概要
1991年11月15日に「テクモ」から発売されたファミコン用ゲーム。正式タイトルは『ラディア戦記 黎明編』、とあるように本来は続編も計画されていたものの、ゲームがヒットしなかったため「黎明編」のみで続編は制作されなかった。
記憶喪失の少年が過去を探して旅するうちに、世界に起こりつつある事件にかかわっていくというRPG。シームレスで発生する戦闘シーンや、仲間と会話できる会話システムがあり、ファミコンのRPGとしてはかなり深いストーリーなど当時としては斬新な作品であった。
後にナムコに移り『風のクロノア』等をプロデュースした吉沢秀雄が当時携わっている(そのせいか、『クロノア』にストーリーやキャラ名といった継承された点がある模様)。
また説明書内のキャライラストは、後に週刊少年ジャンプで『地獄戦士魔王』を連載する苅部誠が担当した(同氏は後にテクモがリリースした『アクタリオン』でも説明書用イラストを担当)。
2023年から2024年にかけて行われた任天堂のファミコン40周年記念企画の中の「ファミコン国民投票」『隠れた名作といえば?』では、ギリギリ20位にランクインしている。
ゲームシステムなど
アクションRPG形式(ジャンプはなし)であり、フィールドを移動中に敵が突然現れ(ランダムエンカウント)、その場で戦闘となり、プレイヤーキャラクターを十字ボタンで敵前に移動させてAボタンで攻撃する。仲間キャラクターは「さくせん」に基づいてオートで移動・攻撃をするが、AIが少々弱く、地形(崖など)に引っかかってまともに攻撃できない場合もある。また、飛行系の敵は地形を無視して移動するので、仲間が遠距離攻撃で倒してくれるの待つのみとなったりする上に、地形の問題で敵が遠すぎて近づけないと遠距離攻撃ですら当たらないこともある。
戦闘から退却する場合は、「にげる」ではなく、コマンド「しにまね」(選択すると「しにまねだっ!」とメッセージが表示され、プレイヤーキャラクターと仲間が倒れる)かアイテム「ほね」を使って敵が立ち去るのを待つ形になっている(敵が立ち去るとプレイヤーキャラクターは、勝利時と同じく剣を掲げるボーズを取るが、当然経験値やアイテムは入手できない)。
経験値は戦闘終了後ではなく、戦闘中の敵1体撃破毎に即時加算される。レベルアップも同時に行われてBGMに上書きしてレベルアップ効果音が流れるが、多数の敵との乱戦中や複数キャラクターがほぼ同時にレベルアップすると処理落ちして、操作が重くなったり、キャラクターが点滅したりする。
仲間の体力がゼロになると「きぜつ」する(戦闘中はアイテム「きつけぐすり」で復活させられるほか、戦闘終了後にHP1で自動復活する)。なお、仲間の状態に関わらず、プレイヤーキャラクターがHPゼロになるとゲームオーバー、セーブデータをロードしての再スタート。
魔法(主人公を含む一部キャラは使えない)は回数制かつ1回使用毎にインターバルがある。アイテム「まきもの」を使用することで新しい魔法を1つづつ覚えることができる(覚えられる魔法と順番は決まっており、まきものに種類はない)。
フィールドはエリア毎に切り替え(森、街、ダンジョンや建物内は1フロアなどの単位だが、広い場合はエリア内で分割されている所もある)があり、エリア内ではシームレスに移動できる。ただし、戦闘フィールドは画面サイズで予め細分化されており、画面内での戦闘となる(戦闘開始時にフィールド枠に合わせて画面がスライドする)。戦闘終了後は開始前地点に戻されるため、エンカウント率が高いダンジョンでは次の戦闘フィールドに移る前にエンカウントしてしまい、同じ場所で連戦となることもある。
ボスキャラクターは、会話時・イベント時は主人公らと同じサイズだが、戦闘開始時になぜか巨大化する(戦闘終了後にも会話等がある場合は元に戻る)。
ベッドを利用すると体力回復とセーブがセットで行われる(セーブスロットは3つから毎回選べるため、チェックポイント的利用が可能。一度セーブスロットの選択まで行ってしまうとどれかを選ばなければならず、キャンセルはできない)。民家や敵ダンジョン等にあるベッドでも寝れる。宿屋(INN)と称するベッドや個室が多数設置された建物もあるが、ゲームシステム上、受付を通す必要がなく、無料でベッドを利用できる。また、ベッドの利用がストーリー上必須の場面があり、その場合は起床直後、自動的にイベントが発生する。
宝箱を開けるとアイテムや金などを入手できるほか、建物内などにある棚や壺を探っても手に入ることがある(ダルスが「やったな!」と讃えて?くれる)。
