概要
手塚治虫の歴史大河浪漫『火の鳥』の第3章。『COM』1968年9月号から1969年2月号まで掲載された。
「古事記」のヤマトタケル伝説をもとに描かれており、手塚治虫が敗戦を経て「歴史認識とは何であろうか?」という疑問を抱いたことが執筆の契機になっている(なお、該当する2ページ分の内容は単行本化に際しカットされた)。
古墳時代を舞台としており、石舞台古墳と埴輪が物語の鍵となっている。
全編を通じて火の鳥シリーズで最もギャグやメタネタが多く、コミカルな作風である(あくまでシリアスさの幕間であって、全体的にシリアスなのは変わらない)。
例
- 「王よ!」「なんだ長島」
- 「なんでこんな奴だけ4段ぶち抜きで描くのだ! ワシはあんな小さなコマが初登場だったのに!」
- 「心優しい ラララヤマトの子 10万馬力だ鉄腕大王」「どっかで聞いたことがあるな」
秋田文庫版ではページ数の都合から第11章『異形編』と併録されている。
また、1987年にはOVA化もされた。ポプラ社から子供向けの小説版も発行されており、これらの作品ではギャグが大幅減となっている。
あらすじ
時は4世紀、古墳時代。大和朝廷を支配するソガ大王は、自身の偉業を後世に残すべく「正しい」歴史書を作っていた。大和朝廷の支配に従わないクマソ国を疎ましく思ったソガ大王は、反抗的な末子・ヤマトオグナをクマソ国王・川上タケルの抹殺に向かわせる。
オグナはタケルを「間違った」歴史書を作る謀反人だと信じていたが、クマソに潜入しタケルの妹・カジカら交流を深めていくうちに、ソガの残す歴史書に疑問を抱くようになる。しかし、クマソにいつまでもいるわけにもいかず、長老の葬儀で悲しむタケルを女装して油断させ暗殺、逃亡を図る。
カジカは愛しいオグナが兄を殺したことを恨み、追っ手を差し向けるが…。
登場人物
以下、CVはOVA版
大和朝廷
本作の主人公。音楽を愛する優しい美青年。無能な父・ソガの政策に反抗的だったため、厄介払いを兼ねてクマソ征伐を申し付けられる。
クマソに住む火の鳥と美しい笛の調べで交流を深め、クマソの追撃から逃れることが出来た。しかし、ソガの古墳建造を資料改竄で遊園地と動物園にしたため、ソガからの怒りを買い投獄される。ソガ没後は兄達によって殉死させられそうになるも、生口(奴隷、人柱)の代わりに埴輪を埋めるというアイデアを残し、次の代からはその案が採用されることとなる。
- ソガ大王(CV:岸野一彦)
オグナの父。風采の上がらないギャグ漫画じみた外見をしており、小心者で短気(OVA版並びに小説版では異なる)。自分が何も成し遂げていないのを恥じて「正しい」歴史書を残し、豪勢な古墳を建造しようとしている小物。
終盤で病に倒れ、散々命乞いした末に絶命する。
- オグナの兄たち
長い髪と髭で顔すらろくに描かれないバカ息子3人組。ソガの庇護下で好き放題しており、反抗的なオグナを見下している。
- 手ナヅチ&足ナヅチ
タケル抹殺の為にオグナに渡された2人の側近。演者はチックとタック。
クマソの追撃を受け大岩に圧し潰されて絶命する。
クマソ
本作のクマソ一族は『黎明編』終盤で登場するタケルの末裔である。
- 川上タケル(CV:屋良有作)
クマソ現国王。勇猛果敢な賢人。クマソの紡いだ歴史を書に纏めようとする。高潔な人物であったが、オグナに殺されてしまい、死の間際にタケルの名を与えた。
モデルは神話におけるクマソタケル(兄)。
後に『鳳凰編』で彼の書いた史書が登場した。
神話におけるクマソタケル(弟)に当たる、タケルの妹。
常にビキニアーマーのような鎧に身を包んだお転婆娘で、兄に反抗的。オグナを愛するようになるが、彼の裏切りを受けて怒り、追撃を行う。しかしそれでもオグナを心底から憎むことが出来ず、ヤマトに侵入するが…。
- 長老
『黎明編』に登場するタケルその人。
天寿を全うしたため国を挙げた葬式が行われた。
- 長島
タケルの側近で会計役を務める老人。
関連イラスト
関連項目
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