概要
惑星連邦宇宙艦隊に所属するコンスティテューション級宇宙艦U.S.S.エンタープライズNCC-1701の3代目船長。
フルネームはジェームズ・タイベリアス・カーク。
第1作『宇宙大作戦』における彼の活躍は、後の時代で知らぬ者のいないほど有名となっている。
規則や論理よりも、直感や情を優先する。
それが良い方向に働くこともあるが、激高して部下を怒鳴りつけることもしばしば。
冷静な副艦長であるスポックとやり合うことも多いが、名コンビである。
生い立ち
2233年3月22日、地球のアイオワで誕生。父方・母方それぞれの祖父から名付けられた。
父親は宇宙艦隊士官で当時USSケルヴィンの副長を務めていたジョージ・カークで、母親がウィノナ・カーク。兄にジョージ・サミュエル・カークがいる。
幼少期を植民星タルサス4号星で過ごし、2246年に発生した食料危機において同地の知事コドスが引き起こした住民虐殺事件の数少ない目撃者となった。
19歳で宇宙艦隊アカデミーに入学。兄曰く「クラスでは常にトップ」だったらしい。
宇宙艦隊士官として
アカデミー在学中ながら少尉に任官され、USSリパブリックに配属。後に中尉に昇進。
2255年、指揮官プログラムの必須科目である「コバヤシマル・テスト」を3回受験し、唯一クリアした士官候補生となる(シミュレーターのプログラムに細工をするという手段だったが)。このテストは本来「絶対に勝ち目のない状況での心構え」を問うものでどうあっても「コバヤシマル」を救出することはできず、それどころか自分も撃沈されるように設定されているのだが、カークにはそれが受け入れられなかったのだ。
また、この時期には中尉の身でありながらアカデミーのインストラクターを兼任しており、士官候補生たちの間で「歩く本棚」と呼ばれるなど堅物として通っていたようである。
これを以てアカデミーを卒業し、USSファラガットに戦術士として配属される。ところが、ファラガットは2年後にガス状生命体に遭遇し、クルー400名のうち艦長のギャロヴィック大佐を含む半数近くが殉職する大惨事に見舞われる。この事件についてカークは「自分の砲撃判断が遅れたせいではないか」とその後11年にわたって思い悩むこととなった。
USSエンタープライズ(NCC-1701)
その後驚異的な勢いで昇進を遂げ、2259年にファラガットの副長に就任。当時の艦長の方針により新鋭主力艦であるコンスティテューション級クラス1巡洋艦、USSエンタープライズのチン=ライリー副長から指導を受ける。
2265年に32歳の若さで大佐に昇進(当時最年少)、クリストファー・パイク大佐の後任としてそのエンタープライズの艦長を拝命。ファイブ・イヤー・ミッションの指揮を執る。
一年目に自ら副長に指名した旧友ゲイリー・ミッチェルを失い、その後も度々艦やクルーが危機に見舞われ、時には戦争寸前の状況になりかけたものの調査任務を完遂。もはや知らぬ者はいないヒーロー扱いされるようになった。
ファイブ・イヤー・ミッション完遂後、エンタープライズは一年がかりの大改装を受けることとなり、カークは少将に昇進のうえエンタープライズを離れ地上勤務となった。
2271年、改装作業が間もなく完了するという頃に正体不明の物体がまっすぐ地球に接近してきた際、対応可能な艦がエンタープライズのみだったため急遽出航することとなり、半ば強引にエンタープライズの艦長に復帰する。
その後10年ほどの間にエンタープライズは練習艦となり、艦長職をスポックに移譲して自身はアカデミーで後進の指導に当たっていた。
2285年、カークも同乗した訓練航海のさなかに因縁深い人物、カーン・ノニエン・シンがカークへの復讐を企みUSSリライアントを乗っ取ってテラフォーミング計画「ジェネシス」の装置を強奪する事件が発生。辛うじてこれを退けたものの、故障したワープ・コアを復旧するためにスポックが犠牲になってしまう。
地球に帰還後、既に艦暦40年に達していたことやリライアントとの戦闘によるダメージが大きかったこともありエンタープライズは退役が決定。ところが、スポックの精神がドクター・マッコイに移されていたこととジェネシス惑星に葬られたスポックの肉体がテラフォーミング装置の影響で再生していることが判明。
しかし事件を受けてジェネシス惑星は封鎖されており、司令部からスポック捜索の許可が下りなかったため高速ワープ実験艦USSエクセルシオールのエンジンに細工した上で宇宙ドックに係留中のエンタープライズを部下たちと共に強奪、追跡を試みたエクセルシオールを振り切って強行発進した。
ところがジェネシス惑星に到着すると、スポックはカークの息子デヴィッド・マーカスら調査チームとともにジェネシスによって惑星連邦の勢力が拡大することを恐れたクリンゴン戦艦のクルーによって人質にされており、待ち伏せていたクリンゴン艦の攻撃でエンタープライズも戦闘不能に追い込まれる。さらにはデヴィッドを殺害され、後のなくなったカークは一度降伏して艦を明け渡し、そのままエンタープライズを自爆させてジェネシス惑星に降下。スポックらを奪還したうえで逆にクリンゴン艦を乗っ取り、崩壊するジェネシス惑星を離脱。ヴァルカン星へでスポックの精神と肉体の再結合の儀式を行った。
