概要
フォーミュラEとは、国際自動車連盟(FIA)が主催する自動車レース。都市部における大気汚染対策となる電気自動車の普及促進を狙い、レースを身近に感じさせるとともに速度の低さ(後述)をカバーすべく世界各地の大都市や有名リゾート地の市街地をコースとし行われた。また、市街地コースを使用するためにインドネシアやモロッコ等のF1が開催されない国でもレースが行われる。
当初は一般的なサーキットでのレースは行われていなかったが、2015-2016年シーズンからはメキシコシティのエルマノス・ロドリゲス・サーキット、2016-2017年シーズンからはモナコのモンテカルロ市街地コースとF1の開催されるコースでもレースが行われるようになった。またマシンのパワーアップ、近年の安全意識の高まりによって市街地での開催が難しくなってきており、アメリカ・ポートランドやスペイン・バレンシアサーキットといった常設サーキットを利用する事も出てきた。
大会は「e-Prix」(eプリ)と称される。これはF1が各大会を「グランプリ」と称するのにちなみ、電気を強調するためにeと付けたものである。
FIA傘下の他のレースカテゴリーがエンジン付きの自動車を用いている中、唯一完全な電気自動車を使ったカテゴリーとなっているため、「電気自動車(EV)のF1」という俗称もある。
東京e-Prix
2024年3月30日、東京ビッグサイト東展示場周辺にて日本初開催。
コースの一部に公道を使用する事から警視庁が実施に難色を示していたが、調整の末に開催にこぎつけた。
コースは1周2.582km×33周(プラス、セーフティカー導入時間に応じて加算されるアディショナルラップ)。
会場には東京都知事・小池百合子氏と内閣総理大臣・岸田文雄氏も訪れた。
なお、大会開催に先立って2022年11月にフォーミュラEマシンのデモランが行われ、山本左近(当時はもうレーサーではなく衆院議員)がGen2マシンをドライブ。ドーナツターンを披露したが最後にタイヤバリアにぶつけてフロントウイングを壊した。
2023-2024年シリーズの参戦チーム
- DS・ペンスキー:DSオートモビルズ(シトロエン)のワークスチームで、米インディカーにも参戦するペンスキーが運営。元『ドラゴンレーシング』。
- マクラーレン:F1の名門マクラーレンが撤退したメルセデスからチームを譲り受けて参戦。日産のパワーユニット(PU)を搭載。
- マセラティ・MSG・レーシング:イタリアのスポーツカーメーカー、マセラティのワークスチーム。元『ヴェンチュリー』。
- ジャガー・TCS・レーシング:ジャガーのワークスチーム。
- エンヴィジョン・レーシング:イギリスのヴァージングループが立ち上げた『ヴァージン・レーシング』を引き継いだチーム。ジャガー製PUを搭載。
- アバランチ・アンドレッティ:米インディカー等でも有名なアンドレッティが運営するチーム。一時はBMWと提携。現在はポルシェ製PUを搭載。
- ポルシェ・フォーミュラEチーム:ポルシェのワークスチーム。
- マヒンドラ・レーシング:インドの自動車メーカー『マヒンドラ』のワークスチーム。
- ニッサン・フォーミュラEチーム:日産自動車のワークスチーム。資本提携を結ぶルノーが運営していた『ルノー・e.dams』を引き継いだ形。
- ERT・フォーミュラEチーム:中国の電気自動車メーカー『NIO』(上海蔚来汽車)のワークスチーム。元『チャイナレーシング』。
- アプト・クプラ・フォーミュラEチーム:ドイツの自動車関連会社『アプト・スポーツライン』の運営するチーム。当初はアウディと提携。クプラはスペインの自動車会社『セアト』の一ブランド名。マヒンドラ製PUを搭載。
マシン
「フォーミュラ」とは「決まり」「規定」を意味し、モータースポーツでは「タイヤとコックピットがむき出しのマシン」を指す(→フォーミュラカー)。
F1とは異なり、FIAが指定した車体を全てのチームが使用するワンメイクレースである。インディカーやスーパーフォーミュラ等世界の多くのフォーミュラカーシリーズの共通車体を製作する『ダラーラ』社(イタリア)製である。
ガソリン車における燃料タンクにあたるバッテリーも全チームで共通化されている。
パワートレイン(モーターやインバータ、ギアボックス等の総称)とリアサスペンション周りについては各チームの独自開発が認められている。
