「これは、ゲームであっても
遊びではない」
――『ソードアート・オンライン』プログラマー・茅場晶彦
遊びではない概要。
ライトノベルソードアート・オンラインシリーズの全ての始まりである第1部プログレッシブ編及びアインクラッド編のなんたるかを端的に表した、舞台となる作中作SAOの黒幕であるマッドサイエンティスト、茅場晶彦の恐るべき名言。
…… で は な い 。
ほんのつい最近までいわゆる「言ってないセリフ」であり、作中で茅場が本当に発言するまでに我々の現実時間で商業書籍化から12年、web連載開始から20年以上の時を要した。
初出
元になったセリフ自体は既にweb小説時代にはあった。
アインクラッド編の短編「黒の剣士」の地の文におけるシリカの心の声である(書籍版では第2巻25P)。
「シリカは初めてSAOにおける対モンスター戦の何たるかを悟っていた。ゲームであっても遊びではない、その矛盾した真実を。」
これが最初である。
だが、お気づきだろうか?
この「黒の剣士」編そのものが後付け設定であることを。
そう。
「これは、ゲームであっても遊びではない」と言うセリフは、SAOが生まれた当初は影も形もないどころか元ネタすらなかったのだ。
商業書籍化
そしてSAOが商業化されると本扉の部分に記事冒頭の台詞が入る。
ここではじめて茅場が発言したことになったのである。
ただし、それでも原作本編では茅場が発言したことを示唆する描写は25巻を過ぎても一切ない。
だが毎巻毎巻、それこそ2021年の最新刊になっても本扉のこのセリフは未だに続けられている。
よほど慎重さと冷静さを兼ね備えたweb読者上がりの攻略組でもなければ完全に茅場が言ったセリフだと刷り込まれてしまっているのだ。
もはやこれはSAO名物アラームトラップに等しい悪辣な罠と言えようものである。
アニメ第1期
そしてSAOのシリーズ展開が軌道に乗り始めたアニメ第1期、ここでようやく茅場が言ったような描写が出てくる。
主人公キリトがリアルで読んでいたゲーム雑誌に茅場の制作者インタビューが載っており、作中で茅場が発言した描写はそれが初出となる。
劇場版星なき夜のアリア
そして2021年。アニメ第1期第1話がアスナ視点でリメイクされたことで、ようやく作中で本当に「これは、ゲームであっても遊びではない」と言うセリフを茅場が発言することになる。
「最後に一つ…プレイヤーの諸君に忠告しておこう」
「これは、ゲームであっても遊びではない」
実際に発言するまでの経緯
全ては2009年2月当時、SAO原作者川原礫氏の別作品『アクセル・ワールド』の担当編集であった三木一馬氏の仕業である。
だからシャミ子は悪くないよ。
AW第1巻の巻末にSAOの宣伝広告を入れるに当たり、三木はキャッチコピーを作るべくSAO作中の良さそうなセリフを見繕っていた。そこで目に止まったのが上記のシリカの心の声。
「これたぶん茅場が言ったな!」そう確信した三木の魔の手により茅場が言ったことにされてしまったのであった。
アリア入場者特典の裏攻略本での座談会によれば、茅場に実際に言わせるのは原作者12年越しの念願であったそうな。
つまり言ってないセリフであったのは原作者も自覚していた。
結論
しつこくゴリ押しすればだいたいは茅場晶彦ってやつの仕業にできるし、
実際作中でも法整備がまだであったがゆえのスケープゴートとして多くの悪事が茅場のせいにされている。
余談
『アクセル・ワールド』作中には、これに似たセリフをある人物が発言している描写がある。
「シルバー・クロウ。このゲームの設定が矛盾しているという、お前の感覚は正しい。
何故なら、ブレイン・バースト2039は、ゲームであってゲームではないからだ」