USSエンタープライズ(NCC-1701-A)
その頃、地球に正体不明の探査機らしき物体が現れ、謎のパルスを発して艦も宇宙ステーションも無力化されたうえ地球の大気もかき乱されて全世界が異常気象に見舞われていた。
ここまでに犯した軍機違反について自首するために「HMSバウンティ」と名付けたクリンゴン艦で地球に向かっていたカーク一行はこのパルスを傍受。スポックがその正体を、絶滅種ザトウクジラの鳴き声であると突き止める。
探査機は21世紀ごろまでクジラと交信していたのではないかと推測した一行はタイムトラベルを行い、23世紀の世界につがいのクジラを連れて来るのだった。
帰還後、エンタープライズの強奪・破壊、エクセルシオールへの破壊工作、ジェネシス惑星への無断侵入、クリンゴンとの戦争に結び付きかねない行為などで軍法会議にかけられたが、クジラ探査機騒動を解決して地球、ひいては連邦を救った功績が認められ、結局カーク一人が大佐に降格されるのみという温情処分にとどまった。
また、ここまでやらかした面々をまとめて管理しておきたい思惑もあってか探査機の影響で行動不能になり修復中だったUSSヨークタウンをエンタープライズに改名したうえで旧エンタープライズ幹部クルーはそこに配属された。
とはいえ、新たなエンタープライズも艦暦自体は先代とあまり変わらないこともあってか、長期任務に出ることはあまりなかったようである。
2287年、連邦・クリンゴン帝国・ロミュラン帝国の緩衝地帯の惑星ニンバス3号星で発生した人質事件への対処のため出撃するも逆に艦を乗っ取られてしまい、なし崩し的に銀河系中心部を初めて訪れた人物の一人となる。
2293年、クリンゴン帝国首都・クロノスの衛星プラクシスが過剰な採掘により爆発。クロノスにも影響が出たことをきっかけに帝国総裁・ゴルコンが和平へと動き始め、エンタープライズが総裁の出迎えに派遣される。
カークは息子を殺された恨みなど思うところがあって彼らを信用できずにいたものの、私情は脇へ置いて任務に臨んだ。ところが両陣営にいた和平反対派が総裁座乗艦を攻撃してゴルコンを暗殺、カークは彼の私怨を半ば利用される形で犯人に仕立て上げられてしまう。
結果マッコイと共に流刑地へと送られてしまうが、部下たちの機転もあり救出され、最終的に交渉の場を妨害しようとした反対派の阻止に成功。これをもってカークや多くの幹部クルーはエンタープライズ-A共々宇宙艦隊を退役した。
退役後
それから数ヶ月後、3代目となるエンタープライズ-Bが進宙。処女航海にはカークも招待されマスコミも同乗の中華々しく出航した。
ところが、母星を滅ぼされたエル=オーリア人の難民を乗せたSSラクールとSSロバート・フォックスからの救難信号を受信。近隣に船舶がいなかったため要員・装備とも不完全なままの救出活動を余儀なくされる。
到着してみれば2隻は正体不明のエネルギー・リボンに捕らわれており、手をこまねいている間にロバート・フォックスは破壊されてしまう。やむなくリボンへの突入を行いラクールから47名のみ救出したが、直後にエンタープライズもリボンに捕まってしまう。
リボンを断ち切るのに光子魚雷が有効と思われたが、弾頭がまだ搬入されていなかったためディフレクター盤から似た性質のビームを発生させる作戦が立案され、カークは自らディフレクター室で準備を行った。
ビームは完成し脱出は成功したが、その際にディフレクター室付近の船体をえぐられてしまい、カークは公式に殉職と記録された。
しかし、実はこのエネルギー・リボンは「ネクサス」と呼ばれる時間の流れが意のままになるという異次元への入り口であった。
ネクサスに取り込まれたカークは気づけば自宅で薪を割っており、そこで78年後のエンタープライズ艦長ジャン=リュック・ピカード大佐と出会う。
ネクサスに執着する一人のエル=オーリア人、ソランの計画阻止に協力するよう説得されたカークは一度は固辞したものの、乗馬で溝を飛び越えた際にいつも感じていた恐怖心がなかったことからこれが幻であると認識。ネクサスから2371年のヴェリディアン3号星へと赴いた。
ソランはエンタープライズ-Bが救出した難民の一人であり、ネクサスには宇宙船では近づけないため恒星を破壊して重力場を捻じ曲げてリボンの軌道を変えてしまおうとしており、もしヴェリディアン星が破壊されれば4号星の前産業革命文明も滅びてしまう。
恒星破壊ミサイルの打ち上げを阻止するためカークとピカードは死闘の末ソランからコントローラーを奪い、発射装置をロック。そのまま発射シークエンスに入った結果ミサイルは爆発四散、計画は阻止された。
しかし、カークはその直前に橋の上に落ちたコントローラーを拾おうとしたところ橋を撃たれ、最終的に橋ごと崖下に転落。
ピカードに看取られ、伝説の艦長はその生涯を終えた。