「そんな事言ったって、今みたいな世の中じゃ親よりお金の方が大事だもんな!」
この平然とした発言の約2分後に・・・
「そいつは頼りになりそうな動物だね、父ちゃん!」
このせせら笑いの約1分後に・・・
そして・・・
「50万かな・・・100万かな! 200万かなぁ~~」
この笑い崩れた約20秒後にその頼りになりそうな動物に変身し始めた・・・
演 辻沢敏
概要
第15話『カネゴンの繭』の主人公の少年。
とにかくお金にがめつい小学6年生のガキ大将の少年で、お使いをはじめ、どんな楽な仕事でも駄賃をもらわないと絶対に言うことを聞かない程で、貯金箱に貯めた金を深夜に数えては「たまった、たまった・・・へっへへへ・・・」と笑うだけではなく、大嫌いな算数の勉強時にもお金に関する計算は計算機並みと皮肉られている程のがめつい少年である。
頭に亀の甲羅を被り、半ズボンに素足履きというガキ大将スタイルに、目を閉じながら歯茎までも見せるニャッとした「金が好きなんだ」というイメージの薄汚い笑顔が個性的かつ印象的。
そんなある日、振ると小銭の音がする不思議な繭に吸い込まれてカネゴンに変身してしまい、友人達を巻き込んで騒動を起こしていく。
不思議な繭を拾った金男
カラリと晴れた7月のある日の午後、子供達は工事現場の鬼監督であるヒゲオヤジこと中松の目を盗みながら工事現場の造成地を遊び場にしていた。人並み以上にお金に執着する小学生の少年である加根田金男は、今日も子供達が集まって開いていた造成地でのバザー会場で友達が落とした小銭の音を嗅ぎ付けて素早く拾ってしまった。
金男はそのバザー会場のガラクタの中に振るとお金の音のする不思議な繭を発見。
拾った喜び勇んで友達と一緒に造成地を行進していたその時!中松と部下がブルドーザーと共に現れ、あわてふためく子供達のバザー会場を踏み潰していった。子供達はめいめい口汚くヒゲオヤジを罵った。それは金男にとっても同様であった・・・
快獣への変身という生命誕生のドラマ
その日の夜、金男の両親は宿題を終えた金男に対して、行き過ぎたお金への執着心を案じ説教し始めたが、
「そんな事言ったって、今みたいな世の中じゃ親よりお金の方が大事だもんな!」
「そんな罰当たりな事言ってるとお前、お金亡者のカネゴンになっちゃうよ!」
「カネゴン?カネゴンって何さ?」
「ほら、食べてすぐ寝ると牛になるっていうだろう?」
「ああ、お金持ちの牛になるの!」
「馬鹿言うな!人の落としたお金を黙って拾ったりすると、なるものだ」
「ぼく、そんなこと知らないよ」
「聞いて驚くなよ、カネゴンてのはお前、頭は金入れ、体は火星人、目はお金の方へ向いてピョコーンと2本に飛び出し、口は財布のジッパーなら体は銅貨の銅みたいに赤光りする怪物でゴジラみたいな尻尾にはギザまで付いてんだぞ・・・!」
「そいつは頼りになりそうな動物だね、父ちゃん!」
「笑い事ではありません!カネゴンはな、ご飯の代わりにお金をボリボリ食べるんだから!」
とこのままだとお金を食べるカネゴンになってしまうと金男を諭すが、金男は全く聞く耳を持たず、説教の途中で母親の梨をつまみ食いしようとする始末であった。その直後、
「あっ!? ぼくのお金が!」
と金男の部屋からお金の音がして唖然する両親を背に、金男が早足で自分の部屋に戻ると繭は高さ2メートル、長さ3メートル程に膨張していた。
「ワーイ! 大きくなった!大きくなったぞ!大きくなった!大きくなったぞッ! オウッ!!」
膨張した繭に踊り喜びながら興奮した金男は繭に突っ込むと中にはザクザクお金がつまっていた。
「50万かな・・・100万かな! 200万かなぁ~~」
