概要
人知を超えた力を持つ聖衣をまとい小宇宙を燃やす正規の聖闘士とは異なり、現代科学のみで作られた鎧鋼鉄聖衣をまとう非正規の聖闘士。東映アニメーション制作のアニメ版のみに登場するオリジナル設定である。
当初はTVアニメ版(所謂無印)のオリジナル設定として作られた。後代の設定である聖闘士星矢Ωにも登場するが、2作品でその設定や扱いの詳細は異なっている。
無印アニメにおける鋼鉄聖闘士
星矢たち青銅聖闘士をサポートするため、城戸光政の指令で養成された非正規の聖闘士であるアニメオリジナルキャラクター。
その存在は沙織にも知らされてはいなかったため、当初は敵か味方かわからない謎の戦士として登場した。
グラード財団の財力と麻森博士の協力によって作られた機械の聖衣・『鋼鉄聖衣』を纏って戦う。
聖闘士の闘法『小宇宙』を身に着けてはいないが、鍛えた肉体と鋼鉄聖衣の能力により、青銅聖闘士と同等の力を発揮するとされる。
鋼鉄聖闘士は守護星座を持っていないが、纏う鋼鉄聖衣にはモチーフとなる星座が設定されている。
連携攻撃『スチールハリケーン』が必殺技。
また、手の甲についている謎の穴によって火炎攻撃などを吸収してしまう能力を持っている。
- スカイクロスの翔(しょう)
巨嘴鳥星座をモチーフとしたスカイクロスを纏う青髪のクールな少年。
- ランドクロスの大地(だいち)
子狐星座をモチーフとしたランドクロスを纏う緑髪の少年。猫耳のようなヘッドパーツが特徴的。本来美少年でも男性キャラのキャスティングは常にほとんど男性声優を起用している『聖闘士星矢』シリーズでは珍しく、女性声優の鈴木みえが起用されている。
- マリンクロスの潮(うしお)
旗魚星座をモチーフとしたマリンクロスを纏う茶髪の少年。頬の傷から受けるやんちゃな印象とは裏腹にメカに強い少年。
無印鋼鉄聖闘士の問題点とその末路
週刊少年ジャンプに連載されていた聖闘士星矢は、開始後すぐの異例の速さでアニメ化が決定しオンエアは連載開始から半年足らずでスタートしたため、アニメが連載にすぐ追いついてしまうこととなった。
そのため、アニメオリジナルの設定・展開を用意して尺稼ぎをすることがままあった。
しかし、連載自体もまだ序盤で世界観がしっかりと確立していない部分もあり、アニメスタッフも手探りだったのだろうが(後年にキャラデザ担当の荒木伸吾は当初原作を読んで「面食らった」と発言しており、当初は今までの自分の要素を持ち出しすぎていたことを認めている)、それにしてもあまりにも浮いたと言わざるを得ないオリジナルのキャラクターが多数生み出されることとなる。
鋼鉄聖闘士はその一つである。
問題は、この鋼鉄聖闘士はキャラクターデザインにバンダイが大きく関わっており、聖闘士聖衣大系(おもちゃ)の販促も兼ねていたため、主役である星矢達を差し置いて活躍する面が多々あったこと、原作エピソードの白銀聖闘士戦に割り込むような形で登場したことである。
物語が進み、最も人気の高い「聖域十二宮編」へと突入すると同時に、鋼鉄聖闘士は(裏方に回るという名目で)登場しなくなるものの、CM放送前に映されるアイキャッチでは主役陣を差し置いて最前列で決めポーズを取りアピールを続けた(そのためか瞬が沙織の影に隠れて見えなくなっている)。
十二宮編終了後は姿を消し、一切触れられることはなくなった。
その為、ファンからは「鋼鉄」と「更迭」をかけて、「更迭聖闘士」などと呼ばれることがある。
なお、彼らの登場回を執筆した脚本家の小山高生はのちにインタビューで彼等の更迭が視聴者からのクレーム殺到が大きな理由であったことを明かし、登場を上層部から提示された時点で「嫌な予感」がしたといい最初からスベることを予想していた。
ただしスタッフの中でも作画監督の一人井上栄作はかなりのお気に入りで、気合を入れて作画していたらしい。
なお、鋼鉄聖衣の制作者の麻森博士の苗字は「マシン」とかけた駄洒落で小山がネーミングしたものである。
アニメ初期はチープなオリジナル設定が入り乱れた非常にカオスな時期であり、原作を知っていたファンにしてみると総じて不評であった。
しかしその混沌期も年月がたった今となっては黒歴史であると同時に懐かしさを感じさせるものでもあり、鋼鉄聖闘士はその代表ともいえる存在である。
アニメ開始から1年くらい経つと原作とアニメの歩み寄りが程よく進み、後にオリジナル展開として挿入された「アスガルド編」に登場する神闘士達は同じアニメオリキャラでも原作信者から叩かれることが幾分少なくなっており、それだけに鋼鉄聖闘士の不遇ぶりがいっそう目立っており、このまま黒歴史として忘れ去られるとも思われていた。
尚、近年の星矢ブームリバイバルに乗ってPS2版格闘ゲームに登場したほか、聖闘士聖衣神話が作られるなど、実はコアな人気があるのかもしれない・・・?
