これは剣や魔法が幅を利かせていた時代の伝説(レジェンド)である
概要
個人ウェブサイトおよびpixivにて連載されているWEB漫画作品。著者はいとまん氏。
ファンタジー系のロールプレイングゲームの王道を踏襲しつつ「主人公が強いけれど悪人だったら」という邪道を取り入れた作品。短気で素行の悪い札付きのワルだが実力は本物である勇者モッコスが王の願いを聞き入れ、魔王の討伐へ向かうストーリー…だったが途中から物語の展開が大きく変わり、魔王の過去について語られていく。
勇者や聖女といったポジションの人物が実はゲスやクズというのは小説家になろうに代表されるネット小説界隈では非常にメジャーだが、見た目からしてDQNヤンキーで周囲からも危険視されているというのはかなりレアである。(ネット小説における悪徳勇者や悪徳聖女は外面は良くて物語当初は主人公達以外には本性がバレていないのが一般的)
1話から8話までは進んだ科学技術が存在する剣と魔法の世界を舞台にしたある種のお約束に「悪人である主人公がどのように対応するか」といったメタフィクションを楽しむ形式で、作中で起きている事態は凄惨極まりないが茶化された表現の明るい作風だが、9話の回想からは一転して資源が枯渇し治安が急激に悪化した近未来を舞台とする陰鬱なハードコアSFとなっており、深刻な状況の中で生きるキャラクターたちの苦悩や絶望を描いている。
特に注釈なくこの作品を示唆する場合、この9話以後のストーリーを指す。
あらすじ
勇者モッコスは国王ザイダーマに頼みこまれ魔王の討伐へと向かう。道中での略奪や暴行は当たり前、魔物の持つ金銭目当てにやり強盗放題した末、ついに魔王と対決する。
しかし勇者モッコスはあと一歩まで魔王を追い詰めるも惜敗し捕らえられる。
だが彼を待っていたのは拷問や処刑ではなかった。魔王は勇者モッコスに治療を施し、魔王を倒せるようになるまでトレーニングして良いと勧める。訝しがる勇者モッコスに対し、魔王は自身の過去について語り始めた。
主要な登場人物
- モッコス
本作の(一応)主人公で、先代勇者バッカスの息子。本名で呼ばれることを嫌いエドワード・ハインリッヒと自称している。
非常に短気で素行の悪い札付きのワルで、気に食わなければ相手が国王であっても容赦なく殴打し、殺人や暴行も平気で行う人格破綻者だが、「舎弟のお願いは聞いてやらないといけない」「一対一の戦いに水を差されることを嫌う」など不良としての気骨はある性格。
実力は本物で、鋼鉄のような強度の肉体を持ち、幼少の頃から戦闘のプロである兵士以上の攻撃呪文を扱い、独自の呪文を編み出すなど才にも恵まれている。戦闘センスもずば抜けており、劣勢でも打開策を見出すなど洞察力にも優れる。首を落とされても自身の魔力が尽きるまで再生し続ける能力を持つ。その強さと残虐性から遂に父親に討伐されそうになったが、返り討ちにして殺害した過去を持つ。
元々は余りに高すぎる才能故に周囲に馴染めず人間社会に飽き、愚連隊を率いて悪逆の限りを尽くしていたが、本編開始時点ではそれにすら飽きてしまっていた。
そのため、初めて全力を賭しても敵わず、圧倒的な強さと伝説を持つ魔王に強く惹かれるようになる。
- 魔王
本作9話以降のもう一人の主人公。魔族の王。本名は真央(まお)。
少女のような外見ながら常軌を逸した怪力の持ち主で、勇者モッコスを相手に優位に戦闘を進められる実力者。常に冷静沈着で驕り高ぶることもなく周到に勇者モッコスへ攻撃を仕掛ける。
呪文を使えるほか「自身の魔力の物質化」という能力を持ち、何もない場所から武器を作り出したり、作り出した武器を機関銃を掃射するように射出することが出来る。
「歴代の魔王」と呼ばれているが、実際は全て同一人物。本来の姿が小柄な少女故に舐められやすいため、色々と工夫をしていた模様。老いると転生機に入り、再び若くなって復活することで、異形のボス、やがては魔族の王として君臨し続けていた。
9話以降の魔王の過去の話では一転し、優しく責任感の強い少女として描かれている。しかし、当時は異形と呼ばれていた魔族への強烈な迫害を受け、友人の裏切りや唯一の肉親だった母親の死を始めとする陰惨な事件の数々をキッカケに、人間と敵対することを決める。
