ただ走るには長すぎる。しかし人を理解するのに充分な距離かどうかはわからない。
概要
米澤穂信の〈古典部〉シリーズ第5弾。アニメ化されていないエピソード。
ストーリー
無事に進級し2年生となった古典部員の面々。活動目的は不明でも、部活である以上は新入生を歓迎、もとい勧誘しなくてはならず、奉太郎は部長と共に新歓祭へと臨むことに。本来の目的を忘れて雑談にふける二人の前に現れたのは、新入生の大日向友子。仮入部とはいえ、古典部に馴染んでいく友子の本入部を疑う者はいなかった。
しかし本入部の申請が迫る中、友子は唐突に古典部を去る。決め手となった何かがあったその時、部室にいたのは文庫本に集中する奉太郎と、友子と話していたえるの3人。決定的な場面でうわの空だった奉太郎は友子の心変わりの背景を考える。星ヶ谷杯――長距離走大会の道のりを使って。
「それにしても……。宙ぶらりんって疲れますね」
友子の言葉、振る舞い、その向こう側に見え隠れする彼女の怯え。はるか後方から走ってくるはずの後輩に、奉太郎が証明しようとするものとは――。