概要
人知を超えた力を持つ聖衣をまとい小宇宙を燃やす正規の聖闘士とは異なり、現代科学のみで作られた鎧鋼鉄聖衣をまとう非正規の聖闘士。東映アニメーション制作のアニメ版のみに登場するオリジナル設定である。
当初はTVアニメ版(所謂無印)のオリジナル設定として作られた。後代の設定である聖闘士星矢Ωにも登場するが、2作品でその設定や扱いの詳細は異なっている。
無印アニメにおける鋼鉄聖闘士
星矢たち青銅聖闘士をサポートするため、城戸光政の指令で養成された非正規の聖闘士であるアニメオリジナルキャラクター。
その存在は沙織にも知らされてはいなかったため、当初は敵か味方かわからない謎の戦士として登場した。
グラード財団の財力と麻森博士の協力によって作られた機械の聖衣・『鋼鉄聖衣』を纏って戦う。
聖闘士の闘法『小宇宙』を身に着けてはいないが、鍛えた肉体と鋼鉄聖衣の能力により、青銅聖闘士と同等の力を発揮するとされる。
鋼鉄聖闘士は守護星座を持っていないが、纏う鋼鉄聖衣にはモチーフとなる星座が設定されている。
連携攻撃『スチールハリケーン』が必殺技。
また、手の甲についている謎の穴によって火炎攻撃などを吸収してしまう能力を持っている。
- スカイクロスの翔(しょう)
巨嘴鳥星座をモチーフとしたスカイクロスを纏う青髪のクールな少年。
- ランドクロスの大地(だいち)
子狐星座をモチーフとしたランドクロスを纏う緑髪の少年。猫耳のようなヘッドパーツが特徴的。本来美少年でも男性キャラのキャスティングは常にほとんど男性声優を起用している『聖闘士星矢』シリーズでは珍しく、女性声優の鈴木みえが起用されている。
- マリンクロスの潮(うしお)
旗魚星座をモチーフとしたマリンクロスを纏う茶髪の少年。頬の傷から受けるやんちゃな印象とは裏腹にメカに強い少年。
十二宮編に入ると彼らの出番は「裏方に回る」として大幅に減り、アスガルド編以降はほぼ完全に姿を消した。
これは「Ω」94話において、白銀聖闘士との度重なる戦いで3人の肉体と聖衣に極度の負担がかかってしまい、戦線離脱を余儀なくされたからだという事が明らかにされた。なお、「Ω」では上記3人を「オリジナル鋼鉄聖闘士」と称している。
誕生の経緯
作品世界の視点
教皇アーレスこと双子座のサガが世界征服を企んでいる事と、アテナ=城戸沙織の抹殺の為に手を伸ばす事を予期した城戸光政は、自らの死後に起きる戦いの為に備え、日本中の孤児を集め、聖闘士への修行に出す傍ら、当初はアシスト要員として、最悪は万が一の事態(自軍の聖闘士が再起不能、または殉職)に備え、射手座の黄金聖衣を元に分析、人工的な聖闘士を開発・養成した。
現実世界の視点
聖闘士聖衣大系が売上不振になった場合の保険として用意したが、当該シリーズが好調だった事もあり、お蔵入りにする事も出来たが、折角だからと導入した事が以下の出来事を引き起こしてしまう。
無印鋼鉄聖闘士の問題点とその末路
週刊少年ジャンプに連載されていた聖闘士星矢は、開始後すぐの異例の速さでアニメ化が決定しオンエアは連載開始から半年足らずでスタートしたため、アニメが連載にすぐ追いついてしまうこととなった。
そのため、アニメオリジナルの設定・展開を用意して尺稼ぎをすることがままあった。
しかし、連載自体もまだ序盤で世界観がしっかりと確立していない部分もあり、アニメスタッフも手探りだったのだろうが(後年にキャラデザ担当の荒木伸吾は当初原作を読んで「面食らった」と発言しており、当初は今までの自分の要素を持ち出しすぎていたことを認めている)、それにしてもあまりにも浮いたと言わざるを得ないオリジナルのキャラクターが多数生み出されることとなる。
鋼鉄聖闘士はその一つである。
問題は、この鋼鉄聖闘士はキャラクターデザインにバンダイが大きく関わっており、聖闘士聖衣大系(おもちゃ)の販促も兼ねていたため、主役である星矢達を差し置いて活躍する面が多々あったこと、原作エピソードの白銀聖闘士戦に割り込むような形で登場したことである。
物語が進み、最も人気の高い「聖域十二宮編」へと突入すると同時に、鋼鉄聖闘士は上記の通り登場しなくなるものの、CM放送前に映されるアイキャッチでは主役陣を差し置いて最前列で決めポーズを取りアピールを続けた。