やがて異形全体を束ねる存在に成り上がり、人間を滅亡寸前まで追い詰めたが、人間が地上全体を放射性物質で汚染する最終手段をとったために仲間と共に地下に籠らざるを得なくなる。それでも当初は平和に過ごしていたものの、次世代以降の異形が大幅に弱体化していることが発覚したため、地上の汚染が浄化され、外に出て人間を自らの手で再び滅ぼすまで幹部らと共に君臨し続けることを決める。しかし、その後も内部対立を始めとする様々な問題に苦しみ続けることになる。
長い年月をかけて身内に甘いリーダーから、必要なら多少の犠牲も辞さない冷徹な統治者へと変貌したが、転生の真っ最中にモッコスが現れ、その際のゴタゴタで人格の再現が半端なまま復活してしまい、過去の「ボス」と呼ばれていた頃の性格に戻っている。
転生機の欠陥のため転生を繰り返すたびに弱体化しており、現在は全盛期と比べて遥かに劣るが、それでも現代基準では圧倒的な強さを誇る。
- リーパー
かつてのアメリカ軍の対異形特殊部隊隊長を務めた人物。本名はギデオン。大戦時代の人類最強クラスの戦力であり、5桁にも届く異形を屠ってきた。真央がかつての強敵として真っ先に名前を上げる実力者。10話以降の重要人物。
肉体は既に滅んでいたが、死の間際に恋人の科学者サバントによって記憶と人格をデータ化されており、基準を満たした者が触れると身体を乗っ取られる装置に封印されていた。現代で古代兵器捜索にやってきたローワンと恋人のラミーが知らずに装置に触れ、ラミーの身体を奪って復活する。
仲間の仇である異形への恨みは強いが、大戦末期に人類から切り捨てられたことで使命感は薄れており、自分たちと直接戦っていない世代の異形は特に恨んでいない。
復活後にサバントが自殺していた事実を知って生きる希望を失い、他人の身体を奪って生きる自身に強い嫌悪感を抱いたことから、少し今の世界を見て回ったらラミーに身体を返して眠りにつくつもりでいた。
しかし、遥か未来の変貌した世界に山田真央が未だ健在である可能性を知り、ザイダーマに力を貸すことを決める。
復活後の戦闘能力は生前に遠く及ばないが、それでも宿主のラミーは新人類としてそれなりに強く、そこにリーパーの知識とセンスが加わることで、ザイダーマの実力者を軽く凌駕している。
ザイダーマ
- チャン・ウーピン
ザイダーマの現国王。危険人物であるモッコスを煽って魔王にけしかけ、共倒れを狙うも失敗。その後ローワンが連れ帰ってきたリーパーに全てを託すことになる。かなり低俗な性格をしているが、一応の倫理観は持ち合わせている。
ザイダーマは影で魔王に支配されているという真実を知る数少ない人間。国内に魔族が生まれた際は密かに魔王に引き渡すという先祖からの契約を履行していたが、内心が全く読めない魔王に強い恐怖を抱いている。
なお、チャン家は初代のイーピン以外は凡庸な王しか輩出していないが、ザイダーマの守り神(正体は魔王)と交渉できる存在として王に君臨している。
- ローワン
古代文明への探索隊を率いていた青年。ラミー以外の仲間を失いながらも、辿り着いた施設でリーパーに遭遇する。
ザイダーマの先王の息子で、現王の甥。ザイダーマ基準で見れば最上位クラスの強者だが、モッコスには遠く及ばない。
ラミーのことを深く愛しており、当初は恋人の身体を乗っ取ったリーパーに激しく憤っていたが、彼の人となりを知っていくにつれ、友好関係を築いていく。
性格は真面目で正義感が強く非常に善良で、リーパーが「そんな良い奴の恋人の身体を奪っている」ことに嫌悪感を抱くほど。
- ラミー
モッコスの妹でローワンの恋人。闘争心がなく臆病な性格で、元から父から見放されて周囲から虐めを受けていた上、兄の所業のせいでローワンなどの一部を除く人間から強烈な迫害を受けていた。
ローワンと訪れた古代遺跡で、サバントが設定した基準を満たしていたためにリーパーに身体を乗っ取られてしまう。
新人類としてはリーパー基準で及第点、ザイダーマ基準だと化物の素質を持っており、魔力はローワンの数百倍、握力は素で人間の頭を潰せるほど。
