ゲームでの性能
カード名 | ネクロポーテンス/Necropotence |
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マナコスト | (黒)(黒)(黒) |
カードタイプ | エンチャント |
能力 | あなたのドロー・ステップを飛ばす。 |
あなたがカードを捨てるたび、あなたの墓地にあるそのカードを追放する。 | |
1点のライフを支払う:あなたのライブラリーの一番上のカードを裏向きのまま追放する。あなたの次の終了ステップの開始時に、そのカードをあなたの手札に加える。 |
※ヴィンテージ制限カード(2000年10月1日、旧タイプ1より指定)
※レガシー禁止カード(2000年10月1日、旧タイプ1.5より指定)
解説
初出はアイスエイジ(1995年)。
カード文が少々ややこしくてわかりにくいが、ざっくり言うと「通常ドローが出来なくなる代わりに、ライフを払った分だけターン終了時にドローできる」といった感じの性能。
愛称は「ネクロ」。
後年、様々な形で登場することになる「ライフをドロー・リソースに変換する」効果を持つカードの始祖である。
低コストで場に出せる上に極めて高いハンド・アドバンテージを得ることができるが、通常ドローができなくなったり、カードをドローできるのがターン終了時(=ドローしたカードをすぐに使うことが出来ない)であったり、ライフを支払う対策が無いと自滅しかねなかったりとデメリットも大きく、登場した当時は天敵とも言える〈黒の万力/Black Vise〉(毎ターン手札枚数が大きい程ダメージ)の存在もあって、当初はいわゆるカスレア扱いされていたカードであった。
しかし、デメリットを克服しさえすれば毎ターン手札をMAX状態にできることも事実であり、しばらく後に天敵の黒の万力がめでたく制限カードに指定されるやいなや、ネクロはそのポテンシャルを盛大に悪用されることになる…。
爆誕ネクロディスク
プレイヤー達によってネクロの研究が進むうち、誰かがふと考えた。
「ネクロをいざという時のために場をリセットできる〈ネビニラルの円盤/Nevinyrral's Disk〉と組み合わせてみるのはどうだろう…?」
こうして作られたのが、ネビニラルの円盤のリセット能力を切り札に、ネクロによって補充される豊富な手札を〈暗黒の儀式/Dark Ritual〉といったマナ加速カードでぶん回し、ゲーム序盤から手札破壊・土地破壊・ライフドレイン・軽量クリーチャーを超高速で展開して相手を圧倒する、通称「ネクロディスク」と呼ばれるデッキであった。
そして1996年8月の世界選手権、ネクロディスクは大会を真っ黒に染め上げた。
他のデッキの使い手たちは、1~2ターン目から嫌がらせの如く襲いかかる手札破壊や土地破壊でパーマネントどころか土地を満足に並べることすらできぬまま、ある者は大量の敵クリーチャー達にぼてくり回され、ある者はライフを吸いつくされ、次々と脱落していった。なんとか隙を突いて体制を立て直す者もいたが、ネビニラルの円盤で一掃された上で大量の手札からすぐに補填されてしまうため、どうにもならなかった。
「アーニーゲドン」といった有力視されていたデッキ達が軒並み食い潰され、大会上位がたった一種類のデッキに占拠されていく光景に人々は震撼した。俗に言うネクロの夏の到来である。
なお、この大会で優勝したのは白のウィニーデッキだったが、これもネクロの脅威をいち早く察知して徹底的に対策したデッキだった上でそれでも辛勝であったことからも、その恐ろしさが分かるだろう。
今でこそ、開発側のうっかり等の理由でゲームバランスを壊しかねないほどの超強力なデッキ(いわゆるトップメタ)がトーナメント環境を席捲してしまう事態がしばしば起こることは、あらゆるTCGにおいて周知されているが、当時はMTGが登場して未だたった3年後の出来事であり、TCGというゲームジャンルそのものが手探りだった時代である。
「ネクロの夏」はまさにTCG史上初の異常事態だったのだ。
その後
それでもネクロは禁止されることなく、他のキーカードの入れ替わりで多少弱体化しつつもその後も様々なデッキに投入され猛威を振るい続け、ネクロをコンボデッキのドロー・エンジンに応用した「ネクロ・ドネイト」などの凶悪なコンボデッキを生み出す一因ともなった。
ちなみにネクロ・ドネイトの使い手でもあった日本人トッププレイヤーの藤田剛史氏は、当時「ネクロは実力を度外視したゲームを生み出してしまう」とネクロに対して苦言を漏らしている。
そして、「ライフが実は変換効率の良いドロー・リソースになる」・「ライフを維持するより、カードをドローする方が強い」という、現在のTCGでは当たり前となっている認識が世に広まることとなった。
経緯はどうあれ、結果としてネクロはTCGというゲームの力学に新たなる発見と進化をもたらしたのである。
禁止カードへ
が、流石にここまで来ると見逃してもらえなくなり、2000年10月1日よりタイプ1(現ヴィンテージ)で制限カード、タイプ1.5で禁止カードに指定されてしまった。2001年4月1日よりエクステンデッドでも禁止カード、2004年9月20日にはタイプ1.5から移行したレガシーでも続けて禁止カードとなった。