「キミ——ボクの相棒になってよ」
CV:花守ゆみり
概要
『探偵はもう、死んでいる。』に登場する秘密組織《SPES》の最高幹部。臙脂色の軍服を身にまとった紅色の目をした黒髪の少女。
ヘルとは北欧神話で氷の国ニヴルヘイムを司った女王の名でもある。
初登場時には主人公・君塚君彦を誘拐して、パートナーになるよう提案してきた。
また、このとき君塚は初めて未来が記録されているという《聖典》なるものの存在ヘルから聞いた。
ほかの《SPES》のメンバーを仲間ではなく、計画を完遂するパーツに程度にしか思っていない。またヘルによってほかの《SPES》メンバーもまたお互いを利用しているに過ぎないことが語られた。
シエスタvsヘル
シエスタの策によってケルベロスを追い詰めた2人であったが、ギリギリのところで逃げられる…
かと思いきや突然、ケルベロスの首が刎ねられる。そして、ヘルが登場する。シエスタや君塚に目もくれず、ケルベロスの左胸にサーベルを突き刺し、自らの腕をケルベロスの左胸に自身の左手を突っ込み、黒い石を引き抜いた。そして、戻って計画を実行に移そうとするヘルに対してシエスタは止めようとするが、ヘルは自身の《紅い目》を光らせてシエスタの動きを封じ、君塚を誘拐した。
そして、君塚をロンドンの国会議事堂の地下施設のような場所で手錠を付けて固定し、君塚に未来が記載されているという《聖典》について、また君塚の体質について語る。
その後、君塚をパートナーに誘うも断られてしまう。しかし、そのことはヘルも織り込み済みで、その代わり?として君塚に《生物兵器》ベテルギウスを見せる。ヘルによれば、ベテルギウスは人間の心臓を動力源として動き、自身の吐く息には空気中の酸素と結びつきやすい毒素が含まれているという。この直前ロンドンでケルベロスが人間の心臓を狩っていたのはベテルギウスを稼働させるためだったのだ。
そして、ヘルは最後の餌として、先ほどケルベロスから引き抜いた黒い石をベテルギウスに与える。それを与えるとベテルギウスはものすごい咆哮とともに動き出し、ヘルは怪物をロンドンの街に解き放とうとする。それに対して君塚は、手錠を自身の胸ポケットに入れていた針金で解き、
「お前は今ここで止める」
と言う。それに対してヘルは、
「どうやって?武器も持たないキミに」
「いつ、俺がお前を止めると言った?」
その瞬間、シエスタの声とともに地面を掘っているかのような大きな音が鳴り、さらにその後、君塚らのいた地下施設の壁を豪快に破って、人型戦闘兵器《シリウス》に乗ったシエスタが登場した。シエスタによればシエスタは君塚が誘拐されたことに気が動転して、イギリス政府に掛け合い、軍が秘密裏に開発を進めていた人型戦闘兵器《シリウス》を借りてきたとのこと。
そうして、人型戦闘兵器と生物兵器の戦いの火蓋が切って落とされる。パワーでは《シリウス》が上であったが、ベテルギウスは機動力を活かして《シリウス》の攻撃をかわしつつ、ロンドンの街に怪物を放つため地上へと向かっていく。やがて、ベテルギウスは地上に出る。そして、《シリウス》が地上に出た時にはすでにベテルギウスはビックベンの上から毒素を含んだ息を吐こうとする。それを見たシエスタは、
「助手」
「今から、なにがあってもすぐにこの場を離れてね」
と言って、シエスタは《シリウス》の脱出装置を作動させて君塚1人だけを夜空へと逃がし、自身は《シリウス》に乗ったまま、ビックベンにいたベテルギウスへと突撃し、両者は落下する。シエスタは自己犠牲という形をとり、ベテルギウスを止めたのだった。
その後、シエスタから「逃げろ」と言われた君塚であったが、シエスタを探しに《シリウス》とベテルギウスの落下地点へとやってくる。焦る君塚をよそに、シエスタは傷を負いながらも生きていた。さらにはシエスタ以上に傷を負いつつもヘルも生きており、サーベルを投げそのサーベルは君塚の左眼を掠める。
そうして今度は2人の戦闘が開始する。
直後ヘルの《紅い目》が光る。
「キミはそこから一歩も動けずボクの刃に貫かれる!」
そうして、動けないシエスタに向かってヘルはサーベルを構え、
ヘルは自らの胸にサーベルを突き立てた。