身体の主導権はリーパーにあるが、彼女の意識も残っており、リーパー経由で周囲の情報を共有していることから彼には一定の信頼を置いている。
その事実を知ったローワンが交渉した結果、定期的に身体を返却してもらえることになった。
- バッカス
モッコスとラミーの父親で先代の勇者。「王の剣」「鎮国の英雄」と讃えられる武人。
道を踏み外した息子・モッコスを王命で始末しようとしたが、強靭な再生能力の前に返り討ちに遭って死亡した。
一見人格者のようだが、その本性は女性を次々手籠めにする異常な性欲を持ったサディスト。
圧倒的な強さと英雄としての立場ゆえに国から彼の蛮行は黙認されており、女性刑務所の最奥に自身専用の区画を作らせ、気に入った女性を冤罪で投獄させては性のはけ口としていた。更に大衆から英雄扱いされることを絶対視していたため、被害者は生きて出られずに最後は殺されていた。モッコスとラミーの母親も、二人が勇者候補と知ったバッカスによって子を奪われた上で殺害されている。
モッコスとはまさしくこの親にしてこの子ありという存在。
なお、同じ新人類でも闘争心や戦闘センスが欠片もないラミーのことは見放しており、完全に放置していた模様。
過去篇の人物
異形
- 五木
真央が初めてまともに遭遇した異形の一人で、後に彼女が率いる異形たちの幹部となる。あだ名はいっきー。
虫のような触覚を持ち、右目に重瞳のような三つの瞳孔があるが、それ以外はほぼ人間の女性と変わらない見た目。
能力はバリアの生成。全盛期の真央ですら破壊に数分かかる強力な代物で、通常兵器では傷一つつかない。
「虫娘」として見世物にされて虐げられ続けた過去を持ち、親しい相手以外に顔を見られることを極端に嫌っているため、普段はガスマスクを着用している。
薮内と共に異形狩りから逃げていた所を真央に助けられ、以後彼女と行動を共にするようになる。
親友として真央を支え続けていたが、シェルターの生活を続けていくうちにやがて恋仲になる。異形全体の未来を一人で背負って摩耗していく真央のことが見ていられなくなり、メンザが遺した薬による心中を提案。真央は当初この提案を承諾したが、葛藤の末に土壇場で翻意したため失敗。先に薬を飲んでいた五木は、薬効が現れるまで二人で最期のデートをすると、後事を全て真央に託して死んでいく仲間たちへの怒りと、その使命から解放できなかった後悔を口にしながら息絶えた。
真央にとっては今でも最愛の人であり、五木の死と「恋人よりも子孫を守ることを選んだ」という事実が彼女を冷徹な統治者へと変貌させる決定打となった。なお、現代の真央は隙あらば五木との惚気エピソードを語ろうとするため、モッコスたちにうんざりされている。
- メンザ
巨大な脳と軟体生物のような触手を持つ異形の男性。異形の幹部の一人であり、頭脳労働全般を担う大天才。能力は「高知能」で、文字通り圧倒的な知性を誇る。人類との大戦で、たった一人であらゆるインフラやシェルターまで作り上げていた。
シェルターに引き籠った後に発生した次世代の弱体化問題に対し、現在の強力な幹部たちが生き続けて人類との再戦に備えるという解決策を提示。転生機を完成させた。
また、他の異形や子孫たちが生きて地上に出られるよう、コールドスリープの装置を住人全員分整え、地上の除染が進む数百年の間眠りにつけるようにした。
しかし、後に転生機に「使用する度に能力が微かに減衰する」欠陥が発覚。メンザ自身も既に複数回使用していたため「高知能」が減衰してしまい、自身でも修理が不可能になっていた。
それでも十二分に天才だったが、能力が頭脳と直結しているため人格面も影響を受けてしまい、自身の衰えを自覚して錯乱したり、気遣う真央たちに八つ当たりしたり、冷静になって激しい自己嫌悪に陥ったりと精神の均衡を急速に崩していった。
最期は精神的な苦痛に耐えきれず、真央たちの目を盗んで自殺を敢行。事前に現時点で考え得る限りの備え、自身の実質的なコピーであるAIのMNZ02、転生機でも復活できない自殺用の薬、そしてそれらの説明と仲間への感謝のメッセージを遺して逝った。
- 薮内
