概要
名前の由来は「ウェベン(自ら立ち上がるもの)」。
イシェドの木にとまる聖なる鳥。或いはエジプト九柱の神々の筆頭格である原初の神アトゥムやエジプト神話の最高神にして太陽神でもあるラーまたは冥府の王オシリスの魂として考えられる事もある。
また、“鮮やかに舞い上がり、そして光り輝く者”、“ラーの魂”、“自ら生まれた者”或いは“記念祭の主”という肩書を持つ。
長い嘴をした黄金色に光り輝くアオサギの姿、或いはツメナガセキレイや赤と金の羽を持つ鷲の姿をしているとされているほか、稀に鷲の頭をした人間という姿として現される事もある。
この鳥は500年周期でアラビアからやってきては、没薬を使い親鳥の死体を卵型に包む。
(没薬(ミルラ)は防腐作用を持つ香料であり、ミイラの語源になった)
その性質は500年ごとに香木を集めて火を放ち、自ら焼死しては復活するギリシャ神話のフェニックスに受け継がれた。
伝説によれば原初の神アトゥムの化身として現れ、混沌の海・ヌンの中にあった世界にはじめて舞い降りた。その地こそ始まりの丘「タァ・セネン」(もしくは「ベンベン(永遠)」の丘)である。
タァ・セネンは豊穣と地下資源の神タテネンとして神格化され、ピラミッドやオベリスクの上にはこの丘を模した「ベンベネト」という四角錐のキャップストーンが置かれた。
また、初めて声を発したときに有と無が分かれ、時間と時間の区分が誕生した。
混沌とした原初の海より太陽の卵が誕生した時、その卵を抱いて温め孵化させたともいわれており、“太陽の魂”と称される。
エジプト神話の最高神にして太陽神・ラーの魂として、毎朝後事に再生を繰り返す太陽と同じ存在といわれる事も。
余談
5500年前までアラビアには、現生のアオサギより大きい絶滅種「アルデア・ベンヌイデス(Ardea bennuides)」が生息していた。
英名・仏名を和訳すれば「ベンヌアオサギ」となる。
このころエジプトは先王朝時代であり、上エジプトはナカダ文化のころに当たる。