ストーリーは一本道で、分岐や進行順序の入れ替え、あるいはサブイベントは無い。また、次の目的地に向かう場合、ストーリーの理解に加え、プレイヤー自身によるマッピングが必要となり、目的地の場所が分からずにウロウロしてしまうことも(一応フィールド移動中にコマンド「そうだん」で仲間からヒントはもらえるが、訪問済の場所は知っている前提のため、マッピングは必須)。
パーティはプレイヤーキャラクターと、仲間は最大4人までで、かつこれはストーリーに合わせて自動的に加入・離脱が行われ、常に4人以内に収められるようにストーリーが組まれているため、パーティメンバーを任意に選ぶことはできない(なお、バグを利用して、一部ストーリーをスキップし、そこで離脱するはずの仲間をそのままで、新しい仲間が加入するストーリーを進められる手段があるが、本来離脱済の仲間のデータに新しい仲間のデータが上書きされる形で結果的に整合性が取られるので、結局4人は超えない)。
ファストトラベル的な乗り物や魔法等は基本的に無い(ダンジョン脱出のアイテム・トラベルベル/魔法・エスケプはある)。
ショートカットルートが途中で1経路のみ開通するが、これは新拠点を顕にするためのストーリー上必須の追加ルートという感じである。
なお、後半で任意使用できる高速船は、地上徒歩移動で行き来できないエリア間を結ぶためのもの(当初は地上移動できていたが、ストーリー上、行き来ができなくなったエリアを含む)。
ほかにも飛空艇や飛行船にも乗れるが、ストーリー上の強制乗車(一方通行)で任意使用はできない。
主な地名
ゲーム中では高速船乗車時に一瞬しか表示されない世界地図(説明書に主要地名が記載された同様の地図が掲載されている)以外に地理を普遍的に確認できる道具やメニューは存在しないため、これら土地の位置関係を頭の中で記憶する必要がある。
ネタバレを含みます。
レムリアルと呼ばれている世界が舞台となっている。
- 知られざる村 エルファス:主人公の拠点となる村。ガルドの森の中にある閑静な村だが実は…
- エルファス城:村長ロロの先祖が建てた城。クライマックスでダンジョンとなる。
- ガルドの森:広い森で、西エリア(エルファス村の西)、東エリア(エルファス村の東〜ベルゼンド山の南)、北エリア(ベルゼンド山の北〜ゼノビア)に分かれている。
- ベルゼンド山:ガルドの森の中央にそびえている山。
- 木の精霊の町 ゼノビア:ガルドの森の北にある町。木の精霊ヒューポーを讃える。ネクルード公爵がネクルード城にて町を治めているが、サマラ教国の支配下に落ちたのと前後して公爵もおかしくなり、大切にしていた木を多数伐採しサマラに提供しており、ヒューポーが怒っているという。
- ネクルード城:ダンジョンとして2度に渡り訪れることになり、公爵の正体を明らかにする。
- セルフローネ草原:東でガルドの森北、西でブリューレ高地、北でレマ砂漠と接しており、各方面への分岐点となっている。
- ブリューレ高地:赤茶けた色が特徴的な高山地帯。
- 風そよぐ町 フバート:ブリューレ山地を抜けた先にある風車がたくさんある町。追い風族と向かい族がおり、本来追い風族は地上、向かい風族は地下で暮らしていたが、逆転してしまっている。
- 風の洞窟/風の神殿:フバートの地下に眠るダンジョン。風の翼が祀られており、サマラ教国がフバートで作り上げた飛行船を空に飛ばす機構として奪おうとする。
- 風そよぐ町 フバート:ブリューレ山地を抜けた先にある風車がたくさんある町。追い風族と向かい族がおり、本来追い風族は地上、向かい風族は地下で暮らしていたが、逆転してしまっている。
- 水の都 グアンディア:海を渡った次の大陸でブルディの森の北にある街。本来は「水の都」の通り名のように、水を湛えた美しい街だが、サマラ教国によって一部の住民を除いて全面的に氷漬けにされている。クレプス伯爵が街を治めている。
- 水の塔:グアンディアの北方に立つ塔。頂上にある聖なる水をサマラ教国の飛行船が補給するために狙った。
- クレプス伯爵の屋敷:水の塔の更に北にある。基本的には拠点として使用するが、一度だけダンジョン化する。
- 炎のたぎる町 バンドラ:火山帯にある火に囲まれた町だが、著しく崩壊しており、人の姿はない。
- ルジーバフムント宮殿:ルジー国王がいる。この町は宮殿内含めダンジョン扱い(エンカウントあり)。
- 炎の洞窟:バンドラとアギラの町を結ぶ洞窟
- アギラの町:アギラという生物の軍団が作った町。普通の人間も住んでいる。
- 炎の神殿:炎の石が祀られており、グアンディアの氷を溶かすために主人公たちが入手した直後に、ガディスに強奪されるが、実は…。
- 鉱山の町 ベルナード:鉱山街。建物は切り立った崖の斜面に建てられている。
- ベルナード鉱山:ダンジョン