異形の幹部の一人。通称「ヤブ」。頭から一つの目玉が付いた触手が生えた男性で、当初五木と共に異形狩りから逃げていた所を真央に助けられ、以後行動を共にする。関西弁で喋る陽気なムードメーカー。
顔に生えている目玉付きの触手をちぎって無機物や生き物に刺すと、刺したものを自由に変形させてラジコンのようにあやつれるという能力を持っている。生きている人間や異形に刺すと、秘密を全て喋らせることも可能。地下シェルターで暮らすようになった後、同じ幹部の中村明日香と結婚して最終的に16人もの子供を儲ける。
転生機を子供にも使わせたがったり、地上進出に備えたコールドスリープで家族が離れ離れになることに塞ぎ込んだ明日香を思い、自分たち夫婦も眠りにつきたいと願い出るなど、家族を優先する描写が多い。
後に両親の特異性を受け入れられなくなった長男・長女と急速に関係が悪化。本当の意味での和解はできずに死別することになってしまった顛末にショックを受け、夫婦共々これ以上の転生を止めることを決める。最期は病床で子孫のことを真央に託した。
四天王のキョウトメガネンは薮内の子孫にあたる。
- 桐生
異形の幹部の一人。三つの目を持つ隻腕の異形男性。人間の収容所で右手を切り落とされて輪切りの標本にされた経歴を持ち、魔王によって救出された後は人間への憎しみを忘れないために敢えて右腕を再生せずに義手を使っている。同じく人間を強く憎む日村とは特に親しかった。
広範囲に強力な「酸性雨」を降らせる能力を持つ。素の戦闘も相当に強く、真央と並ぶ主戦力と見做されている。
冷静さはあるが非常に好戦的で、リーパーを宿敵と認定していた。長いシェルター生活で人間の書物に触れるようになり、次第に人間へある種の敬意も抱くようになったが、地上で再開した人間の文明は中世レベルに退化しており、待ち望んだ強敵はどこにもいないことに衝撃を受ける。
それでも強者の噂を聞けば駆けつけていたが、その度に現在の人間の弱さとそれにすら勝てない子孫たちの脆さを目の当たりにする。虚しさから転生の打ち止めを宣言し、次第に酒に溺れて仲間とも連絡を絶つ。しかし、日村に代わって面倒を見ていた健太の遺言や、自分を慕う仲間の子孫たちに救われて少しずつ立ち直り、最期は満足して往生した。
- 日村
鳥の頭部をもつ異形の幹部。人間に対して特に強硬なタカ派であり、言動はチンピラ然として粗野な所があるため、ステーシーからは嫌われているが、桐生とは親友。
自身を火の塊へと変ずる能力を持ち、発動に5秒、1日に最大15分までと制約があるが、炎と化している間は攻防最強クラスで、一切の攻撃が通じない上に瞬間火力は真央すら大きく上回る。
シェルターに逃れてからは家庭を持ち、健太という息子を儲けて平穏に過ごしていたが、人間の娯楽や文化に慣れ親しみ、迫害を経験していない子供世代が自分たちの戦いを批判し始めたことに激怒。独断で焚書を敢行したために非難が集中し、遂には住人たちから幹部退任を求められるまでになってしまう。
その後はかつての仲間たちからも距離を置かれて酒浸りの日々を送っていたが、ある日健太が自分へ反抗したことに激怒し、健太を庇った妻を誤って殺害してしまう。これにより家族も失って完全に自棄になり、自身の退任を求めるデモ隊の殺害を計画。
駆けつけた真央と桐生の説得を受けるが、これを拒否したため、ステーシーによって粛清された。
彼が遺した遺書はそのほとんどが愚にも付かない自己弁護だったが、末尾には息子と友への想いが綴られていた。
彼の死をきっかけに「子孫に人類の蛮行を伝える」方針が取られたが、それが別の火種を生むことになってしまう。
なお、真央から過去話を聞いたモッコスからはそのセンスを気に入られており、珍しく「さん」付けで呼ばれていた。
- 中村 明日香(なかむら あすか)
単眼の異形幹部。薮内とは恋仲にあり、シェルターに籠ってからは結婚する。子供の存在を生きがいとしており、長い転生生活の中で多くの子供を儲けた。子や孫のコールドスリープによって今の家族と離れなければならなくなったことで塞ぎ込んでしまい、その寂しさを埋めるように藪との間に新たに子供を儲け続けた。
