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チョッパ制御

ちょっぱせいぎょ

電気車モーター制御方式の一つで、主回路がスイッチング素子となっておりON/OFFを高頻度で繰り返してモーターを制御する方法。パルス幅変調(PWM)制御とも。電機子チョッパ制御をさすことが一般的。
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一般論編集

直流では、電流電圧は時間によらず一定である。そのため、全体の電流や電圧を下げたいのであれば古くは抵抗器を用いて電圧を下げる抵抗制御のように、一部の電気エネルギーを他のエネルギーに変換して捨てるしか手段がなかった。勿論これはエネルギーの浪費であり、また抵抗器を用いた場合は電気エネルギーをに変換する事になるため排熱による回路の損傷や周囲の過熱などの問題も存在していた。


一方、「瞬間の電流や電圧を下げる」のではなく、「平均の電流と電圧を下げる」だけであれば回路中に何らかのスイッチを挿入して任意のタイミングで回路の開閉を行えば簡単に実現できる。スイッチを入れれば一定値の電圧で電流が流れ、切れば電流・電圧ともにゼロとなるため、直流電流は矩形波パルス電流となる。この時スイッチを1回入れてから次に入れるまでの時間(パルス周期)に対して1回スイッチを入れてから切るまでの時間(パルス幅)の比である「デューティー比」が元の直流に対する電流・電圧の出力割合となる。この方式であれば電流自体が止まるため電気エネルギーを他のエネルギーに変換する必要がなくなるので、エネルギーロスや排熱の影響を抑えることができる。

もちろんパルス周期が数秒単位であればただ電流が点いたり消えたりを繰り返しているだけであるが、このパルス幅をミリ秒単位にまで縮めてしまえば、電球モーターのような負荷が電気エネルギーを消費しきったりその勢いを使い果たしたりする前に次のエネルギーが供給される事になるので人の目には電源出力を一定の割合で下げたかのように見える。また、1周期ごとにデューティー比を滑らかに変えていけばサインカーブなどの任意の電流波形を作り出す事ができる。


このように直流を高速スイッチングによって矩形波パルスに変換する事で平均電流・電圧を制御する手法を「パルス幅変調制御(PWM制御)」(主に弱電分野)あるいは「チョッパ制御」(主に強電分野)と呼ぶ。一般にチョッパ制御における回路の開閉にはトランジスタサイリスタといった半導体スイッチング素子が用いられる。


チョッパ制御はLEDの光量調節や直流モーターの回転数制御などに使われる他、正弦波と同等の平均電流・電圧を作り上げる事で疑似的に交流を作り出す事もできる事からインバータの基本原理としても多用されている(更に滑らかな正弦波などの波形に近づけるため、インダクタ(コイル)やキャパシタ(コンデンサ)を用いてパルス波を滑らかな直線・曲線に整形する事もある)。特に鉄道車両の場合かつて電車において回転数の制御が容易な直流モーターから動力を得る事がほとんどだった関係から「チョッパ制御」という技術用語が用いられる機会も多い。



電機子チョッパ制御編集

電気車モーター制御方式の一つ。鉄道分野で単に「チョッパ制御」と呼ぶ場合、「電機子チョッパ制御」をさすことが一般的。

主回路が半導体スイッチング素子となっておりON/OFFを高頻度で繰り返してモーターへと流れる平均電流を制御する方法。スイッチング素子によるON/OFFの高頻度での繰り返しによる制御により、従来の抵抗制御では起動~定格速度の電流制限の際に抵抗器で熱として捨てていた分の電力を使わず、モーターに必要な電力だけ供給できるため電力使用効率に優れ、力行時の抵抗器からの発熱も無い。

また、主回路をモーターから架線への昇圧チョッパとしても動作できるように組むと回生ブレーキの使用も可能()となる。


しかしチョッパ制御車登場時の半導体、特に電力用半導体は非常に高価で車両価格が跳ね上がってしまうため、抵抗器の使用時間が比較的短い起動~定格速度までの熱損失には目をつむり半導体の使用を電機子より扱う電力の少ない界磁制御に絞って価格上昇を抑えつつ回生ブレーキを可能とした界磁チョッパ制御界磁添加励磁制御が主となり、更に電力用半導体素子の価格が下がってきた頃には交流モーターの駆動が可能になったVVVF制御が登場した。そのため、半導体を使ってまでして保守が面倒で閃絡(フラッシオーバ)による故障のリスクを持つ整流子とブラシの存在する直流モーターを使用する利点がなくなってしまい、地下鉄など車両からの排熱を如何しても抑えたい事業者以外では採用例の少ない少数派となってしまった。


pixiv内では鉄道車両のうち電機子チョッパ制御車のイラストにつけられている。

・・・が、界磁"チョッパ制御"も部分一致でひっかかる。

注釈編集

・・・初期のチョッパ制御車では保守簡易化の試験のため、チョッパ回路が力行制御のみで回生ブレーキ機能を持たない電機子チョッパ制御車があった。


AVF式チョッパ制御、AFE式主回路チョッパ制御編集

電機子チョッパ制御の進化形態。営団阪神電気鉄道東武鉄道の一部形式の車両で採用していた。

スイッチング素子がONの時に電機子へ、OFFの時に界磁へと多く電流が流れる様回路が組まれており、デューティー比(ON/OFFの比率)が高くなる高速域で自動的に弱め界磁が行われるようになっている。回生ブレーキ時は回路を切り替えてスイッチング素子で界磁巻線へと流れる電流を制御して回生電圧過大による回生失効を防いでいる。


高周波分巻チョッパ制御編集

電機子チョッパ制御の最終形態。主に営団地下鉄が採用していた。

回路構成としては主電動機に分巻電動機を使用し、電機子チョッパ制御と界磁チョッパ制御を組み合わせたものである。特に、分巻電動機の界磁側をスイッチング素子によるブリッジ回路とする事で、従来の直流モーター車にあった転流回路を完全に廃止し、主回路機器の大幅な小型軽量化を実現した。

電機子と界磁の電圧制御を別々に行う事が可能で、きめ細やかなトルク制御を実現している。


サイリスタ位相制御編集

サイリスタブリッジ回路によるコンバータで主電動機への電流を直接制御する方式。

サイリスタをターンオンさせる領域を、交流電圧のピークが小さい位相から徐々に大きい位相に切り替えていくことで、速度域に関わらず電流値を一定に制御している。

転流器を用いてサイリスタを逆方向に接続しインバータ回路を構成する事で回生ブレーキの使用も可能である。

サイリスタコンバータのみでは交流電源でしか使用できないため、交直両用とするためには直流区間用の制御装置を搭載する必要がある。

また、直流モーターの他にも681系のように三相インバータを後段に接続して交直両用のVVVFインバータ制御とする事も可能。


初期の交流電車に広く用いられたが、VVVFインバータが主流となるにつれて自励式PWMコンバータの技術開発が進み、より利点の多いそちらに取って代わられた。


関連タグ編集

鉄道車両 半導体 地下鉄

国鉄での採用例編集

201系電車

EF67形電気機関車

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