「Ω」94話においても同様の事をやらかしている(これは上記のセルフパロディ的な意味合いであるが)。
制作上の理由としては、彼らが消えたのは「視聴者からの著しい不評」である。
その為、ファンからは「鋼鉄」と「更迭」をかけて、「更迭聖闘士」などと呼ばれることがある。
彼らの登場回を執筆した無印のシリーズ構成担当小山高生はのちにインタビューで彼等の初登場以来テレビ朝日にはクレームが殺到していたことが彼らの「更迭」の原因であることを明言、登場を上層部から提示された時点で「嫌な予感」がしたといい最初からスベることを予想していた。
ただしスタッフの中でも作画監督の一人井上栄作はかなりのお気に入りで、気合を入れて作画していたらしい。
なお、鋼鉄聖衣の制作者の麻森博士の苗字は「マシン」とかけた駄洒落で小山がネーミングしたものである。
アニメ初期はチープなオリジナル設定が入り乱れた非常にカオスな時期であり、原作を知っていたファンにしてみると総じて不評であった。
しかしその混沌期も年月がたった今となっては黒歴史であると同時に懐かしさを感じさせるものでもあり、鋼鉄聖闘士はその代表ともいえる存在である。
アニメ開始から1年くらい経つと原作とアニメの歩み寄りが程よく進み、後にオリジナル展開として挿入された「アスガルド編」に登場する神闘士達は同じアニメオリキャラでも原作信者から叩かれることが幾分少なくなっており、それだけに鋼鉄聖闘士の不遇ぶりがいっそう目立っていた。その後はネタとして時折ファンの間で話題にはなっていたが、このまま公式としては黒歴史にされるものと思われていた。
尚、近年の星矢ブームリバイバルに乗ってPS2版格闘ゲームに登場したほか、聖闘士聖衣神話が作られるなど、実はコアな人気があるのかもしれない・・・?
と思いきやまさかの展開が待っていた。
Ωにおける鋼鉄聖闘士
聖闘士星矢Ωにおいて、2013年4月より開始の新章(所謂二期)にて新メインキャラとして12歳の「昴」が登場している。無印での鋼鉄聖闘士の扱いは上記のような結果になっていため、同年2月末の公式発表時は多くのファンが驚きをもって迎えた。
武装偵察隊としての性格が強かった旧作に対して本作では鋼鉄聖闘士は量産型タイプの鋼鉄聖衣をまとう正規の聖闘士のサポート役として設定され、青銅聖闘士未満で旧作の雑兵に準じる力量のようである。
またその指導はパライストラや外部の専用施設で正規聖闘士の候補生達とともに行われており、鋼鉄聖闘士の統括や指導には引退した元青銅聖闘士の狼星座の那智、子獅子星座の蛮があたっている。
昴はパライストラの制服の色違いの黒紺の制服を着ている。鋼鉄聖衣のアンダーウェアはツートンカラーになっている。
共通技「スチールボルトアロー」「スチールハリケーン」を持ち、体術はそれなりに一般人よりは優れているものの正規聖闘士には全く及ばず、小宇宙は発揮できてもごく不十分なレベルである。
鋼鉄聖衣は小宇宙の高まりで強化されることはないらしく、3級パラサイトにも簡単にヒビを入れられており、弱い者はパラサイト兵にすら歯が立たず、正規の聖闘士なら何でもないような攻撃でもあっさり命を落としてしまったりする。
加えて正規の聖衣でない為にアテナに面会する事も出来ず、正規の聖闘士達からも一線を引いて扱われている。
鋼鉄聖闘士になる者の動機は様々のようだが、正規の聖闘士を志望しつつ小宇宙の覚醒が十分でなく守護星座が見つからない者も少なからず在籍しているようである。
年齢は結構幅が広いようで、少年少女はもちろん成人も在籍している。正規の聖闘士でないせいか掟からもある程度枠の外に置かれているようで、女性も仮面はしていない。
小宇宙の覚醒が十分であり守護星座を見いだす事ができれば正規聖闘士への昇格も不可能ではないようだが、現在の所正規聖闘士になったのは昴1人である。
ただし、二期開始早々に昴自身の素性が訳ありであることがほのめかされており、あえて今鋼鉄聖闘士を設定したことには今後の展開上大きな理由があるようである。
本編中では昴が鋼鉄としては破格のタフさを発揮しており、正規の聖闘士でも苦戦する2級パラサイトに渡り合う力を(突発的にではあるが)披露するなど上記の鋼鉄のレベルから外れる描写がされている。
