概要
最初の三つのカードセット「アルファ」「ベータ」「アンリミテッド」(それぞれ1993年の8月と10月、12月に発売)に封入されていたレアカードである。
当時はトレーディングカードゲーム(TCG)自体が黎明期にあり、MTG開発側も手探りの状態にあった。
後の大流行、国際的規模となるプレイヤー層・ユーザー層の爆発的な広がりについて思いもよらなかったのか「カードのレアリティを『レア』とすることにより入手難度を上げてユーザーがデッキに入れられる枚数を制限し、結果的にゲームバランスを保つ」という発想も存在していた。
(言うまでも無く、シングルカード市場が成立・発達すれば速攻で崩壊する)
破格の性能を持つパワー9はこのような背景のもと誕生した。その過剰な強さから生まれた反省により、調整版、リメイク版とも言えるカードも生み出された。
一方パワー9は後のカードセットに再録されない「再録禁止カード」となっている。アルファ、ベータ、アンリミテッド自体も再販されない事が決定されているため、カードパワーと希少性が相まって、「限定品でないカード」としては破格の値段で取引されている。
最も高価なBlack Lotus(メイン画像)の場合、日本円にして最低でも数十万、保存状態がよく、また最も希少な(世界に1100枚しか存在しないとされる)アルファ版となると余裕で桁が一つ増える。状態が悪いものでも十万近くとなる。傷だらけになってやっと数万である。
パワー9のカード
呪文を唱えるのに必要なマナを生む機能を持つアーティファクト五種。
カードドローに関する青のカード二種。
自分のターンをもう一度続けて行えるようになる青のカード一種。
上記から分かるように、あからさまにパワー(攻撃力)やタフネス(防御力)が高いクリーチャーカードといったものは無い。パワー9がデッキに複数枚、複数種類入っている場合、また他のカードとの組み合わせがなされる場合に生まれる相乗効果(シナジー)に開発側があまり自覚的でなかった時代ならではのチートカードと言える。
大会での使用
現在はマジックの公式大会での形式(フォーマット)の一つ「ヴィンテージ」でのみ使用可能。
このフォーマットですら制限カードであり、9種全て一枚までしか入れられない仕様になっている。
どれも既に骨董品の域にあるため、公式戦でもない対戦で実物を使う人はほぼ居ないと考えられる。
専用のケースやカードファイルの中で大切に保管されている。
パワー9に関する出来事
・MTGカードコレクターとしても有名な格闘家・佐竹雅昭氏がTBSのバラエティ番組『関口宏の東京フレンドパークII』で最後のダーツの景品としてジェムミント(最高の美品)のアルファ版パワー9をお願いした所、全部合わせるとパジェロ(車である)よりも高くなってしまうため、Black LotusとAncestral Recallの二つになった(当時の相場価格で合計10万円)。残念ながらダーツは外してしまったため、視聴者プレゼントとなったが、氏は当選した視聴者と交渉して買い取ったという。
・フロリダ州でこれらのカードを含むコレクションを所有していたMTGプレイヤー、シーン・デュガス(Sean Dugas)氏がコレクションを奪う目的で、顔見知りのプレイヤー兄弟に強盗殺人された。
2022年11月28日発売の『Magic 30th Anniversary Edition』でプロキシ版が収録される。価格は999ドルでランダム封入である。(参考リンク)