「命を大事にしない奴は、ぶッ殺してやる。」
「……おやァ? 怪我してるねェ。治してやろうか?」
プロフィール
概要
武装探偵社の社員で専属医。
一人称は「妾(アタシ)」。
荒事が領分で怪我も少なくない社員達の治療を一手に担っている。
ボブカットの髪型に蝶の髪飾りを着け、明治・大正期に流行したような所謂「ハイカラ」な服装に身を包んだ女性。物腰はとても落ち着いているようだが、中身は勝ち気な性格。怒りに触れればはっきりと物を言い、時には脅しに近い罵詈雑言が飛び出すこともある。
しかし面倒見が良く、(彼女の“治療”は探偵社職員たちから恐れられてはいるが)その治療の腕は確か。口調や立ち振る舞いからも頼りがいのある、男女同権の世に相応しい女性。
「嫌いなもの」にある通り、男尊女卑に基づいた言動をする者を嫌悪する。買出しの荷持ちに連れてきた敦が檸檬を落としてしまい、それを初老の男性が踏んづけて転んだためフォローしたところ、男性は服の埃を払った与謝野を蹴飛ばし「女の癖に」と罵ったため、伏字をしなければならないほどの罵詈雑言を発した。
また、医者である彼女は「死が究極の科学」と言った梶井基次郎にも「命を大事にしない奴はぶッ殺してやる」と怒りを露にしている。
三社戦争の時は、探偵社の隠れ家を訪ねてきた中也と対峙。その後は組合のポオが仕掛けてきた推理遊戯に、乱歩と共に臨んだ。
異能力
能力名 | 君死給勿 |
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解説 | あらゆる外傷を治癒させる。 |
元ネタ | 与謝野晶子の詩『君死にたまふことなかれ』 |
梶井基次郎曰く、治癒能力は極めて稀少らしい。
その分条件も厳しいようで瀕死の重傷しか治せず、程々の怪我を治そうと思ったらまず瀕死状態にしなくてはならない。
実際に5話でも谷崎とその妹ナオミに使用していたらしく、救護室で目を覚ました敦の隣の部屋からは断末魔のような声が響き渡っていた。
その後7話で復活を果たした谷崎は、国木田の「何度解体された?」という問いかけに「……四回」と答えている。
8話にて、赤十字のマークが描かれた彼女の救護鞄から大振りの鉈を取り出しており、おそらくこの鉈などで解体すると思われる。
そしてその鉈は、攻撃時にも使われるようである。
関連イラスト
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与謝野晶子 史実の本人
過去(コミックス16巻ネタバレ注意)
【当時11歳だった与謝野】
14年前の大戦末期、基地空母「燕騎士」にて与謝野は森鴎外の下で軍医委託生として働いていた。そんな中、金属を操る異能を持つ一人の兵士から「天使」と称され、蝶の髪飾りをプレゼントされる。そして、彼は自身の異能で大人の手の平程度の鉄板を生成。
「……この『正』の文字が僕は好きでね」
「これが君の正しさだ」
「君が居てくれて良かった」
しかし、鴎外は怪我をした兵士達を『君死給勿』で治療しては戦線に戻らせるという方法を採り、彼女はほぼ道具として酷使され、彼女がいる限り軍に「負け 逃げる」という選択は訪れなかった。いや、訪れるハズがなかったからだ。
彼女を「天使」と呼びトレードマークである蝶の髪飾りをくれた上等兵も、死ぬまで戦わされることに限界を感じ、与謝野に「君は正し過ぎる」とメモを残し自殺。その後彼女の精神はボロボロになり、「基地を沈めようと船底に爆薬を仕掛けて逮捕された」らしい。
戦後も彼女は施設に隔離され、戦争終結から3年後に鴎外が「もう一度君の異能が必要だ」と迎えに来る。
当時鴎外と同盟を組んでいた福沢が「貴君の論理には『心』が無い」と彼女を再び戦地に戻すことに反対。ここで彼らは敵対する事態となったのだった。
鴎外と福沢が戦っている間に、彼女を連れ出したのは乱歩だった。
「妾の周りでは命の値段が安くなる……これ以上生きている訳には……」
と云う彼女に対し、彼は「はあ~莫迦らしい!」とバッサリ。
「治癒能力が凄いから? 違うね 僕の推理力が世界一!
仮に探偵社でも君の出番は無い! 僕が居れば全部解決するからね!」
訝しげに乱歩を見る与謝野。
「疑うなら証拠を見せようか?」
彼が取り出したのは、失くしていた蝶の髪飾りだった。
「これのことは誰にも話していないのに」と驚き彼女はこう問う。
「なら妾は……これから如何すればいいの……?」
「この世には一箇所だけ 君を必要としない場所がある。
君は探偵社に入れ」
「異能が欲しいんじゃない 欲しいのはその『優しさ』だ。
「能力なんて無くたって良い その悲しみに価値があるんだよ」
こうして彼女は探偵社に入ることになったのだった。
そして、現在……