概要
元々は加藤拓弐が自身のSNS上で展開していた短編漫画であり、人間と「意思を持った機械」との相棒関係をテーマとした複数の作品群である。それぞれの作品は同一の世界、同一の時間軸上でつながっており、2022年10月にこれらを商業作品として単行本にまとめたものが、記事タイトルの「メカニカルバディユニバース」である。
2023年4月から、ヤングガンガンにて新章「メカニカルバディユニバース 1.0」の連載が開始されている。
物語・世界観
過去に大きな戦争が勃発し、巨大人形兵器や意思を持った機械がごく当たり前に存在する時代。戦争の影響からか治安は悪化しており、暴走したロボットやサイボーグ化した暴徒による犯罪も後を絶たない。そんな中で、旧型の戦闘用アンドロイドが、廃墟の中に捨てられていた一人の赤ん坊を拾ったことから物語は始まる。
どのような戦争がいつ起こったのか、技術体系がどのように進歩していったかなどは描かれず、荒廃した世界における人間と機械の日常を描いた連作となっている。
登場人物
この物語では商業連載版「メカニカルバディユニバース 1.0(以降、1.0と呼称)」までは登場人物名が書かれなかったため、記事内においては未判明分は作中での通称や外見的特徴などを仮称として記載するにとどめる。
アンドロイドと少年
戦場で捨て子を拾ったアンドロイドと、そのアンドロイドを母親として慕う少年。この2人を描いた「あるアンドロイドのおはなし」という作品の投稿がすべての始まりとなった。
- ブラウ
旧型の戦闘用アンドロイド。型番『M3-C227』。
作者ならびにファンからは「おふくロイド(おふくろ+アンドロイド)」と呼ばれている。
元々は名前のない一介の戦闘用アンドロイドに過ぎなかったが、とある任務で組んだ相棒と共に危機を脱した後、その時に見た青空の素晴らしさから「Blau(青)」と名付けられた。
ある雨の日に廃墟の中に捨てられていた赤ん坊を拾い、孤児院や知り合いに託そうとしたがどこにも都合がつかず、「レイニー」と名付けて自分で育てることを決める。
元々は内部骨格が丸出しの状態でコートを羽織るだけという格好だったが、その格好に恐怖感を抱いた赤ん坊に泣かれたため、女性に偽装するスキンパーツをまとい、声も女性型に変えて母親となった。
荒廃した世界で生き残れるように、レイニーには一般常識の他に兵士としての技術を身に着けさせている。その一方で、より母親らしくするための機能向上も怠らず、巨乳パーツやしなやかな四肢パーツを度々買い求めている等、元々無性だった人格は今や完全に女性となっている。
ただし、味覚を感じる機能がないため料理の腕は皆無で、息子に与える食事は栄養価だけを重視したものになりがち。
作中での時代では既に旧式でアップデートもままならず、度々故障(バランサーの故障で足が動かなくなる、手の力の加減ができなくなるなど)して息子に助けられている。
- レイニー
ブラウに育てられた子供。雨の日に拾われたことから「雨男(レイニー)」と呼ばれるようになった。
ブラウの教育によって兵士としての能力を身に着けており、母親と一緒に傭兵稼業で生計を立てている。その出自故アンドロイドと人間を差別しない素直な性格で、母親の動きを長年見続けてきた経験により、人間と見分けがつかないアンドロイドを見破ることもできる。
自分を育ててくれたブラウのことを心から尊敬しており、彼女が気を利かせて「本当の母親」を探そうとしたときには激昂している。
幼少時にはブラウを「母さん」と呼んでいたが、思春期になってからは「おふくろ」と呼ぶ。このことが「おふくロイド」という愛称が生まれたきっかけにもなっている。
ブラウが料理音痴だったためか、とてつもなく不味い料理を平気で食べられるという特技を持ち、保存期間が過ぎた保存食も体を壊すことなく摂取することが可能。
"鷹の双眸(ホークアイズ)"
