した極めて優れた魔法使い。
あらゆる防御魔法と魔法耐性を貫通して人体を直接破壊するその魔法は
当時の数多の冒険者や魔法使いを葬り去ったという。
あまりの強さに、かつてのヒンメル一行では倒せず、ある村のはずれに封印された。
黄金郷のマハトと旧知の仲である大魔族。
水色の長髪に垂れ目。角も小さく魔族としては地味な外見をしている。
人間界においては全くの無名だが、それは「出会ったものが誰も生き残っていない」という事を意味するもので、その実力は七崩賢最強のマハトに匹敵するほど。
研究者肌の魔族で、人間に強い興味を持っており、遭遇するとまず「お話し」して相手の生い立ちや感情を知ろうとする。魔王とも知己であり、かつては魔王軍に身を置いていた模様。
マハトに協力し、ヴァイゼを元に戻そうとするフリーレンたちと敵対した。
現代でも生き残っている大魔族。星を覆いつくす「呪い」を進行させているという。
大魔族の中でも特に協調性に乏しく、魔王や魔族の存亡には興味がないと公言するほど。
かつてヒンメル一行襲撃のためグラオザームに呼び出されたが、協力を拒否して去った。
この作品には珍しく褐色肌の持ち主。
CV:内藤有海
とある村で子供を食べるも、虚ろな様子で「おかあさん」と呟き続ける様子を見たヒンメルと村長の試みにより村長の養女となった少女の姿の魔物。
しばらくは村人と共に穏やかに暮らしていたが、やはり人の情や社会性を理解することはできず、子を殺された母親から向けられる憎悪の視線を厭い「代わりを与える」として村長夫妻を殺害し村長の娘を差し出す。
ヒンメルとフリーレンに討伐されるも、最後まで「おかあさん」と呟き続けた。曰くそれは「口にするだけで何故か人が手を出せなくなる、魔法のような不思議な言葉」。
- クソみたいな驕りと油断で死んだ魔族
CV:河村梨恵(リーダー格と思われる個体)
バザルトが壊滅させたエルフ集落の生き残りを狩りに来た三人組。
フランメはバザルトよりも強いと断言している。いずれも仮面や兜で顔を隠し杖を持った魔法使い。
魔族特有の狡猾さの反面、その強さからくる慢心(曰く「クソみたいな驕りと油断」)で
フランメの実力を見誤り、不意を突かれて全滅した。
このあんまりな名前は公式の人気投票の際のもので、X(Twitter)の公式アカウントでもこの名で紹介されている。
- エングの魔族
北側諸国のエングという地域を支配下に置いていたがヒンメル一行に討伐された。
頭部は犬か狼に似て背中からは複数の蛇を生やした巨人という、確認できる魔族の中では際立って異形の姿をしている。
- 剣の魔族
北方の貴族ダッハ伯爵家から家宝の剣を盗み出した魔族。
角は羊のように小さく丸まっているためフードを被るだけで人間に変装できる。
- レヴォルテの部下
ゲナウの故郷の村を襲った神技のレヴォルテ配下の魔族。いずれも名称不明。
自身の姿を変える魔法による不意打ちを得意とする幼い少女の姿の魔族。
魔力感知を阻害する霧を発生させる霧を操る魔法《ネベラドーラ》の使い手で左の角が折れた和装ような恰好の男の姿の魔族(画像左)。
日本刀に似た刀による接近戦を好み攻撃を旋風に変える魔法《メドロジュバルト》と併用する目隠しをした女の姿の魔族(画像右)の3人。
他に「幼い息子がいる」とゲナウに命乞いをするも見破られた糸目の男の姿の魔族もいたが、配下の一人なのかたまたま寄ってきた野良魔族だったのか詳細は不明。
七崩賢の一人、奇跡のグラオザーム配下の魔族。女神の石碑の一つを監視していた。
右の額から一本の角が生えている。空間転移の魔法の使い手であり、相手を上空へ転移させ、自由落下で転落死させる戦法を得意とする。