概要
「放課後探偵部へようこそ」のエピソードの一つ。休止明けの長編一作目である。
レギュラーキャラの北谷勝馬の幼馴染少女が自殺未遂をし、その原因となった人間が次々と襲われ、勝馬にその容疑がかかるというエピソードである。
誹謗中傷ビジネスを題材に陰惨な場面が多くみられる。
あらすじ
北谷勝馬の中学時代の親友の富田ゆかりが自宅で自殺未遂。勝馬に助けられる。彼女はバイト先の上司の上本真司にレイプされ、それが理由でネットでインフルエンサーの空野タケシの標的にされ、誹謗中傷を受けていた。さらに彼女が中学時代いじめをかばっていた白馬拓斗が、人気者になりたいという理由でゆかりを裏切り、彼女のデマ情報を空野のチャンネルで流していた。
その後、白馬、上本を無罪にした弁護士仲木戸丈がピエロの格好の謎の人物に襲撃され負傷する。さらに白馬が再度襲撃され、その現場から勝馬が刃物を持って逃走する。一方で勝馬の中学時代の舎弟の不良少女阿保桜も怪しい動きを見せていた。
勝馬が手配されるという状況の中、女子高校生探偵島都はピエロの格好の連続襲撃者の恐るべき目的に気が付く。果たして都はピエロの恐るべき最終目的を止められるのか。
ゲストキャラ
- 阿保桜:勝馬の中学時代の友人で当時の不良仲間。金髪の黒ギャル。気性が激しいが友達思いの女の子。
- 富田ゆかり:勝馬、桜の友人の少女。正義感の強い美少女だったが、バイト先のレイプとそれが無罪にされたこと、空野タケシを中心とする誹謗中傷に追い詰められ、自殺未遂の末措置入院。
- 白馬拓斗:富田ゆかりに中学校時代のいじめをかばって貰った眼鏡デブの少年。だがゆかりが誹謗中傷で自殺未遂をしてからは、彼女を裏切り、デマ情報を流すことで多数派の仲間に入れてもらおうとする。空野アノンでは人気キャラ。第一の被害者でネット配信中にピエロの格好の人物に襲われるが助かる。
- 仲木戸丈:35歳の弁護士。世渡りが下手で国選弁護士ばかりやってホームレスになっている。富田ゆかりの事件で加害者を無罪にした。河川敷で銃撃され、第二の被害者となるが命は助かる。
- 富田秋江:富田ゆかりの母親。
- 上本真司:現在は高級中華料理店店長。富田ゆかりのバイト先の上司で彼女をレイプする。レイプキットを使用し証拠もあるにも関わらず無罪となり、クラファンで大金まで手にする。
- 空野タケシ:誹謗中傷ビジネスの中心人物で「空アノン」という信者を抱えて、レイプ被害者の誹謗中傷を行っている。
- 成田国男:空野の腹心。
- 沢良宜:検察幹部。
- 友部:警察幹部。
- 吉田参事官:友部の部下で空アノン。検察官や犯罪被害者の個人情報を流していた。
関連項目
- 放課後探偵部へようこそ
- 今ここにいる女装者:次のカオス回エピソード
事件の真相(ネタバレ注意)
この事件の犯人は弁護士の仲木戸丈と白馬拓斗自身がお互いをピエロの姿で襲うという狂言を行ったうえで、警察に空野タケシの誕生会を警備させ、密室状態の誕生会において、空野の誕生日を祝うために集まった「空アノン」全員を青酸ガスで抹殺という恐ろしい計画だった。
仲木戸は自分が上本を無罪にしたことで誹謗中傷ビジネスが成熟し、1人の少女の人生が破壊されたことに罪悪感を抱いており、白馬拓斗は富田ゆかりを誹謗中傷ビジネスといういじめから守るために、自らを犠牲にしようとした。
当初は白馬は富田ゆかりのネットデマに反論しようとしたが、自分がいじめられた経験から、「加害者たちにとっては真実なんてどうでもいい、真実では被害者であるゆかりを救えない」、そして「ゆかりをいじめから救うにはいじめ加害者連中を抹殺するしかない」という結論に至った。
そのために人を殺すこと、デマでゆかりを傷つけること、自分も死ぬことを決意した白馬は、抹殺計画を立て、完遂一歩手前まで進めた。
もちろん「自分もいじめの対象になることを恐れてゆかりの誹謗中傷に加担した卑劣な人間」というのも全て演技である。
しかし空野の高級マンションの部屋に島都がおり、白馬自身は無関係な人間までも巻き込んで殺す覚悟はしていなかったため、結局実行できずに都にスイッチを奪われた。
白馬拓斗逮捕後、勝馬は精神病院にいるゆかりに白馬逮捕を知らせに行くのだが、その場で何も言えず号泣するところで物語は終わる。
この事件は死者こそ出なかったが、空野タケシの誹謗中傷も止められないまま勝馬の幼馴染が逮捕されるという非常に後味の悪い事件となった。