構造
一つのボイラーを二つの走り装置で挟み込むようにした構造を持つ。
走り装置には重しとして水タンクや炭水庫が備えられ、そのためガーラット式はタンク式と見做される。足回りとボイラーとの長さのバランスをとる必要が無いため、足回りを伸ばしてもマレー式のようにボイラーを長くする必要がなく、効率の高い太く短いボイラーを実現可能である。なお、後部シリンダまでの蒸気配管が長大なため、蒸気の冷却・圧力損失が激しく、また可撓配管を高圧蒸気が通るため、保守の手間がかかる。他の関節式と同様に急曲線に強く、主に植民地の狭軌鉄道で用いられた。他の関節式機関車に比べ、足回り、ボイラーともに設計自由度が高いため、大型化が比較的容易であり、ドイツの鉄道技師であるエーリッヒ・メッツェルチンは、ドイツの鉄道で理論上走らせ得る最も強力な機関車として車軸配置2-12-0+2-8-2のガーラット機関車に2-8-0のブースター付テンダーを二両牽かせたものを考案している。
開発経緯
ガーラット式機関車は、イギリスの植民地鉄道であるニューサウスウェールズ鉄道のハーバート・ウィリアム・ガーラットによって、1907年に開発された。二つの台車を間隔をあけて配置し、その間にボイラーを置く独特の構造は、列車砲をもとに考え出されたそうである。
最初にガーラット式を製造したのは英べイヤー・ピーコック社で、また同社がガーラット式機関車を特許申請したため、その後のガーラット式機関車もほとんど同社によって製造された。
ガーラットもどき
ガーラット式は優れた機構を持つ形式であったが、前述の通り製造権利はべイヤー・ピーコック社が独占していた。このため関節式機関車の一種であるフェアリー式の構造に改造を施し、あたかもガーラット式のようにした"モディファイアード・フェアリー"と呼ばれる機関車が存在した。
見た目はガーラット式機関車と酷似してはいるが、こちらは水タンクと炭庫が同一台枠上に固定されており、カーブに合わせて首を振るのは動力台車のみである。通常のフェアリー式に比べて好成績であったものの、ガーラット式に比べると台枠が一つであるため、走行特性が悪く、台車の軸の摩耗が急激であるなどの問題点があり、ガーラット式ほど普及することはなかった。
本国において
鉄道省時代の技術書「機関車工学」には「本邦においてもこれに注目するの必要あり」とあり、狭軌鉄道としてガーラット式に興味を示していたようである。しかし実際に使用されることはなく、本国で使用された関節式はマレー式のみだった。