困惑するヘルがシエスタを見ると、シエスタは手鏡を持っていた。ヘルは自身の《紅い目》の能力を逆手に取られて心臓に重傷を負ってしまった。
そうして、シエスタはヘルにとどめを刺そうとするが、ヘルは
「カメレオン」
と叫ぶ。それに対してシエスタが身構えると、ヘルの身体は突如消え始める。シエスタが急いでマスケット銃を放つも、当たらなかった。ヘルはギリギリのところで仲間を呼んで窮地を脱したのだった。その後、シエスタと君塚はヘルを追うかと思われたが、シエスタが突然、
「ごめん」
と言って、倒れてしまった。こうして、ヘルとシエスタの一度目の戦いはヘルがかなりの重傷を負ったものの痛み分けという形で幕を閉じた。その後ロンドンでの出来事はアリシアのページを参照。
ネタバレ
ここからは本編のネタバレを含みます。まだご覧になっていない方は先にそちらを見ることをお勧めします。
シエスタvsヘル 再戦
シエスタがカメレオンとの戦闘を回避するため心臓を止め死んだふりを行うも、そこに君塚が現れシエスタの予定を狂わせてしまう。そしてそこにヘルもやってきた。
「私は勝つよ。そして必ず、アリシアの願いをかなえて見せる」
「いや、キミは必ずここで死ぬ。キミにあの子は救えない」
そうして、シエスタとヘルの戦いの火蓋が再び切って落とされる。
そんな戦いのさなか、ヘルは必死なシエスタを見て、
「笑えるほど必死だね」
「そんなにご主人様のことを取り返したいんだ」
と吐き捨てる。
その言葉からシエスタと君塚はアリシアこそが表の人格で、ヘルはその裏人格に過ぎないということに気づく。そしてさらに、ヘル自身の言葉によって、ほかの人造人間たちとは違い、アリシアはもともと普通の人間だったために、数々の人体実験を受けてきた。その苦しみに耐えかねて、ある日、ヘルという存在を己の内側に生み出したということを知る。
そして、戦いの最中突如、人格をアリシアと入れ替える。シエスタはそれでも発砲し、銃弾はアリシアの肩に当たる。シエスタはわざと急所を外したが、再びヘルへと人格を戻す。そんなヘルを見てシエスタは、
「あぁ、やっぱり嘘だったんだ」
と、いつかと同じようなセリフを漏らす。するとヘルは、
「ボクの何が嘘だって?」
と剣先をわずかに揺らしながらシエスタに尋ねる。そんなヘルにシエスタは
「だから君に《SPES》としての意思なんて、ないんでしょ?」
「君はアリシアの防衛本能によって生み出された全く新しい存在——であるならば、君自身に《SPES》としての本能が根付いているはずがない」
「だから、君は必死に《SPES》に近づこうとしていた——ただのまがい物だよ」
シエスタはそう冷酷に告げる。ヘルは、シエスタに「なぜボクがそこまでするのか」という疑問を投げかける。するとシエスタは、
「愛されたかったんでしょ、お父さんに」
と言った。そう次々と淡々に推理するシエスタに対してヘルは動きに精彩を欠いていた。それはシエスタの推理が当たっていることの証左でもあった。さらにシエスタは推理を続ける。さっきアリシアと人格を入れ替えたのは、自分を散々苦しめた復讐として痛みを与えたのではなく、散々苦しめておいて、自分だけ、シエスタや君塚という仲間を作ったのが憎くて、それでも羨ましかった、つまり嫉妬心から痛みを与えたという推理をヘルに告げる。さらに、ヘルもまた単に仲間が欲しかっただけだと推理した。そんな推理をヘルは否定し、《紅い目》を光らせる。その照準はシエスタと君塚に向けられるが、お互いが言葉をかけあうことで、その洗脳を解除した。お互いが自分より相手のことを信じる、それこそがヘルの《紅い目》を打ち破る方法だったのだ。そしてヘルは認める、愛されたかった、必要とされたかったことを。しかし、同時にお父様に認めてもらいたかったことを告げる。そうして、ヘルはお父様のためにシエスタを倒そうとして、サーベルを構え、シエスタもまた戦闘態勢をとる。ちょうどその時、突如地面が大きく揺れる。そして、地面が大きく割れ、ベテルギウスが現れる。
その後は、シエスタのページを参照。
ご主人様に対する本当の想い
ここからはTVアニメ「探偵はもう、死んでいる。」のシーズン1では語られていない、原作小説(3~10巻)のネタバレも含みます。アニメしか見ていないという方は注意してください。まだ読んでない方はそちらを読んでから読むことをお勧めします。
