概要
『ヨハネによる福音書』とは、新約聖書のキリスト教の聖典である。
マルティン・ルターは本福音書とパウロ書簡を極めて高く評価しており、その影響は現在のプロテスタント各派に及んでいる。
構成
『ヨハネによる福音書』は本文が1章6節から始まっており、1章6節〜12章は洗礼者ヨハネの洗礼に始まるイエス・キリストの公生活を描き、後半部分である13章〜21章は弟子たちに個人的に語った言葉とイエスの処刑にいたる経緯、イエスの復活までが描かれている。
共観福音書と呼ばれる他の3つの福音書は、イエスの生涯について多く記され、重複記述が多く見られるが、『ヨハネによる福音書』は重複記述が少なく、イエスの言葉がより多く記述されている。
ヨハネはイエスの父なる神とのかかわりについて重点的に説明している。ヨハネは他の3つの福音書よりも鮮明に、神の子たるイエスの姿を、浮かびあがらせている。ヨハネの書くイエスの姿は父の愛するひとり子であり、神の子そのものである。また、キリストをあがない主として書く、あるいは神の霊である聖霊を助け主(ギリシア語でパラクレートス)として書く、キリスト教の特徴として愛を前面に押し出すなどの諸点によってキリスト教に大きな影響を与えることになる。
独自研究
他の福音書とは異なる独自性から、作者はヨハネではないという研究がある。なぜヨハネが福音書書記の名前に選ばれたかは不明。さらに一度書かれた筆者へまた手入れした形跡があるので、2人で書かれた可能性が高い。手紙は紀元前90年代頃に執筆したと想定されている(岩波聖書翻訳委員会の佐藤研先生による見解)。