bychi-ri

遠まわりする雛

とおまわりするひな

Little birds can remember.

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しかし千反田は、少し驚いたように目を見開き、それから柔らかく微笑んで、ゆっくりとかぶりを振った。

概要

米澤穂信の〈古典部〉シリーズ第4弾。本作は長編ストーリーだった前3作とは異なり、文芸誌に掲載された後述の短編6作に書き下ろし1作を加えたオムニバス形式の短編集の構成となる。内容的には古典部の部員4人の高校入学当初から翌年の春休みまでの1年間を、前3作のストーリー間を補完するような形で時系列に沿い折木奉太郎の視点で進行していく。

アニメ版では長編エピソードの合間に順を追って、それぞれ単発のエピソードとして配置されている。『正体見たり』は温泉回、『手作りチョコレート事件』はバレンタイン回に相当する。

収録作品

やるべきことなら手短に

――「今日のこと、僕は貸しにする気はない。でも千反田さんはどうかな？」

古典部が復活して間もないある雨の日、居残り宿題に苦しむ奉太郎の前で神山高校の怪談話を披露する里志。適当に聞き流していた奉太郎だが、噂の経路を知るや、その話に興味を持つであろうえるの来訪を予感する。宿題に加えて怪談の調査など反・省エネでしかない。案の定やって来たえるに、奉太郎は柄にもなく自ら噂話を持ち出すと……。

アニメ第1話・Bパート。

大罪を犯す

――自分が怒ったときの言い草なんて、あまり思い出して誇らしいものじゃありませんから。

授業中、春秋戦国時代の解説が朗々と響く奉太郎の教室に、隣の教室から怒声が割り込んでくる。騒ぎの中でえるのものらしき声を聞いた奉太郎は、部活で顔を合わせた彼女に、何の気なしに確認をとる。その一件を思い出したえるは、例によって瞳をらんらんと輝かせる。自分が怒るきっかけとなった出来事がどうして起こったのか。「怠惰」の奉太郎が、えるの「憤怒」の理由に迫る。

アニメ第6話。

正体見たり（初出時：『影法師は独白する』）

――眼前の青空には入道雲が威勢良く、それが急に白々しくなったようで疎ましい。

夏休み。『氷菓』事件解決の慰労としてえるが提案した、古典部の温泉合宿。摩耶花の親戚が営む宿の娘は、かつて宿に泊まった奇妙な客と、そこで起きた事件について語る。その夜、摩耶花とえるが見た「それ」は幽霊か、はたまた枯れ尾花か……。

アニメ第7話。

心あたりのある者は

――真面目そうに装っても、その大きな瞳が笑っているのがまるわかりだ。

度重なる奉太郎の「推理」に感嘆するえると、それが気に入らない奉太郎。「理屈と膏薬はどこにでもくっつく」ことを証明するべく、奉太郎がゲームを持ちかけたところへ流れた校内放送。二人きりの部室で始まる推論ゲーム。放送の裏にある事情にあれこれと理屈を付けていく中で、話は何やら穏やかでない方向へと膨らんでいく。

アニメ第19話。

あきましておめでとう

――『天を突く稲穂鳥に啄ばまれ風に折らるる象身を慎んで吉』

自堕落な元日の夜更けに誘いを受けた奉太郎は、えると初詣に行くことに。参拝を済ませ、えるの挨拶回りも落ち着いた頃、2人はちょっとしたおつかいを引き受け、寒空の下を蔵へと向かう。しかし蔵に疎い奉太郎が入り込んだのは納屋。しかも折悪くやって来た見回りに外から扉を閉められ、同行したえると共に暗闇に閉じ込められる羽目に。えるには立場があり、男と2人で暗い納屋の中にいる現場を目撃されるのは非常にまずく、迂闊に助けも呼べない。寒さに震えながら奉太郎が講じた脱出策は……。

アニメ第20話。

手作りチョコレート事件

――「でも、あれは優しい話だったよ」

中学3年のバレンタイン、屁理屈を捏ねてチョコを受け取らなかった里志に、摩耶花は今年も挑む。えるの協力も得て出来上がった力作は、相手の手に渡るのを待つばかりだった。その様子を横目で見ながら、奉太郎は省エネ主義と色恋沙汰について思いを巡らせる。みぞれのふるバレンタイン当日、図書室で時間を潰す奉太郎のもとへ、切羽詰った表情のえるがやって来る。摩耶花のチョコレートが行方不明になったのだ。

アニメ第21話。