後に薮内と共に一部の子供たちから拒絶されてしまうこととなり、それを切っ掛けに転生を辞めることを決断。薮内が病没してから間もなく、彼女も寿命で没した。
能力は「未来予知」。指定した人物の15分先の未来を見ることができる。複数人の未来を見ることも可能だが、映像だけで音は聞こえない。これによって核攻撃を始めとする人間側の攻撃を正確に対処していた。厳格に時間の制約がある彼女の能力によって転生機の欠陥が判明することとなる。
- 飛(フェイ)
黒色の体と全身に無数の目を持つ異形の男性。普段は人形を保っているが、能力の使用時などは姿をある程度自在に変えられる模様。趣味は読書。
能力は「空間移動」で、自身が行ったことのある場所の空間を繋ぎ、自身や他者を瞬時に転移させることができる。戦闘にも応用可能で、相手を高所などの危険地帯に飛ばしたり、身体の一部のみを転移させて切断すること等も可能。ただし、ある程度以上の実力者なら空間移動の気配を察知することができる。
幹部の中では穏健派で、人間への憎しみはあるが人間の文化や知識自体は好んでおり、無用な殺戮を嫌う傾向にある。
異形の統治においてはその知識を生かして中心的な存在となる。様々な問題に場当たり的な対応しかできなかった自分たちが、統治機関としては未熟であることを反省し、人間の法をベースにした法の策定や、名作文学を異形に置き換えた書き直しなどを実行した。
後にライブラリと呼ばれる人間の文化に寛容な西部地区の庇護者も兼ねるようになり、いつか異形から独自の文化が生み出されることを夢見て、飽きるまでは転生を続けている。
そのため、過去篇の幹部の中では唯一現代でも生存している可能性がある。
- ステーシー
異形の幹部で外見は人間と全く変わらない女性。能力は「最強の肉体」。ミサイルでも傷つかないほど頑丈で、腕の一振りでビルをなぎ倒し、地形すら変えてしまう力を持つ。
元は米軍所属で、その圧倒的強さから表向き「アメリカの象徴」と讃えられていたが、実態は生物兵器扱いで、本来戦友であるはずの米軍からすら「化け物」と蔑まれていた(裏切る前はリーパーからは友人になれるかもしれないと興味を持たれていた)。
最初は真央の敵として立ちはだかったが、彼女の一撃で初めて流血したことで生を実感。感動してそのまま異形側に寝返った経緯を持つ。
幹部ではあるが、異形のためというより真央を始めとする恩人・友人たちのためという個人的な理由で戦っていたため、異形の未来のために転生を繰り返す考えには共感せず、転生機の使用を拒んだ。
日村が暴走した際には、粛清の執行役として彼を殺害。彼女自身は日村のことを嫌っていたが、それでも桐生や真央にとっては大事な友人であることを思いやって、汚れ役を引き受けていた。
その後、宣言した通りに寿命で世を去る。
- アリバタ
柱に泡が集まったような体を持つ異形の幹部。幹部の中では最も人間からかけ離れた外見をしており、手足や顔がどこにあるのかすら分からない。性格は温和で理知的。クラーブの言葉を唯一まともに理解できる。
能力は「触れた物の増殖」で、無尽蔵に物資を増やすことができるため、異形全体の生活環境の維持に大きく貢献した。
悪環境から憎しみに走りやすい異形の中では珍しく、真っ当な倫理観を有している。これは彼の出身である新興宗教団体がその能力に希望を見出し「神の子」として教育を施したためである。
仲間や子孫達のために生涯に渡り物資の増殖に従事したが、転生機の使用は拒否。その際の「摂理に反する」という彼の言葉は、後々になって転生機を使用した者たちの心にのしかかってくることになる。
- クラーブ
蟹をそのまま擬人化したような異形の幹部。普段は魚語で喋るためまともに会話ができず、アリバタがそれを翻訳して意思疎通をしている(喋れないわけではないようだが片言である)。
能力は「魚と友達=全魚類の支配」で世界中の魚と瞬時に交信することが可能。これにより原子力潜水艦を始めとする人類の海洋兵器を即座に発見していた。
人類最後の反撃で地球が放射性物質に汚染されていく中、仲間たちの避難に尽力。シェルターには入らず、アリバタに遺言を残して魚たちと運命を共にした。
日村曰く、彼の同朋意識は異形よりも魚の方に向いていたらしい。