また、F1マシンに2018年から装着された頭部保護デバイス「HALO(ハロ、ヘイロー)」も同年のフォーミュラEマシンに装着されている。
2023年のシーズン9からは「Gen3」と呼ばれる新型マシンが投入された。
F1の甲高いエンジンの響き(と言ってもそのF1も2014年から採用された「パワーユニット」により低音で静かになったが)と異なり音が非常に小さいのが特徴で、タイヤのスキール音(路面とこすれる音)まで聞こえる。オンボード映像で聞こえるモーター音とスキール音はさながらRCやミニ四駆を連想させる。
Gen1(2014〜2018年)
最初に用いられた共通マシン。速さはフォーミュラ3と同程度だった。バッテリーがまだ貧弱で出力・容量が大きくなくレース終了まで電力がもたなかったため、レーサーは一度ピットに入り「マシンを乗り換えて」レースに戻った。何となくサイクロンマグナムに似たデザイン。2016年シーズンからフロントウイングのデザインが変更された。
Gen2(2018〜2022年)
バッテリーが強化され出力・容量が大幅に向上。このため速度が向上するとともにマシンの乗り換えが無くなった。外観は前輪がカウルに覆われ全体的に空力を意識させるフォルムになった。グランツーリスモシリーズのレッドブル・X2010にどことなく似ているような…。タミヤからRCモデルが発売されている。
Gen3(2023年〜)
前述の通り、シーズン9から投入された新型。Gen2より更にバッテリーが強化され出力・容量が大幅に向上している。
上から見ると紙飛行機みたいなくさび形をしており、フロントウイングが簡素化しタイヤカバーが無くなった。取り付け強度が高くなく従来より接触に強くないため、強引なオーバーテイクを仕掛けることは難しくなった。しかしハンコックが供給するローグリップの全天候型グルーブドタイヤやローダウンフォースの特性も相まり、オーバーテイク回数は劇的に増加した。
ユニークなルール
マシンの乗り換え(2017-2018年シーズンで終了)
前述の通り、マシンの電力がレース終了までもたなかったため、レーサーは必ず一度ピットインし、充電済の別のマシンに乗り換えてレースに戻った。
ファンブースト(2021〜2022年シーズンで終了)
SNS上のドライバー人気投票を決勝レーススタート6分後まで行い、上位3名(のち5名)はレース中に出力ブーストを一時的に使用できるようになっていた。
アクティベーションゾーン
2018〜2019年シーズンから導入。コース上のある箇所に設定されたラインを通過すると「アタックモード」という出力ブーストを一時的に使用できるようになる。中継映像にはマリオカートやF-ZEROの加速ゾーンのようなグラフィックが表示される。なお使用しないという選択肢は無く、レース中に必ず2回通過し使用しなければならない。
チーム
大半がEVを製造する自動車メーカー傘下のチームとなっており、中にはメルセデス(後にマクラーレンに売却)やポルシェ、ジャガー、マセラティといったF1参戦経験のあるメーカーのチームもある。
日本との関わり
フォーミュラEの最初の車体の開発ドライバーの1人として佐藤琢磨が起用され、後にスポット参戦した。この他にも山本左近や小林可夢偉といったF1経験者が参戦した。
2024年現在は日本人ドライバーはいないが、ルノーが運営していたチーム『e.dams』を日産自動車が買収し、2022-2023年シーズンからフルコンストラクターおよびモーターサプライヤーとして参戦している。
また、ニック・キャシディやストフェル・バンドーン、かつてはアンドレ・ロッテラーやオリバー・ターベイ、ロイック・デュバル等、日本のスーパーGTやスーパーフォーミュラに参戦した外国人ドライバーが多数参加しているのも親しみが湧きやすいポイント。
フォーミュラG
2024年以降に発足する事を目指している電気自動車のフォーミュラカーレースシリーズ。フォーミュラEや既存の内燃機関車のシリーズのサポートレースとして開催されるという事以外、現時点で判明している情報は少ない。
関連イラスト
別名・表記ゆれ
例)FormulaE, Formula E, FiaFormulaE
関連タグ
モータースポーツ, F1, フォーミュラカー, ニスモ, メルセデス・ベンツ, 電気自動車