概要
サンライズ編に登場。
大気圏外の宇宙ホテル「サンライズ」で働くAI。AIとしての使命は「ライフキーパーとして人間のお世話をする事」。ヴィヴィの直系の後継機、「シスターズ」のうちの一体で、ヴィヴィにとっては妹と呼べる存在。
黒を基調とした服に長い金髪に垂れ目が印象的で、瞳は水色。
物腰は穏やかで包容力があり、親しみやすい性格。宿泊する客には笑顔になってほしいという願いから、心を込めて仕事に勤めている。
「サンライズで働くAI達は家族である」と称し、スタッフたちには分け隔てなく気さくに接している。
ホテルスタッフとしての経験は豊富で、不測の事態にも適切な対処をとれる。時には乗客の心のケアのために歌を披露することも。
一見して申し分のない完璧なAIだが、サンライズが地上に落下して多くの犠牲者が出た「落陽事件」の首謀者と目されており、正史では"史上最悪の欠陥AI"という評価を受けていた。
修正史
ネタバレ注意
落陽事件を起こしたのは実はエステラ本人ではなく、彼女に変装していた双子の妹のエリザベスであった。元々彼女たちは二つの陽電子脳を同期して同調する事で、意図的に同一の個性を持つ自律人型AIを作り出す計画という双陽電子脳計画で生み出された。最終目的としては、電源ダウンにより失われた個性を複製して復元する事にあった。
しかし、正史のAI命名法(修正史ではAI人権法)施行により、陽電子脳の個性が保護対象になった為、陽電子脳の個性の複製が禁忌となり中止された。躯体が稼働していた姉の方のエステラは用途変更されたが、躯体が未稼働だった妹のエリザベスはセキュリティ上の理由もあって製造から1年未満で破棄された。
後にユウゴに拾われて「トァク」のメンバーとなり、ユウゴをマスターと呼称する様になった。かつては、エステラと同様に穏やかで姉思いの優しい性格であったが、「トァク」のメンバーになってからはクールで攻撃的な性格へと変化し、正史の洛陽事件を起こしていたのであった。
変わってしまったエリザベスに
「私はマスターのライフキーパーだ! 人類に仕えるのが私達の使命なら私にとっての人類はマスターだけだ!」
と鬱屈をぶつけられてしまう。
だがマツモトに戦闘プログラムをインストールされたヴィヴィの機転とエステラの腕輪に自分の遺髪を見て動揺した隙を突かれて敗北。その時にヴィヴィにより送り込まれた初期化プログラムで「トァク」のメンバーであった事の記憶を失い、かつての優しい性格を取り戻すのだった。
しかし、サンライズは既に落下軌道に入っており、沿岸部の都市に落ちるのは時間の問題であった。エステラはサンライズを分解して地表に落ちる前にて燃え尽きやすくさせることを決断する。
ヴィヴィもこの作業を手伝おうとするが、エステラは
「駄目よ。これは私の使命だもの。ヴィヴィ。あなた達の本当の使命は何? それに……ここにはベスが乗っているんだもの。私は姉だから。忘れないでヴィヴィ。私達は、AIは使命に生きるの。」
と諭しヴィヴィとマツモトを既に避難させた宿泊客のいる脱出艇へと向かわせた。
「姉さん? やっと会えたね。状況がよくわかんないんだけど……このタスクでしょ? 処理しなきゃいけないのは。直接会って始めて見せる表情がそれー? そんな不安そうな顔をしないでよ」 「きっと大丈夫だから」
とかつての優しさを取り戻したエリザベスが目を覚ました。
「なんか……最初で最後の共同作業になっちゃいそうだけどさ。こんな時は笑ってリラックスしてやれば大丈夫だって。」
とエリザベスは不安そうなエステラを慰めていき、サンライズの分解作業を手伝っていく。
エステラは
『皆様。このたびはご不便、ご面倒をおかけしまして誠に申し訳ありません。当機は地球、OGC第7空港へ向けて順調に航行中です。どうかご安心の上何かありましたらお近くの職員へお申し付けください。』
と不安そうな宿泊客に対して『ただいま当機は地球の影に入っておりますが、よろしければ右手をご覧ください。地球の外円が明るくなっていくのがおわかりになるでしょうか?』
そこにあったのは太陽が地球を明るくする夜明け(サンライズ)の光景であった。
『皆様。本日は当ホテルサンライズをご利用いただき誠にありがとうございました』とエステラのアナウンスはここで終わった。
そして燃え尽きていくサンライズの中、脱出した宿泊客の不安を緩和させるために歌を最後の瞬間まで歌い上げていき、エステラの放送はここで終わった。
そしてホテルサンライズは双子の姉妹と共に大気圏へと燃え尽きたのであった。
ヴィヴィはエステラの会話を思い出していく。
「エステラ…あなたにとって心を込めるってどういうこと?」
エステラは「そうね…お客様に笑顔になってほしいと願うことかしら」
エステラの「心を込める」という想いは後にヴィヴィにも大きな影響を与えることになった。
こうして死ぬ運命に遭うはずであった宿泊客は助かり、落下したサンライズは都市部への直撃は免れたのであった。その後、宇宙では2羽の白い小鳥が飛んでおり、その小鳥は姉妹の陽電子実験で使われたのと同じであり、どこか姉妹を思わせるものであった。
後日エステラは、マツモトが、すっかり事実だと信じていた『【落陽事件】を引き起こしたAI』という汚名を被るどころか、寧ろ、脱出して生き残った宿泊客達の証言によって、その自己犠牲的な最期が正しく伝えられた結果、大衆から英雄や聖女の如く褒め称えられ、結果として、AI技術が正史よりも早く発達する土壌が生まれる事になった。
その一方で、急激なAI技術の発展により正史では幸せであったはずの出来事が後に大きな悲劇へと変わってしまうのであった……。