何十年も前に設置され、戦後そのまま放置されていた一基の機銃と、その機銃に見初められた少女が結成した「正義の味方」。
- ホーク
AIが搭載され、意思を持った機銃座。作中から何十年も前に、ビルの高層階に対空機銃として設置され、そのまま放置されていた。
長年の思考の末に意思を持つに至り、街の景色をずっと見続けてきた中で、空の色に一喜一憂する一人の少女・リーカに恋愛感情を抱く。それからは彼女がビルに来てくれるよう、発光信号を送るなどして興味を引いてきた。
その後、彼の思いを受けた少女によってビルから持ち出され、街の悪党を倒す正義の味方を結成。少女が身につけるパワードスーツの一部となって、外の世界に飛び出すことになる。ブラウとも知り合いで、任務をともにすることもある。
- リーカ
ホークに一目惚れされた少女。街のパーツ屋の孫娘であり、好奇心が旺盛。ホークの発光信号に気づいてビルに入った際に彼と出会い、告白を受ける。
その後、実家のパーツから組み上げたであろうパワードスーツにホークを搭載し、街の悪党を成敗する正義の味方となり、超遠距離からの狙撃で活躍している。「1.0」の時代には、鷹を模したスーツをパワードスーツの上に着込み、飛行能力をも獲得している。
"嘆きの妖精(バンシー)"
人形機動兵器の女性パイロットと、その機体に積まれていたAIユニットの活躍から広まった異名。
- ダリア
通称"嘆きの妖精(バンシー)"。無愛想な印象を与える元軍人の初老の女性。イメージとしては、映画「ターミネーター:ニュー・フェイト」に登場するサラ・コナーが近い。
現在は戦争により誰も住まなくなった教会を住居とし、育てた野菜を地域の貧しい子どもたちに配るなどの慈善ぶりから「シスター」と呼ばれることもあるが、彼女自身は特に信仰心はなく、たまたま教会にいるに過ぎないと語っている。
少女時代に軍に入った後、四足の人形機動兵器「拡張戦車」のパイロットとなり、新兵にもかかわらずエース部隊として名高い「バンシー隊」に配属される。その後、任務中に多数の敵に囲まれた際、泣きじゃくって悲鳴を上げながら敵を全滅させて五体満足で帰還したというエピソードから「泣き女」の異名が定着し、腕前を上げるに従って「嘆きの妖精」と恐れられるようになった。
戦後は愛機とともに軍を離れ、教会に住みつつ傭兵稼業などで生計を立てている。
- ジュークボックス
ダリアの愛機に搭載されたAIユニット。愛称は「ジューク」。
機体から取り外した箱型で持ち歩くことができ、接続さえできれば拡張戦車以外の機械も自在に操ることができる高性能ぶりを誇る。
普段は音楽を流したり、スプリンクラーを操作して植物を栽培することを日課にしている。教会に侵入してきた人間を殴るための鈍器として扱われることもしばしば。
ダリアとは軽口を叩き合いながら抜群のコンビネーションを見せるが、音楽のセンスは今ひとつ。
漫画家とアシスタント
戦後に漫画家に転身したアンドロイドと、彼を慕うアシスタントの物語。
- アガート・B・ラーム
もともとは意思を持った一介の戦闘用アンドロイドで、学習プログラムの中に含まれていた漫画を模写して部隊の皆に見せることを得意としていた。その際に仲間から「自分で考えた漫画を出してみてはどうだ」と勧められていたが、当時は戦争中だったため叶えられずにいた。
やがて戦争が終わり、軍のコントロール下から離れた後に、戦争中に叶えられなかった「自分の漫画を描く」ことを思い立ち、街のとある区画にアトリエを設けて執筆活動を行っている。
旧型であるがゆえにパーツの交換もままならず、現在は漫画執筆に必要な「頭・胴体・右腕」だけを残して机に体を固定している。そのため、取材に出かける際にはアシスタントのクララの協力が欠かせない身となっている。
戦闘用アンドロイドであったために、現在でも銃の腕は衰えておらず、クララとのコンビネーションで悪漢を倒す活躍も見せている。
- クララ
アガートのアシスタントを務める、元傭兵の女性。
