概要
別冊少年チャンピオンにて連載されていた漫画。2015年12月号〜2019年1月号まで連載された。原作:岩明均、作画:室井大資。
2019年、シナリオライター(脚本家)と作画家の分業により制作された漫画を対象とする漫画賞である、第3回さいとう・たかを賞を受賞。
原作の岩明は2001年から2002年ごろからこの作品を構想をはじめ、『ヒストリエ』の連載を抱えながら2013年暮れまでの約12年間の時間をかけてシナリオを作成した。その間に、好きではあるが専門分野でない歴史の知識を地道に重ねたという。
漫画担当の室井にとっては歴史物は初めてで、「連載開始時は、戦国武将は5人くらいしか言えなかった」と単行本2巻の巻末コメントで語っている。
岩明は当初、「負け組にいたけどそれなりに出世した人物」と、それを調べていたら出てきた「負け組にいたけどもっと出世した人物」を主人公として考えていたが、何か違うと考えた結果、両者の間に位置する「実在する女性」に自由度を与えた上で、主人公・レイリを仮託した。当初主人公として考えていた2人は「脇役として残した」と、単行本1巻の巻末コメントで語っている。
登場人物
レイリ/零里
11歳の時に長篠の戦いで敗れた武田兵を追う首狩りの中で一家が襲撃を受け、父・母・弟がレイリを逃がすために盾となり死亡する。この際、長篠の敗戦で逃亡中であった岡部丹波に命を救われ、孤児として丹波の下で育つ。
家族がいないことでやや自暴自棄になっており、「どうせ死ぬなら戦ってから死にたい」と死にたがりの行動を見せる。見た目が武田信勝ソックリなことで、信勝の影武者になる。
岡部元信/岡部丹波守
レイリを拾った男。元今川家の家臣であったが、主家の滅亡後は武田家臣となる。今川時代に桶狭間の合戦後、自分の守る城と引き換えに信長から今川義元の首の返却を求めたエピソードが家康や元岡部隊の雑兵であったレイリの父に知れ渡っており、内外問わず文武両道の武将として評価は高い。長篠の戦いで武田家が敗戦し、その逃走中にレイリの一家が住む家に立ち寄るが、これは間接的にレイリ一家が惨殺されるきっかけとなってしまう。追手が気になり引き返したところで惨殺を知り、生き残っていたレイリを救出して養育することとなる。誰かのために死ぬことを目標として剣技に明け暮れるレイリの危うさを苦慮している。
武田信勝
勝頼の子。祖父・信玄によって勝頼を抜かし後継として指名された。普段は自惚れ屋気質で自分が美少年であり、才覚も信玄をしのぐ天才。しかし、自身の影武者が死ぬと動揺して泣いたり、信長への策を求められた時には「勝てるわけがない」と年相応な面を見せることもある。
武田勝頼
信勝の父で武田家当主。「呪われた子」として武田家中で疎まれている事もあり、父・武田信玄から後継者に選ばれた信勝に対してコンプレックスを抱いている、頼りない姿で描かれる。これに関して岩明はあとがきで「近年評価を見直す声があるが、自身で改めて検討した末に従来(否定的評価)のままで良いと判断した」と述べている。
織田信長
『勝頼の未熟さを、天下に嗤ってやるのじゃ!!』
本作のラスボス。血筋的には信勝の大叔父(信勝の母が信長の養女)であるが、まったく助けてくれなそうな態度。とにかく信長のサイコパスな面が強調されており、顔が怖すぎる。
徳川家康
信長の同盟相手。高天神城攻めに対し、4年も時間を掛けてジックリと高天神城を潰していった。