概要
表記揺れとして「体操着」や「体育着」などとも。
その名が示す通り、体操や体育を行う事に特化したスポーツウェアである。
とは言え別段特殊な機能を備えているわけではなく、むしろ「特長がないのが特徴」といったところで、あらゆる運動を一通り行える事を主眼に置いた最大公約数的なデザインがなされている物が一般的である。
そのため厳密には「スポーツウェア」の一種である「トレーニングウェア」の派生形と位置付けられており、本格的な試合等を行う場合は専用のウェアが別に用意される事も珍しくない。
基本的に学校ないしは学年単位で発注されるもので、スポーツウェアでありながら制服の役割を兼ねるという点も他のウェアとは一線を画する。
学校の方針によっても扱いが変わってくるが、スポーツと全く関係の無い場面でまとまった数が見られるという事も稀によくある。
この手の服装の例に漏れず、そのルーツは近代軍事組織にある。
そもそも人類が集団で「体操」や「体育」といった行動を取り始めたのが近代に入って「富国強兵」的な思想が生まれてからの事であり、当時は厳ついおっさん達が大真面目にこうした事を考え、取り組んでいたわけである。
特に力を入れていたのがナチスドイツであると言われ、「ヒトラーユーゲント」などを通して子供達にも自分達の理想を積極的に広めていた。その過程で「体操服」も広まったという経緯になっている。
もっとも、ナチス自体の破滅によって欧米、特に戦後「西側」に属した国々での広まりは頭打ちになる。
体育はまだしも、そのために大人が画一的な服装を用意して右へ倣えさせる事は自由主義に反するとされ、むしろ子供達が自発的に「動きやすい服装」を考え、選び取る事が「教育」であると捉えられるようになった。
その遺志を受け継ぐ形になったのが、日本を始めとしたアジア諸国である。
欧米に比べて集団主義的な気質が強い事、ナチスから直接的な被害を受けておらず嫌悪感が少ない事、近代化の進展が遅く戦後にまでずれ込んだ事など様々な要因が挙げられているが、ともあれ、これらの地域では戦後になって「体育」や「体操服」が充実してゆくのである。
特に日本は見た目にも独特な進化を遂げ、男子は後の女性向けホットパンツと同等にまで短くなった「短パン」、女子は同じく後の男性向けビキニパンツと同等にまで短くなった「ブルマ」というある種倒錯的なボトムスが全国的に広まり、更に小学生は源平合戦に由来するとも言われる「赤白帽」を組み合わせるスタイルが定番となった。
冬服も、シルエットこそ一般的なジャージと変わらないものの、「芋」という日本語がぴったりのなんとも言えないデザインの物が多数を占めている。
当時の感覚からしても疑問符が付くデザインではあったようだが、この国の黄金時代を彩ってきた服装群として特別な感情を抱く日本人は、決して少なくない。
現代日本の動向
とは言え、こうした進化は体操服本来の役割とは矛盾すらきたすものであり、特にブルマは性産業の発達に比例してそういう目的のコスチュームと看做す風潮が年々強まった事から、次第に見直しが図られるようになる。
スパッツやショートパンツといった試行錯誤を経て、最終的には同じくそのような形状である合理的理由を失っていた「短パン」共々、ハーフパンツに一本化する流れが主流派を占めるに至った。
合わせて一般のスポーツウェアの進化を反映したデザインに刷新する例も多く見られ、日本における「体育」や「体操服」のイメージは一変した。
これがちょうど昭和から平成に、バブル期から氷河期に移行する時期と重なった事から、日本人同士ですらその認識に多大なジェネレーションギャップが生じている。
特にブルマ(場合によっては「短パン」も)を性的な目線で見ていた層の喪失感は大きく、独自に延命を図る動きが相次いだ。それは「懐古趣味」の一言で済ます事ができないほど強く熱いもので、同様の変革の起きた「スク水」共々、今なお現役の物を圧倒して平行世界に等しい独自の世界観を形成し続けている。
ハーフパンツで育った世代も、卒業すればいずれ子供達を同じような目線で見るようになるとも言われたが、平成一杯をかけてもそのような現象はついに表面化しなかった。
初期の着用者はとっくに自分達が子供を設ける年齢になっており、どうやらこのまま穏やかに世代交代が進んでゆきそうな情勢である。あるいは今後何かの拍子にハーフパンツが一掃される出来事でも起これば、彼らも熱狂し始める時が来るのかもしれないが。
もちろん何事にも例外はあり、現代的な体操服に性的な要素を見出す向きも皆無ではない。
ただしその場合も、昭和期とは着眼点が異なる傾向にある。
昭和期の魅力は、その形状による露出の多さやボディラインの強調が主であり、そこに美少女や美少年がそのような格好をしているという事自体の「ダサかわいい」要素が加わってくる。顔すら多少「芋」なくらいの方が萌えるという意見さえ散見される。
対する現代は、だぼっとした着こなしによる空気感(匂いフェチ等の物理的な意味を込める意見もあるが)や、その隙間からのチラリズムなど、抽象的・間接的なフェティシズムが主となる。
また、同世代的な感覚をその後も持ち続けるようで、ある程度小綺麗に纏まっている方が評価されやすい。
これも時代の流れか。
関連イラスト
アジアを中心に諸外国からの投稿も増加しているが、こと体操服に対する感覚についてはほとんど共有されていないようで、日本以外の物を見かける機会は少ない。
日本に精通した現地のオタクが、(主に昭和期の)日本の物を描く方がまだ多いくらいである。
関連タグ
スポーツウェア トレーニングウェア 制服 体操 体育
短パン ブルマ スパッツ ハーフパンツ ジャージ 芋ジャージ
襟付き体操服 長袖体操服 ショートパンツ体操着 シャツ入れ
※特にブルマに関しては、半ばコスプレと化している事もあり、単に「体操服」とせず「ブルマ」タグを明記する方が好ましいとされる。