- 地底の海 プリオシーヌ:鉄の心臓が祀られており、ガディスが狙っている。
- ベルナード鉱山:ダンジョン
- レマ砂漠:高レベルの大型鳥のモンスターなどがおり、序盤でセルフローネ草原から迷い込むと痛い目に遭う。
- 大地に根ざす町 サレジア:レマ砂漠の地下にひっそりと隠れている町。サレジアでのイベントをクリアするまで、建物の外はダンジョン扱い。
- 大地の神殿:大地のコンパスが祀られており、サマラ教国が狙っている。
- サマラ教国:レマ砂漠からルノス山地の洞窟を抜けた先にある宗教国。宗主ノヴァのやり方に反発するレジスタンスが暗躍している。
- サマラ神殿:迷路になっているダンジョン、
- アーク:レムリアルの中でもかなりの大国らしい。王女レフィスによれば義兄のガディスが国を乗っ取ったという。城の外観・城内のレフィスの部屋の描写はあるし、国外でハーマンを初めとしたアークの兵士は活動しているが、現地へ主人公たちが訪れる機会は1度しかなく、それもダンジョン直行のため、国内の直接的な描写はない。
- ラディアの塔(月の塔):レムリアルの中心部にある小島の大部分を占める塔。難関ダンジョンとなっている。
- 聖域:ラストダンジョン。某所に隠されていた。
主なキャラクター
ネタバレを含みます。
パーティメンバー
- 主人公(プレイヤーキャラクター):記憶喪失の剣士。名前は最初のイベントバトル終了後のイベントにて突然頭の中に浮かび上がってきた形となる。任意で決められ、デフォルト名は「ラムナ」。
- ダルス:魔法使い。サマラ教国出身。主人公をたまたま見つけ盗賊と思い込んで襲いかかろうとしたところにモンスターが現れ、共闘したことで態度を改め、自身が住んでいるエルファス村へ案内する。サマラ教国でノヴァが支配するようになり、反発した父親は処刑され、妹は行方不明になったことから、サマラを脱出し、ノヴァへの復讐の機会を探っている。
- バルー:ベルゼンド山の洞窟をアジトとする盗賊の頭。ミーナを誘拐した犯人として敵対しかけたが、実際には助けただけであり、義賊であることが判明し和解。後にネクルード城で仲間となる。ブーメラン状の飛び道具と魔法を使う。プバート出身。
- ハーマン:アークの近衛隊長。サレジア出身。セルフローネ草原で出会う。主人公と同じく剣術のみで戦うが、大地を操る術を持ち、自然災害や意図的な隠蔽で進行不能な場所を通れるようにしてくれる描写が作中で複数ある。
- サリア:サマラ教国出身の魔法使い。ノヴァに帯同していたが、耐えられなくなって逃げてきたとして、フバートで仲間になる。実は…
- レオリナ:グアンディア領主クレプス伯爵の娘。フィッツカラルド号乗船時(1回目)で主人公らのピンチを救い、グアンディアを元に戻すために一時的に仲間になったあと、平和になったグアンディアの港で働くようになる。
- ミデア:魔法使い。ダルスの妹で、ベルナード鉱山の奥で仲間となる。単独でノヴァの企みを調査していた。
主な味方キャラクター
- ロロ:エルファス村村長。主人公とダルスを自宅に居候させてくれる。
- ミーナ:ロロの身内のようだが、関係性は不明(妻?娘?)。
- レフィス:ある夜にベルゼンド山に墜落した飛行艇に登場していたアークの王女。
- ユラ:ゼノビアの宿屋で働いている。ラルフがネクルード城で捕まったとして、主人公らに助けを求める。
- ラルフ:旅人。ゼノビアの木が抜粋されて、ヒューポーが怒っているという話を聞き、正義感から、ネクルード城へ止めるよう直談判に行ったが、捕まってしまう。助けた後も、ネクルード城へ趣き、真実を追求していた。
- ルシカ:ハーマンの部下。主人公やハーマンらがゼノビアで伐採された木が運ばれた先のフバートを調査しに行っている間、エルファス城でレフィスを警護していたが、ネクルード公爵とサマラ教国の軍勢が現れ、抵抗したものの瀕死の状態となり、レフィスは拐われてしまい、その後に遅れて駆け付けたハーマンの腕の中で息を引き取った。
- アブロ:ベルナードに住む荒くれ者。宝物を手に入れたと触れ回っており、主人公らが探している鉄の心臓かもしれないと話を聞くために家に行くが、暴力的に追い出されてしまう。
- ジオ:サレジアの長老
- テト:サマラのレジスタンスで、ダルスの父親の遺志を継ぎ、クーデターを計画している。
主な敵キャラクター
- ガディス:アークを奪取し、更にはレムリアルをも我が物にしようとしている支配者。
- ノヴァ:サマラ教国の宗主で、ガディスに忠誠を誓っている。
- 夢使い:主人公と瓜二つの外見を持つ謎の人物。ラスボスっぽい立ち位置だったが、自身が生み出した怪物に飲み込まれて消滅してしまう。