ここからは原作小説3巻までの内容を含みます。
クルーズ船での戦いののち、君塚君彦、夏凪渚、斎川唯、シャーロット・有坂・アンダーソンは何者かに誘拐され、シエスタの死の真相を探るためのビデオを見せられる。そこで、君塚らはヘルがシエスタの心臓を奪ったこと、またヘルの表の人格が夏凪渚であることが発覚する。そんな中、誘拐犯はシエスタが犯した間違いを探すよう夏凪に依頼する。シエスタが犯した間違いと言われても、夏凪と君塚は全く見当がつかなかったため、当時の関係者に話を聞くことにした、最も関係していたヘルに。だが、シエスタが封じ込めたヘルの人格がそう簡単に出てくるとは思えなかったが、誘拐犯の助けを借りて、合わせ鏡という形でヘルとの対話を可能とした。そこで、君塚は一年前の事件、シエスタについて聞くが、ヘルは知らないとその質問を一蹴した。すると夏凪はヘル自身について知りたいと言い出す。それに対してヘルは、「ボクのことならご主人様自身が一番わかっているのだから、自身の記憶をたどるほうが早い」と述べる。しかし、夏凪がそう簡単に思い出せるわけがなかったが、ヘルの《紅い目》が光る。
「さぁ、ボクに代わって語ってごらん——ご主人様自身の物語を」
そこで語られた内容は、「夏凪はシエスタとアリシアとともに6年前、あの孤島で《SPES》と戦った」ということだった。(詳細は[[アリシア)]のページを参照)
それによって、君塚はアリシアが夏凪とは別の存在として存在していたことを知る。それに対してヘルは、
「ボクは一度だってご主人様を、アリシアという名で呼んだことはなかったはずだよ」
と告げる。
そしてさらに、シエスタがロンドンでアリシアの姿を見たのに全く気付かなかったのはなぜかという君塚の疑問に、シエスタもまた《SPES》によって記憶を消されていたことを告げる。こうして、過去の話は終わったかに思われたが、夏凪はまだ話を続ける。そして、アリシアを亡くした後、ヘルが初めて夏凪の身体に表出したことを知る。それを聞いた夏凪は、突如として、
「ごめん。そして、ありがとう」
と言った。訳が分からないヘルであったが夏凪は、ヘルが自分の辛さや痛みをすべて引き受けてくれたことに対して謝罪する。それに対する、「ありがとう」なんてよりによってその当事者にヘルは言ってほしくはなかった。しかし、夏凪はこう続ける。
「あなたは、あたしを守るために《SPES》の一員になった。そうでしょ?」と。
再び意味が分からないヘルをよそに夏凪は推理を続ける。六年前、《SPES》の秘密を知り、《種》に耐えられなかったアリシアは命を落とし、体の弱い夏凪も処分される運命にあったこと、そんな夏凪を救うためヘルが《SPES》として役立つことを証明しようとしたこと、施設の子供を逃がすほどヘルがお人好しであったこと、ロンドンでのシエスタとの戦いで心臓に重傷を負ったヘルは夏凪の肉体を殺さないために、《ジャック・ザ・デビル》の事件を引き継いで夏凪を救おうとしたこと、そしてシエスタの一年前の推理が間違っていたことを自身の推理として述べる。そして夏凪はヘルがご主人様である夏凪を何よりも大切に思っていたという事実にたどり着く。
こうして夏凪は自分の過去と向き合い、新たに探偵としての道を歩んでいくこととなった。
この一件以降、ヘルは自身がご主人様のことを大切に思っていたことを認め、今でも大切に思っているため、君塚には「夏凪渚を泣かせるな」という忠告を何度かしている。
能力
腰回りには何本もサーベルを指しており、武器はサーベルを扱う。戦闘能力は高く、常人離れした身体能力をもつシエスタと互角以上に渡り合うほど。
また《紅色の眼》で見た者の意識に干渉することで相手の行動を操るマインドコントロールのような能力をもつ。この能力は夏凪渚がヘルを受け入れたことで夏凪も使用できるようになった。
余談
作者の二語十によると二語十が以前書いた敵キャラの夕凪渚というキャラをモデルに書いたと語っている。表人格の名前である夏凪渚に関連したキャラ付けだったようである。
関連タグ
探偵はもう、死んでいる。 シエスタ(たんもし) 君塚君彦 僕っ娘