そしてまさかの展開が待っていた。
Ωにおける鋼鉄聖闘士
聖闘士星矢Ωにおいて、2013年4月より開始の新章(所謂二期)にて鋼鉄聖闘士の新キャラで12歳の「昴」が登場している。無印での鋼鉄聖闘士の扱いは上記のような結果になっていため、公式発表時は多くのファンが驚きをもって迎えた。
武装偵察隊としての性格が強かった旧作に対して本作では鋼鉄聖闘士は量産型タイプの鋼鉄聖衣をまとい正規の聖闘士のサポート役として設定され、青銅聖闘士未満で旧作の雑兵に準じる力量のようである。またその指導はパライストラで正規聖闘士の候補生達とともに行われており、鋼鉄聖闘士の統括や指導には引退した元青銅聖闘士の那智、蛮があたっている。昴はパライストラの制服の色違いの黒紺の制服を着ている。鋼鉄聖衣のアンダーウェアはツートンカラーになっている。
共通技「スチールボルトアロー」「スチールハリケーン」を持ち、体術はそれなりに一般人よりは優れているものの正規聖闘士には全く及ばず、小宇宙は発揮できてもごく不十分なレベルである。
鋼鉄聖衣は小宇宙の高まりで強化されることはないらしく、3級パラサイトにも簡単にヒビを入れられており、弱い者はパラサイト兵にすら歯が立たず、正規の聖闘士なら何でもないような攻撃でもあっさり命を落としてしまったりする。
加えて正規の聖衣でない為にアテナに面会する事も出来ず、正規の聖闘士達からも一線を引いて扱われている。鋼鉄聖闘士になる者の動機は様々のようだが、正規の聖闘士を志望しつつ小宇宙の覚醒が十分でなく守護星座が見つからない者も少なからず在籍しているようである。年齢は結構幅が広いようで、少年少女はもちろん成人も在籍している。正規の聖闘士でないせいか掟からもある程度枠の外に置かれているようで、女性も仮面はしていない。
ただし、二期開始早々に昴自身の素性が訳ありであることがほのめかされており、あえて今鋼鉄聖闘士を設定したことには今後の展開上大きな理由があるようである。本編中では昴が鋼鉄としては破格のタフさを発揮しており、正規の聖闘士でも苦戦する2級パラサイトに渡り合う力を(突発的にではあるが)披露するなど上記の鋼鉄のレベルから外れる描写がされている。
さらに2期2クール近くから「一般の鋼鉄聖闘士が簡単に命を落とす」描写が繰り返されており、昴の存在は鋼鉄聖闘士の中ではかなり異質な存在であることが強調されている。
Ωにおける鋼鉄聖闘士達
余談
聖闘士星矢Ωのサブライターとして1,2期とも登板している小山真は上記の小山高生の息子であり、親子2代で星矢シリーズに関わり鋼鉄聖闘士のエピソードを描写する縁となっている。
関連タグ
TVアニメ初期オリジナル聖闘士