概要
ハビロイトトンボとは蜻蛉目イトトンボ亜目イトトンボ科ハビロイトトンボ科Pseudostigmatidae ハビロイトトンボ属Megaloprepusの昆虫である。学名はMegaloprepus caerulatus、ハビロイトトンボ属で唯一の種であり世界最大のイトトンボおよび世界最大のトンボとしても知られる。大きい物では翼開長が19cmにもなるが、そのサイズには地域差がある。トンボの中では珍しくメスよりオスの方が大きい。生息地は中南米の湿気の多い樹林など。
成虫は樹洞に溜まった水に産卵するのだが、この卵が孵化するまで18日から半年までと結構幅がある。これは水の中に他に捕食者がいないタイミングに生まれることを狙っていると思われる。一つの穴に何匹もの雌がやってくることもあり、1匹あたり1度に250個も産むこともある。
トンボの仲間なのでその幼虫は当然ヤゴで、もちろん肉食であり蚊の幼虫やオタマジャクシ等を中心に様々な獲物を食べる。ただハビロイトトンボのヤゴの密度が高いと互いを淘汰し合うらしく、密度が下がるまで滅茶苦茶共食いする。ちなみにこの環境は酸素が少ないのでその尾鰓は発達しているが、それに白い点がついていて他のヤゴと区別できる。
トンボの仲間なので当然不完全変態でありヤゴから途中で蛹になったりせず直接成虫となる。暗褐色から黒の体に黄色い模様がある。翅は3分の2が半透明で外側先端のの3分の1が暗い青色、メスは更にこの先端に白い斑点がありオスの場合は半透明部分と青い部分の間に白い帯がある。その悠々と羽ばたく姿は「青と白に瞬くビーコンのよう」と言われるらしい。
ハビロイトトンボ科の特徴として造網性の蜘蛛を狩る。トンボ目は基本的に捕まえられる物は何でも食べるのでこの特化した食生活は特徴的。蜘蛛の巣が見やすいように日当たりの良い場所を選び、蜘蛛を発見すると一旦後退してから素早く飛びつき巣から引き離すようにまた後退、蜘蛛の脚を外してから食べる。蜘蛛は栄養価が高く、空いた巣には他の蜘蛛が移り住むこともあるので同じ巣で何度も餌を捕まえられることもある。ただ流石にNephila属の仲間の様な大きく複雑な巣を作る蜘蛛はなかなか狙わないようだ。
産卵期になるとオスが縄張りを守るようになる。メスの産卵場所となる樹洞は大きければ大きいほど獲物が多いのでヤゴが育ちやすく、広い分他のヤゴと同時に共存できる(他のヤゴに狙われても逃げ回る余裕がある)などの利点がある。このような場所をライバルから守るためにオスは他のオスや自分と交尾してないを追い払う。
本種は止まり木が無い場所にはあまり出て行こうとしないため、生息地を広げることが困難となっている。