以前は何事にも感動しない無感情な性格で、ガントレットを装備した両拳で敵を殴る「壊し屋クララ」の異名で恐れられる傭兵だったが、ある仕事の際に敵が持っていたアガートの漫画を読んで心を揺り動かされ、彼に会うことを決意。アトリエまでの道に幾重にも仕掛けられた罠をかいくぐってアガートの元にたどり着き、アシスタントを志願して採用される。
アガートへの思慕は、尊敬を通り越して異性への想いに近いものになっており、彼のためであれば裸のモデルを務めることも厭わない覚悟があるが、アガートはそのたびに「そんな不純な動機であれば雇わない」と釘を刺している。
現在でも一線級の戦闘力を保持してはいるものの、現役時代よりは衰えているようで、お腹周りに贅肉がついてきたことや、走る際に簡単に息が上がってしまうことを気にしている。
メイドとお嬢様
とある大富豪の令嬢と、その家に仕えるメイドの物語。
- シゥ
大富豪の家に仕えるメイドの少女。
名前は「鼠」を意味する。元々は浮浪児であり、貧しさのあまり泥de棒に入ったところを捕らえられるが、彼女を気に入った「お嬢様」ことコーディリアの意向によりメイドとしての教育を受け、そのまま仕えることになった。
冷静沈着だが毒舌家でもあり、コーディリアが無茶な行動を取ると「お嬢様は時々大変バカでいらっしゃいます」などと容赦ないツッコミが飛ぶ。
自身を取り立ててくれたコーディリアに絶対の忠誠を誓っており、生身の人間でありながら銃弾から守るために盾となることも厭わず、ブラウと互角の格闘戦を演じられるほどの実力を持つ。
- コーディリア・ハーシェル
シゥが仕える家の当主。
その正体は若くして病死した「本物のコーディリア」が自身のコピーとして作り出したアンドロイドで、なり替わりである事を隠したまま仕事を続けている。
「どうせ生まれ変わるなら、超強い自分に生まれ変わりたいから」という意向で全身に過度な武装を組み込まれており、凄腕の使用人達全員より遥かに強いが、彼女らの忠誠心を尊重していることと正体を隠す目的のため、普段は自分からは戦おうとしない。
本物の妹オフィーリアからは「お姉さまの紛い物」という理由で激しく憎悪され度々刺客を差し向けられている一方、自身の性格もある理由からオリジナルと大きく違い、色んなエゴを押し付けられた己の境遇に辟易している。
- オフィーリア・ハーシェル
本物のコーディリアの妹で現在のアンドロイドであるコーディリアを紛い物として憎悪・敵視しており幾度無く刺客を送り込む。しかしシゥを始めとする使用人達の抵抗(時にはコーディリアの反撃)により失敗ばかりである。
怪異
人間でも機械でもない怪異たちの物語。
- 口裂け女
怪異達を統べる少女で、日々人気のない場所で人を襲い殺している"怪物"。
断片的な記憶からわかっていることは、かつてダリアの部隊に所属していた有望な隊員で戦死したはずだったが、ある人体実験によって蘇生し心身ともに壊れた改造人間になってしまった。
ブラウとレイニーの「人と機械の親子」に関心を抱いている他、オフィーリアからコーディリア抹殺の依頼を受ける。
- フットステップ
首から下をマントで覆った幼い少女。マントの下には常人の倍以上に長く伸びた腕と、背骨が変質した尾が隠されており、足がない。そのため、腕を足替わりにして「歩いて」いる。戦闘時にはその長く伸びた腕による変則的な動きと、尾の先端にある刃を武器に戦う。
口裂け女を深く慕う一方で、のっぺらぼうには全く懐かない。
- のっぺらぼう
元はありふれたチンピラの一人である男。仲間共々口裂け女に襲われるが、その時の態度を気に入られて「怪造」され、舎弟として第二の生を歩む羽目になった。
こうした経緯から怪異組の中では常識人で、彼女らの気ままな振る舞いに嘆息することも多い。
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