概要
元奴隷の少年ユリアンが〈海〉を名乗る謎の存在に力を与えられ、自身と共に生き残った赤子であるディアナと共に生きていくダークファンタジーである。
登場人物
ユリアン
本作の主人公。幼少期に母に売られ奴隷として生きていたが、主人を傷付け奴隷船に密航し人生で初めて周囲からの温かみを知る。その後、100人の奴隷が殺され遂に自分も殺される寸前に〈海〉を名乗る怪物に契約を持ち掛けられ、自身を救うため犠牲になったミラの命によって力=100人分の身体能力と命のストックを与えられる。
奴隷船から脱出後、ミラの娘であるディアナを守る為に生きていていく。
ディアナ
ユリアンを救うために死んだミラの娘。まだ生まれて間もない赤子。
しかし、後述のエルストリの予言により……
ミラ
奴隷の女性でユリアンの母。生きていればユリアン位の息子がいたためユリアンに優しい。〈海〉を名乗る怪物からユリアンを救うため、自ら腹を掻っ捌いてディアナを取り出し命を落とす。
100人の奴隷
ユリアンに温かみをくれた奴隷達。老若男女様々だが年寄りや身重の女性、若い少年を優先させる慈悲や高潔さを見せる。奴隷商人に無惨に殺されるが、上記の〈海〉との契約によりその魂はまだユリアンに残っているらしく、時折ユリアンの心象風景で遣り取りを交わしている。
ティティ
アンヴァルと共に暮らす少女。漂着したユリアン達を助ける。
戦災孤児で両親を失っていたところを、アンヴァルに保護された。
アンヴァル
ティティと共に暮らす兵士。常に鎧を着ている大柄で筋肉質かつ美人な女性。
優しく誠実だが「幸せに生きていくためには金が必要」と語るなど現実的な所も。
戦争で活躍し近衛兵として出世する道もあったが、ティティの面倒を看るため辺境の任務に就いた。
ユリアン達を守る為アルコスと対峙するも殺害される。
〈海〉
魔の海域に暮らす謎の存在。ユリアン達を守るために死んだ100人の奴隷を『生贄』と認識し、更に「『真の愛』を失う」条件を提示、それを聞いたミラの自己犠牲の末にユリアンに力を与える。似たような存在は他にもいるようだが詳細は不明。
尚、単行本の書き下ろしページでは、自身の不手際を認めた上でアフターフォローを行うなど、超越存在にしては意外に真面目かつ人間臭い面があると発覚した。
ただ人間らしい一面を持つものの基本的には人の心については理解できない超常存在である。
海魔
〈海〉の眷属と思しき異形のマーフォークの群れ。
〈海〉と契約したユリアンを「陸の生物の分際であの御方の寵愛を受けた」と逆恨み、ユリアンとディアナを殺し貪ろうと目論むも、ユリアンに返り討ちにされた。
ユリアンを襲わなかった生き残りはいるようだが、上記の〈海〉のアフターフォローにより該当種族は全て消された模様。
〈森〉
〈海〉と似て非なる超越存在。
〈海〉と契約したユリアンと関係者であるディアナを「〈海〉が陸に侵食してきた」と見なし、殲滅すべく襲撃した。
鹿のような姿をした分身体や、醜悪な精神性をした眷属が存在する。
至高き君(いとたかききみ)
アンヴァルが支える王国の現王で、人知を超え長い時を生きているとされる。
寡黙かつ聡明な人物で、国から奴隷制度を無くすなど開明的な考えの持ち主。
一方で若き頃は圧倒的な力で敵対者を捩じ伏せる、戦闘狂じみた気質をしていたらしい。
エルストリ
アンヴァルが仕える王国で重用される占い師。
占いにより幾度も王国を救っている実績から、国王の至高き君からの信頼に厚い一方、それによって居丈高な節も散見され、一部の兵士からは煙たがられている。
占いを行う際、ユリアン同様に片目に亀裂じみた紋様が浮かび上がるため、常人ではないのは確かだが……
忠誠心は高いがそれ故に暴走した行動を度々とってしまっており読者からは「この国が亡びるのはこいつの暴走が原因では?」と言われている。
アルコス
「水(自然下の水なみならず、生物の体内に含有される水分も該当)を自在に操る」異能(彼も片目に亀裂じみた紋様が浮かび上がる) を持つ青年。
退屈を嫌う享楽主義者のようで、曰く「敢えて瀕死程度に相手を痛めつけて全能感を味わうのが好き(要約)」と平然と宣うなど、破綻者そのものの振る舞いに終始する。
専属のメイドを引き連れる、エルストリから「アルコス様」と敬称で呼ばれているなどの点から、王侯貴族の血筋と思われる中、至高き君の子息であると判明した。幼少期から破綻した精神性を持つ。
ユリアンを一度は殺すもアンヴァルを遊び感覚で殺害された事に激怒したユリアンに彼の領域である海で圧倒され殺害された。
ギヨーム
『鉄塊のギヨーム』 の異称を頂く王国の戦士。
モーニングスターを得物とする。
異能
ユリアン等が持つ、正しく異能そのものの能力。
現時点では以下のケースが確認されている。
- 超越存在と契約して得る(実例:ユリアン)
- 血統から継承する(実例:至高き君とアルコス)