さらに2期2クール近くから「一般の鋼鉄聖闘士が簡単に命を落とす」「正規の聖闘士でないが故のコンプレックス等の悲哀」「人類の精一杯の抵抗」といった描写が繰り返されており、昴の存在は鋼鉄聖闘士の中ではかなり異質な存在であることが強調されている。
第94話は鋼鉄聖闘士を中心として描かれており、アイキャッチに乱入するという演出も見られた。
天地崩滅斬の破片で自身の刻衣と武器を強化した2級パラサイト・エーギルと交戦し、この記事に名前がある鋼鉄聖闘士たちのほとんどが総出で戦った。
一対多数であったことや、エーギルが登場時に刻衣を装備せず生身で現れたなどパラスベルダ到着前の光牙らとの戦いでの傷が完治していないとも取れる描写もあったが、元黄金聖闘士も在籍していることから察するに中には黄金聖闘士に匹敵する者も存在する2級パラサイトを破るという大金星を挙げる。
但し、正規の聖闘士の経験のある青銅二軍らの助力を得た上の勝利であり、オリジナル鋼鉄聖闘士の3人も力を維持しきれずに技の途中でダウンしており、正規の聖闘士と比べると高いレベルの小宇宙を維持出来る時間が非常に短いものであることも窺える。
Ωにおける鋼鉄聖闘士達
その他無数の名無しモブ鋼鉄聖闘士が登場する。
また74話では、上記の無印鋼鉄聖闘士達3人も成人して登場。不評だった旧作アイキャッチが敢えて再現されるなど、妙にマニアックなこだわりが見える回となった。
ただし3人とも鋼鉄のままで、正規の聖闘士になることはなかったようで大地は大幅に容姿が老け込んでオッサン顔に育ってしまっている。その関係か、翔と潮は当時のオリジナルキャストが演じているのに対して大地はキャストが当時から変更されている。
また、パラスベルダの戦いでは引退し既に自身の青銅聖衣を次世代に渡してしまっている檄、蛮、那智がかつて纏っていた旧作の青銅聖衣を模した鋼鉄聖衣をあしらってもらって前線復帰している。
無印鋼鉄聖衣の制作者である麻森博士も未だ健在であり上記の鋼鉄聖衣の制作および調整にあたっている。
ちなみにΩの時代には、正式な旗魚星座の聖衣を纏う、青銅聖闘士のスピアが存在している。
かなり序盤の方に登場したキャラクターなのだが、74話では一瞬だけ出番があり、同じ旗魚星座のモチーフ同士が共演することとなった。
この時には会話らしい会話はなかったのだが、いつか本格的に絡む日は来るのだろうか。
余談
「Ω」2期でオリジナル鋼鉄聖闘士を出した言い出しっぺはブルーレイのスタッフインタビューによると2期キャラデザ担当の市川慶一とのことである。
聖闘士星矢Ωのサブライターとして1,2期とも登板している小山真は上記の小山高生の息子であり、親子2代で星矢シリーズに関わり鋼鉄聖闘士のエピソードを描写しており、94話では(伊藤イツキとの共同名議回ではあるが)20年以上の時を経て上記の通り制作上の理由で父が降ろしたキャラに関して作中的な意味合いを追加して描くという縁となっている。
鋼鉄聖闘士のモチーフはギリシャ神話のイカロスの人工翼から発想を得たのではと言われていおり、Ω後期でそのテーマは結実したと言われている。
そして、このアイデアの一部は作者が後に描いたB'TXにも影響を与えた。
関連タグ
スチールアイキャッチジャック:四半世紀ぶりに甦った
Ωスタッフによる暴挙。
TVアニメ初期オリジナル聖闘士
水晶聖闘士 炎熱聖闘士 幽霊聖闘士 王虎 ドクラテス 蓮座のアゴラ 孔雀座のシヴァ 毒蜘蛛座のアラクネ スパルタン
イカロス:ギリシャ神話で人口羽で飛ぶも墜落死した人物。無印でも天闘士・イカロスの斗馬として登場し、Ω本編でも鋼鉄聖闘士の事でフィードバックされている。
B'TX:作者唯一のSFロボット漫画で、ロボットのB'Tは鋼鉄聖闘士の影響を受けている。
アーマードトルーパー:装甲騎兵ボトムズに登場する兵器で、多大な戦果と搭乗員の高死亡率な為、「鉄の棺桶」や「ボトムズ(最低野郎)」と揶揄された。Ωの量産型鋼鉄聖衣は下手をすればATよりも死亡率が高いと言う意見の反面、共に技量があれば生存率が上がる共通点もある。
スターライツ:子孫作品の最終章に登場する類似ポジションのキャラクターで、当方よりも本編に深く関与するキーキャラクターとなっていた。