概要
『薬屋のひとりごと』第9話の衝撃的なセリフである。
顔見知りの妓女、王宮に仕える官僚や女官たちの死を目の当たりにする猫猫、
久々の里帰りにも
(ずっと帰りたかった花街も後宮と変わらない。花園であり鳥籠だ。)と自嘲、
壬氏に縁がある高級官僚・浩然や後宮の堀に身を投げた女官の不審な死に思いを馳せながら、猫猫はみずからの最期にも考えを巡らせる。
猫猫「自殺か、他殺か・・・」
(私なら自分から命を絶とうとは思わない。)
(他人から殺されるのもまっぴらだ。)
(死んでしまえば薬も毒も試せない)
猫猫(でも・・・もし死んでしまうとするなら・・・)
壬氏「何を考えている?」
猫猫「死ぬならどんな毒にしようかと」
壬氏「なっ!死ぬ気かっ!?」
猫猫「めっそうもありません。ですが人はいつ死ぬかわかりません」
「たとえ望まなくとも他人の悪意が加わることで」
「不本意な死を遂げることがあります」
猫猫(それがいつ訪れるのかだれにもわからない。運命にあらがうことはできない)
猫猫「壬氏様、もし私を処刑する場合、毒殺にしていただけませんか」
「もし私が粗相をした場合、処分を下すのは壬氏様でしょうから」
「なぜそうなる?」と問う壬氏に、猫猫は
「私が平民だからです。些細な失敗で簡単に吹き飛ぶ命です」と答える。
これに対し壬氏も
「そんなことはしない」と言い返すが、猫猫の
「『する、しない』ではなく、『できる、できない』ですから」
という冷徹な答えに、うなだれて何も言い返すことができなかった。
この壬氏と猫猫のやり取りに、朝廷を束ねる皇帝からの命令とあらば、(それが朝廷内の権力争いであったとしても)「生殺与奪の権を他人に握られた」官僚や女官の罪科に処すことは後宮を束ねる最高権力者の壬氏であっても逆らうことはできず、彼らの命は守ることができないという現実が明らかになった回でもあった。