概要
東方Projectに登場する比那名居天子のスペルカードの一つで、天子が『東方緋想天』に初登場した際に使用した。
天子が上空高くジャンプし、要石に乗った状態で急降下、要石を大地に叩きつけると同時に柱状に地面を隆起させて攻撃するという天子の「大地を操る程度の能力」を視覚的にもダイレクトに表現するものの一つである。
「乾坤」とはここでは「天と地」を指すものであり、自身の住まう天界と「大地を操る程度の能力」、それぞれ<天符>と<地符>あるいは<天地>そのものを頭に持つスペルカード、あるいは地子から天子への改名等「天」と「地」の双方の要素がキャラクター性にも含まれている天子らしい宣言でもあるといえるだろう。
本スペルカードに名称・性質・アクションの各要素が似たものとして同じく天子のスペルカードである<天地「世界を見下ろす遥かなる大地よ」>があり、こちらでは要石ではなく大地に緋想の剣を突き刺して地面を隆起させている。隆起に至る流れや隆起の形状などは異なるが、天子がアイテムを介しつつ「大地を操る」という点で共通している。
ただし本スペルカードにおいて大地の「荒々しさ」は目に見えて表現されているがその「母性」については視覚的に表現されていない。
重力によって引き込まれる様、あるいは局所的に巨大なアクションを起こしたとしてもなお大地全土の大勢を揺るがすには及ばないといった不動の包容力などが語られているのだろうか。
それを最も良く知るのはやはり天地の両属性に造詣を持つ天子なのであろう。
また同様のコンセプトのスペルカードにして本スペルカードの冒頭句である「乾坤」もその名に含むものとして、天子が『東方憑依華』に登場した際に披露した<地符「一撃振乾坤」>がある。
同スペルカードでは発動直後、要石に乗った天子が相手の頭上に飛び上がってそのまま要石付きで相手を下方遥かに蹴り落とし、直後に画面を覆い尽くす複数の岩柱を画面下方から勢いよくせりあがらせる。せりあがるものの一つには天子が乗る。
飛び上がった後には天子の一枚絵によるカットインも入る。
『憑依華』ではステージとして天界が登場しており、対戦モードなどの機会でこの地で<地符「一撃振乾坤」>を使用することで『緋想天』最終盤にみる<乾坤「荒々しくも母なる大地よ」>に近似した弾幕シチュエーションを再現することも出来る。
「乾坤」
「乾坤」とは、一般的用法としても先述のように「天と地」という二つの対照的な概念から成る語である。
「乾」には「かわく」、「空にする」といった用法があるが、その場合の読み方は主に「かん」となる。例えば「乾燥(かんそう)」「乾杯(かんぱい)」といったケースである。
一方ここでの「乾」の意味するところを表す読みは「けん」であり、この場合は先述のように「天」などを意味するものとなる。
「乾」と「坤」の両者は一種の対概念であり、「乾」には「天」の他君主や男性といった意味もあり、「坤」には「地」の他皇后や女性といった意味もある。
両者が並び立つ語として使用されるケースとしては、例えば天や君主の「徳」を指す語には「乾徳」(けんとく)、大地や皇后の「徳」を指す語には「坤徳」(こんとく)などのものがある。「乾徳」には「常に前進しようとする立派な精神」の意味、「坤徳」には「大地が万物を生育する力」「柔順で物を成長させる徳」という意味もそれぞれあり、各々がアクティブとフォローにおける肯定的な性質を示すものとなっている。
この他「乾坤」の語を含む熟語としては四字熟語に「乾坤一擲」があり、同語における「乾坤」は「天と地」の追概念的意味合いで用いられている。ここに「一擲」が重なることで特別な意味へと至るのである。
「乾坤一擲」の詳細は「乾坤一擲」記事を参照。
この他東方Projectでは「乾坤」の要素は本スペルカードの他にも八坂神奈子の能力である「乾を創造する程度の能力」、洩矢諏訪子の能力である「坤を創造する程度の能力」にそれぞれ登場している。
霧雨魔理沙による考察
『グリモワールオブマリサ』において、霧雨魔理沙が本スペルカードとこれにまつわる天子の具体的なアクションなどを記録している。
要石が地面にたたきつけられた後に地面が隆起する光景を魔理沙は「 箪笥の引き出しみたいなもんだろう 」と語っており、真似出来るだろうか、と自問している。
特定の材質の木材を使用し、精密な設計と組み立てによってつくられた箪笥などには内部構造が密であるために一度引いた棚を閉める際に空気が吸い込まれつつ圧縮されて内部に向かい、内部で流動した空気圧によってまったく別の棚が内側から押されてゆるやかに飛び出してくるという性質をもつものもある。
僅かな時間差で、同期しているかのごとく稼働する箪笥の棚の動きは、本スペルカードで表現される天子と大地との同期のタイムラグなどとも類似するものがある。
魔理沙が連想したこの光景を、良い仕立ての桐箪笥などで是非お試しあれ。
評価
本スペルカードについて魔理沙は欄外の「 参考度 」欄での評価の他先述のような自問の後にも「 真似出来そうにない 」と感想している。ここでは同時に何故真似できないのかについても語られている。