概要
P型半導体とN型半導体がPNPNと四層に並んだ構造をしており、途中の3層目(P型半導体)にあるゲートに電流を流すと順方向の導通が可能になる半導体素子。アノード-カソード間は一旦導通すると電流が一定以下になるまで流れ続ける。この性質故にトランジスタのような線形増幅はできないが、素子の大きさに対して大きな電力を扱うことができる。
鉄道車両では主回路半導体化の黎明期からVVVFインバータ制御黎明期近辺まで使われており、自ら導通を止める自己消弧ができるように工夫されたものはVVVFインバータ制御初期~中期に使われた。
ほぼ同じ構造を持つものにプログラマブルユニジャンクショントランジスタ(PUT)があり、これは途中の2層目(N型半導体)にゲートがあるもので、発振回路などに使われたが国内ではすでに生産終了となっている。
pixiv内ではサイリスタそのものののイラストや擬人化を描いたイラスト、電機子チョッパ制御の電気車のイラストが投稿されている。(部分一致含む)
動作
順方向
アノード-カソード間に電圧をかけると2層目まではダイオードの順方向接続(PNPN)と同じため電荷が進むことができるが、そこから先がダイオードの逆方向接続(PNPN)と同じになるため進めなくなる。
ここで、3層目のところにあるゲート(PNPN)に電流を流すとアノードからの電荷が引っ張られて勢いがつき、電子雪崩降伏を起こす形で電流が流れ始める。いったん電流が流れればダイオードを直列に2つ接続したものと同じ動作となるため電流は流れ続ける。
電流を止める際は他の回路からカソード側の電圧を一旦上げたり、電流の供給自体を止めてしまう。また、種類にもよるがゲートから強引に電流を引き抜くと電子雪崩は止まってしまい電流が流れない状態に戻る。
逆方向
2つ直列に接続したダイオードに逆方向に電圧をかけるのと同じため電流は流れない。
工夫
スイッチング素子として使用する場合、点弧(OFF→ON)はできてもそのままでは消弧(ON→OFF)ができないため・・・
- 周期的に電圧が0になる交流を電源として使用する。
- 転流回路とよばれる別の回路から強力なパルスを送ってアノード-カソード間電位差を0にする。
- ゲートに工夫を施して強引に電流を引き抜けるようにする。
といった工夫を施す必要がある。VVVF車用素子で有名だったGTOサイリスタはゲートに工夫を施した物のひとつで、アノード-カソード間電流の数分の一ほどの電流をゲートから引き抜くと自ら導通が止まるようになっている。GTOサイリスタによるインバータは後にIGBTに取って代わられたが、製鉄所の圧延機駆動用インバータの様に膨大な電力を扱うものではGTOサイリスタの欠点を克服したGCTサイリスタが開発され、使用されている。
実は・・・
IGBTのご先祖様でもある。
そのため、黎明期のIGBTは「ラッチアップ」とよばれるサイリスタとして動作してしまう動作不良を起こしやすくスイッチング速度も遅いものだったが、動作の実証から16年にわたる研究開発により素子の動作領域におけるラッチアップの完全な抑制が可能となり、MOSFETでベース(制御電極)を制御するバイポーラトランジスタと等しい動作をする半導体素子として実現できるようになり現在に至っている。
サイリスタが基となっているため、IGBTの厳密な等価回路にはPNPトランジスタとNPNトランジスタから成る寄生サイリスタが存在している。