概要
高速で移動するにもかかわらず生身がむき出しとなるバイク乗車時には必須の安全装備である。日本の法律では1965年に高速道路での着用が努力義務化されて以来徐々に強化され、1986年には車格・道路による例外を一切認めない罰則付きの義務化が為された。
強度が要求されるのはもちろんのこと、前傾姿勢になりがちなバイクの運転に於いては視界の確保が重要であり、また首に負荷をかけないための軽量化や空気抵抗の低減、速度によってはジェットエンジン並みになる風切り音の抑制など様々な性能が要求され、各ヘルメットメーカーはしのぎを削っている。
国内でバイク用ヘルメットを販売するには国の基準に適合した証であるPSCマークとSGマークを取得することが必要であるが、製造する側の規則であり、使う側としては必ずしもこれらの認証を取得している必要はない。
その他の認定団体・規格には、国内競技参加資格であるMFJ、国際競技で触れられるFIM、欧州を中心とした国際規格であるECEや、5年ごとに基準が更新され世界で最も厳しいと言われるSNELLがあるが、これらの規格を取得していながらPSCマークやSGマークを取得しておらず、国内ではバイク用として売れないというミスマッチも発生していたりする(ファッション用などの名目で当然のように販売されているが)。
主な分類
- ハーフキャップヘルメット
通称半ヘル。
頭部の最低限の領域を保護するのみであり安全性はお察し。このためメーカーは高速道路での着用を推奨していないことが多い(使用を法的に妨げるものではないが)。
見た目上は気楽なのだが、騒音や空気抵抗、夏場は昆虫が顔面に突撃してくる問題もあり、実際に走ってみるとかなり苦痛の多いデザインである。
基本的には費用を抑えたいユーザーに好まれる選択肢であるが、日本においてはアメリカのドラマシリーズ『サンズ・オブ・アナーキー』の影響で「アメリカンバイク=半ヘル」という固定観念が浸透しており、金銭的問題とは無縁ながら敢えて半ヘルを選ぶ酔狂なユーザーも多い。
フィクション作品でも同様の傾向があり、これを被っているのは原付を愛用する青少年か、ハーレーを乗り回す渋いオヤジである。
- ジェットヘルメット
耳までガードされているもの。
良好な視界や、飲食、会話時の利便性などハーフキャップの気軽さを維持しつつも、耳が覆われる事により安全性が強化されている。白バイでは市民とのコミュニケーションの確保と安全性の兼ね合いからジェットヘルメットが主流。
騒音も大きく低減しており、前面シールドが装着されていれば空気抵抗も減らすことが可能。高級な製品であればフルフェイスに比肩する快適性を得られる。
しかしながら統計的に非常に負傷しやすい顎が無防備というのは安全上の欠点である。
ライダーらしさを演出しつつもキャラクターの顔を隠さないので、フィクション作品だとメイン級のキャラはジェットヘルメットを着用することが多い。同様の理由でpixivでの絵師人気も高い。
- フルフェイスヘルメット
チン(顎)ガードが一体となり頭部の全周が保護されるもの。
安全性が高いのでレースでは必須の装備。視界には特に気を配られているため、イメージに反して下方視界を除けば視界の不利はほとんど存在しない。
空力的に配慮された設計により高速走行中でも走行風の圧力や騒音を大幅に低減でき、快適なツーリングの実現にも一役買ってくれる。
しかしながら通気性の不足は否めない。ベンチレーションを設けるなど各社工夫を凝らしてはいるものの、停車してしまうとその恩恵は全く受けられずサウナ同然である。
遮光用のミラーシールドやスモークシールドを装着するとライダーの顔がほとんど見えなくなるため、フィクション作品では覆面の一種として不気味さやミステリアスさを強調したり、モブキャラから個性を剥奪するために用いられることが多い。
- オフロードヘルメット
オフロード競技用に設計されたフルフェイスヘルメット。泥除けとなるバイザーを装着しており、激しい運動に堪えられるよう口元の空間を広げているのが特徴。
あまり高速で走行することのない競技形態でも通気性を確保するためシールドは装着されていないことが多く、別途ゴーグルを装着して目を保護する必要がある。
転倒の多い環境で使用されるだけあって安全性は最大限に追求されているが、バイザーや口元の形状が強い空気抵抗と風切り音を生むため行動でのツーリングにはやや不向きである。
- システムヘルメット
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チンガードをシールドといっしょに持ち上げることができ、閉鎖時はフルフェイスとして使用しつつ、開放時にはジェット型と同程度に開口することができるもの。
フルフェイスとジェットのいいとこ取り…とはいかず、可動部の分同価格帯のフルフェイスよりやや重く、また強度も多少落ちるのが欠点。
主なヘルメットメーカー
快適性、特に風切り音の低減に心血を注ぐメーカーであり、自前の風洞試験設備にライダー型のロボットをぶち込んで日夜研究に励んでいる。
ユーザーのニーズに答えるために幅広いラインナップを展開しており、公道バイク旅からオフロードまであらゆる需要に応え、世界50%以上の圧倒的なシェアを誇る。
インカムの内蔵やディスプレイの搭載など最新技術の投入にも熱心である。
SHOEIと並べて語られる一流メーカー。
強度へのこだわりは業界随一。世界最難関のSNELLより更に厳しい独自のアライ規格を採用しており、強度の出しづらいシステムヘルメットはそもそも作ってすらいないという潔さ。
モトレーサーからの信頼も厚く、額に燦然と輝くAraiのロゴは多くのライダーの憧れとなっている。
しかしながら強度を重視するために使い勝手が多少犠牲になっている部分もあり、初心者からはとっつきづらさを指摘する声もある。
国内第三位のメーカー。
お求めやすいリーズナブルな製品から、MFJ、FIMに認証されたプロ仕様まで、SHOEIが横ならカブトは縦に広いラインナップを展開しており、初心者からベテランまで多様な層のライダーの需要に応える企業である…のだが、コスパ優先の安い製品しか展開していないという偏見を持たれておりライダーの間では上述の二大企業には一歩劣るという見方をされがち。