曖昧さ回避
- 首都や大都市のこと。日本で言うと東京を指す。
- アメリカのイリノイ州南部の都市の名前。
- 映画監督フリッツ・ラングが1927年に製作した映画のタイトル。少し解説。
- 漫画家手塚治虫が制作した漫画、及びそのアニメ映画。本記事ではこの作品について解説する。
メトロポリス(サイレント映画)
1927年にドイツ人映画監督フリッツ・ラングが製作したサイレイント映画で、SF映画の金字塔。
科学全盛の巨大未来都市では貧富の差が大きかったが、地上の富裕層の少年と地下の労働階層の少女が出会い、二人は労働者達に双方の絆の重要性を訴えストライキ機運が起こることになる。そこで少年の父親である社長は少女を誘拐し、代わりに少女そっくりの人造人間を作って地下に送り込み事態収拾を図ったが、思わぬ事態へ動き出す。
メトロポリス(手塚治虫)
漫画『メトロポリス』は手塚治虫が1949年(昭和24年)に発表した作品。2001年にはこれを原作にした映画が公開された。
概要
1927年の映画『メトロポリス』をモデルに、未来社会を舞台にしたSF漫画であり、発展しすぎた科学技術の力が人類に危機を及ぼす様を描いた作品である。急速な科学技術の発展は今まさに現実で起きている現象であり、それによって危惧されていることを見事にとらえている。
この作品は1949年に発表されたものであり、「メトロポリス」の姿は当時のアメリカ合衆国の大都市をモチーフとしている。
大友克洋とりんたろうによる劇場版ではフリッツ・ラング版の設定も取り入れてストーリーが全面的に改変され、原作にない要素が多く加えられている。発展都市メトロポリスの様子は、ジャズ風の曲が展開しながら緻密に描かれる。
原作同様に発展しすぎた科学技術により人類が危機に晒される様子が描かれるが、同時に手塚が『鉄腕アトム』で取り上げた、「人とロボットの共存」というテーマも盛り込んでいる。
日本ではそれほどヒットしなかったが、アメリカ合衆国での評価は高く、「史上もっとも優れたアニメのひとつ」とすら称されている。
物語
漫画版
科学の全盛期を迎えて大都市「メトロポリス」が近未来都市として発展し続けている中、突如太陽に無数の黒点が現れ始める事態が生じた。メトロポリスにて人造生命の研究をしていたロートン博士は、黒点からの放射線の力で人造タンパク質に生命が吹き溢れ始めたことに歓喜した。
しかし、秘密組織レッド党の党首レッド公に脅され、ロートン博士は凶悪な能力を持った人造人間を作ってしまう。悪用を恐れて、ロートン博士は事故と見せかけて研究所を火事にして逃亡し、人造人間をごく普通の人間として育てることにした。
数ヶ月の時が経ち、レッド党に所在を見抜かれてロートン博士は殺されてしまうが、死ぬ間際に現場に居合わせた私立探偵のヒゲオヤジに人造人間を託した。
ロートン博士によって「ミッチイ」と名付けられていた人造人間はヒゲオヤジの甥のケンイチの学校へと通わせることにしたが、素性を知るケンイチはミッチイを狙うレッド党との奮闘に巻き込まれることになるのであった。
劇場版
「心のないロボットに、愛は生まれるか」
私立探偵のヒゲオヤジと甥のケンイチは、国際手配されているロートン博士を追い、人とロボットが共存する大都市「メトロポリス」へとやってきた。メトロポリスでは丁度、街の有力者レッド公による超高層ビル「ジグラット」が完成し、繁栄のシンボルとされていた。
だが実際のメトロポリスは「共存」とは名ばかりで、ロボットたちが人に酷使されており、またロボットによって仕事を追われた労働者の人間が多くいる不平等な社会が広がっていた。
捜索の末、ケンイチとヒゲオヤジはロートン博士が潜伏している場所へと辿り着いた。しかしそこは既に何者かによって襲撃され、火事が起きていた。中に突入したケンイチはそこで1人の少女ティマを発見する。逃げ遅れたと思われるその少女は、記憶を無くしていたのか自分のことを含め何も覚えていなかった。彼女の正体は、レッド公の娘をモデルにした人造人間であり、レッド公が自らの権力を永遠のものにすることを目的に作られた。そうとは知らず彼女を助けたケンイチは、ティマを巡る争いに巻き込まれることになってしまう。
登場人物
- ケンイチ
声:小林桂
ヒゲオヤジの甥。人造人間の少女を巡り、レッド公らと対立する。
オリジナルは『新宝島』のピート少年で、『鉄腕アトム』ではアトムの級友として登場している。
- ミッチイ(原作版)
天使のように美しき容姿と悪魔のような力を併せ持つ人造人間。姿は少女にも少年にもなることが可能。
- ティマ(劇場版)
声:井元由香
劇場版におけるミッチイの立ち位置にいるキャラ。両性具有のミッチイとは異なり完全なる少女型人造人間。レッド公が造らせたロボットで、名前と容姿はレッド公の死んだ娘がモデルとなっている。
- ヒゲオヤジ
声:富田耕生
ケンイチの伯父で、手塚作品でおなじみの私立探偵。
- レッド公
声:石田太郎
本作の黒幕。漫画版では強大な犯罪組織「レッド党」のリーダー。劇場版ではメトロポリスの有力者であり、自警団・政治結社「マルドゥク党」の設立者。
自らの野望のためにロートン博士に作らせた人造人間の力を利用する。
- ロートン博士
声:滝口順平
人造人間ミッチイ/ティマを作り上げた科学者。漫画では善人だが、映画では腹黒い。
- ペロ
声:若本規夫
劇場版のみに登場した、メトロポリス警察のロボット刑事。正式名称は「803-D,R-P,D.M.497-3-C」。
「ペロ」の名はヒゲオヤジが付けた愛称。
- アトラス
声:井上倫宏
スラム街に住む、ロボットの普及により仕事を追われた失業者の1人。
ロックに追われるケンイチ達を助けるも、本人はロボットを快く思わず、無害なロボットにまで手を加える一面を持つ。
- ロック
声:岡田浩暉
劇場版のみに登場するキャラクターでオリジナルは『少年探偵ロック・ホーム』のロック・ホーム。
マルドゥク党の若きリーダーで、レッド公を心酔し、ティマを快く思わず謎の暗躍をする。
作中では隆大介、やなせたかし、永井豪などが友情出演している。