「おつかい」
「はやぶささん、ちょっとイトカワまでいってサンプル取ってきて」
書けば一行であるが。
距離にして往復60億km先の小惑星まで(この時点では惑星探査実績のない)日本の探査機が行って来ると言う時点でそのへんの「はじめてのおつかい」とはまるでレベルが違う事態である。
2003年に打ち上げられた「はやぶさ」は2005年に目的地のイトカワに到達したがサンプル取得時に問題が発生したため「おつかいに成功したかどうか」は帰ってきてみないとわからないことになった。
さらに帰り道で幾度もトラブルに見舞われ、当初の予定より3年遅れで2010年6月に「はやぶさ」は地球軌道まで戻ってきた。サンプルが入っている(かもしれない)カプセルはオーストラリア中部の砂漠地帯に落下。日本へ持ち帰り確認した結果、同年11月16日までに約1,500個のイトカワ由来の微粒子が入っていたことが判明。
「史上最大のおつかい」の成功が確認された瞬間であった。
「おつかい」成功で見逃されがちだが
実ははやぶさは世界で初めて月以外の地球外天体へ行って、さらに地球へ帰還した探査機でもあったりする。
何が凄いのか分かりづらいかも知れないが、ついに月より遠くの天体も射程に入れた大きい一歩と言えるかも知れない。
ちなみに、誤解が無いように追記すると、「『天体へ着陸して』直接採取したこと」こそはやぶさが世界で初めて成した偉業である。
宇宙区間に散らばるチリを採取する形のサンプル採取・リターン自体は、はやぶさより前になされていた。
その他にも電気推進エンジン3台同時運転や1000時間以上の稼働、電気推進による地球スイングバイなど、数々の世界初となる偉業を成し遂げた探査機でもある。