人類
- サバント
かつてギデオン(リーパー)と同じ対異形特殊部隊に所属していた科学者であり、彼の恋人。人類最高の頭脳と評された天才で、対異形に関する様々な兵器の開発や技術提供を行っていた。
大戦末期、ギデオン以外の仲間を失い、そのギデオンすら人類から切り捨てられたことを知ると彼と共にシェルターへ避難する。
長年の戦いと兵器の副作用で余命僅かな恋人の延命に奮闘。ギデオンの人格をデータとして抽出し、基準を満たした別の新人類の身体に移す方法を考案する。しかし、人格の抽出は生きている内に行わないといけない上に、その際にギデオンの脳を焼き切ってしまう問題を解決できなかったことから「自分の手で恋人を殺す」という意識を拭えず、人格抽出完了後に彼の遺体を抱えて自殺。ローワンとラミーに発見された際にはミイラになっていた。
過去に異形幹部のメンザと3分だけ通信したことがあるが、自身が完全に低能扱いされただけでなく、思いつきもしなかった知見を授けられて衝撃を受けている。以降メンザのことを非常に高く評価し、再び語らうことを望んでいた。
一方のメンザは自分にとって当たり前に出来ることを心配されたことに腹を立て、サバントのことを「虫レベルの知性の有象無象に囲まれて知恵があると勘違いしたサル」と酷評していた。しかし、後ろで通信を聞いていた真央からすればサバントも意味不明なことを喋っている大天才だったため、「自分も虫と思われているようだ」と落ち込んでいた。
用語
呪文 / 計算式(コード)
人間が超常現象を引き起こす技術。
人間には元来超常現象を操る機能が備わっているものの、通常それを司る脳部位が休眠状態であるために使うことが出来なかった。しかし特定の言葉を口にすることで脳を活性化させ、任意に超常現象を発生させる手段が発見される。「発火」「発電」「爆発」「治癒」「肉体強化」「念動」「噴霧」「毒」を引き起こす科学技術として確立し、新たな産業の基盤として民間にも広く知られ利用されている。
この「特定の言葉」は8話までは「呪文」、9話以降は「計算式(コード)」と呼称されている。
魔素
超常現象を引き起こす源で、人類の体内に存在する酵素。魔力とも呼ばれる。
魔族/異形
前述の「呪文/計算式(コード)」では再現できない「その人物固有の能力」を保有する人類の突然変異種。通常の人間よりも頑強な肉体と豊富な魔素を持ち、脳や肉体に人間には存在しえない器官がある。個人差はあるが外見も人間とは異なる。
能力の希少性や醜悪な容姿から人権が認められておらず、公的機関からは研究対象として懸賞金が出ており迫害されていた。
中には魔王のようにほとんど人間と変わらない者や、外見上は人間と全く同じ者もおり、そのため大戦では人間側として戦っていた異形もいる。
8話までは「魔族」、9話以降は「異形」と呼ばれている。
新人類/勇者候補
「呪文/計算式(コード)」無しでその異能を行使できる人類。先天的に脳が常に活性化しており、無詠唱で超常現象を引き起こせる天才として現代においては「勇者候補」と呼ばれている。稀少な存在ではあるが、異形に比べると高頻度で生まれる。魔力量や身体能力には大幅な個人差があるため、リーパークラスの存在から通常の人類でも数で対処可能なレベルまでピンキリ。
転生機
魔族が持つカプセル状の機械。開発者はメンザ。中に入った生物の身体を分解し、任意の年齢の姿に再構築することができる。死体にも使用可能だが、脳が一定以上無事である必要があり、腐敗は対応できるが炭化や物理的な損失の程度が酷いと再現できる人格や記憶が限られる。
しかし、転生する度に少しずつ能力が減衰していく欠陥がある。この欠陥が発覚した頃には開発者であるメンザの頭脳も転生によって減衰していたため、原因どころか仕組みすら分からないロストテクノロジーと化してしまった。現代では経年劣化によって能力の減衰量が更に増えている。
関連タグ
X-MEN ・・・ 突然変異によって超人的能力を持って生まれたミュータントと、人類との間の社会軋轢を描いた作品。
魔王オディオ ・・・ 裏切りによって生まれた、「人間」をテーマにした魔王。