興奮のあまり笑い崩れた金男は掴んだお金を半ズボンのポケットにしまう込むと、繭の中のお金を全て拾おうと意気込みで両手にツバをかけながら繭の割れ目に上半身を入れ込んだ。その時・・・
「あっ、お金、お金、ちょっと!引っぱんないでくれよ!よ、よ、よせったら! 引っぱんないでくれったら!! あっ、あっ! あーーっ!! あっ!!!」
金男は悲鳴を上げながら繭に吸い込まれ、金男の部屋の壁が溶けていくと同時に繭は幻想的空間に突入した。
幻想的な空間で興奮と恐怖が頂点に達した金男少年は大きな刺激を受けて身体に異変を感じ、変身を開始した。
金男の身体や内臓と細胞が変異して行き、やがて煙みたいな不思議な気体は空間を変えて行き、身体全体からの渾身の踏ん張りと同時に新たな生命が生まれるが如く金男の身体は完全に変化し終えた。
翌朝、日の出と同時に繭からカネゴンが誕生した。
- この変身シーンは不気味に繰り返すピアノとシンバルの音響(金男の精神の抽象化)、鳴り響く硬貨の音(金男の変身していく苦痛の声の抽象化で、よく聞くと金男の悲鳴やカネゴン誕生時のあくびと同時に音量が大きくなる)や、バラバラになるモビール(変身していく金男の肉体の抽象化)等といった前衛的・暗示的な演出と相まって普通に恐怖を感じると同時に、円谷プロ三大快獣(ブースカ・カネゴン・ピグモン)の一角であるカネゴンの誕生とユーモラス溢れる快獣の誕生という生命のドラマをも感じさせる(カネゴンがいなければブースカは生まれなかった)。
変身し終えてあくびしながら金男の部屋から出てきたカネゴンの姿を見た両親は大慌て。慌てふためく両親を見て、金男は鏡に映った変わり果てた自分の姿を見た。
「ああっ!どうしょう!! ぼくカネゴンになっちったぁーー!!!」
飛び出た目からボロボロと涙を流しながら叫んだがもう後の祭りであった。
カネゴンの大騒動
カネゴンは家を出て途方に暮れ、友人のアキラの家に呆れられながらも一泊された翌日、金男の仲間たちは造成地に集まり、お金を食べなければ生きていけなくなってしまったカネゴンにお金を食べさせる。カネゴンはお金を食べると左胸のメーターが上がるがこのメーターが0になると餓死してしまうのでカネゴンは際限なくお金を食べてしまう。子供の持っている額のお金だけではカネゴンの空腹を満たすには至らず、神頼みとばかりに祈祷師の元を訪ねる。そのお告げによると、金男を元の姿に戻すには、子供達が最も恐れているヒゲオヤジを逆さにせよ!というのだ。ショックを受ける子供達。それはカネゴンがお告げの結果を聞こうとした直後、子供の一人が怒って
「うるせえな!少しだまってろ!!」
とカネゴンの唇のジッパーを閉める程であった・・・
これはあてにはならないと、改めてカネゴンの処遇を思案する子供たち。
「これ以上は無理だよな、人間にはみんな我慢の限界ってのがあるし」
「俺、来月の小遣い前借りしちゃったんだ」
「神様もインチキだし仕方ないな、いよいよ決心するか!」
「いくらで売れるかな?」
「二千円かな、三千円かな!?」
「サーカスに売るんだろ?」
「どこだって買うよな、珍しい動物だもん」
「でも、友達だぜ?」
「昔はな!」
「だったらよ、大学の研究所はどうだろう?科学の進歩にも役立つしさ!」
大学の研究所にカネゴンを託そうなどといった話を聞いて、身の危険を感じたカネゴンは目から怒りの煙を出しながら
「冗談じゃねーやー!」
と子供たちの元を離れる事に。お金を求めて銀行に向かったカネゴンだったが銀行員たちが警察に通報。銀行の玄関で腹がすいていたカネゴンは思わず喘ぎ声を出しながらお金を貪り食ってしまい、その拍子に大量のお金を落としてしまう。警察官による面通しのために両親が連れてこられるが、カネゴンは両親が落ちていたお金を拾っている隙に友達に連れ出されて何とか逃げ出す。
ヒゲオヤジとの対決
カネゴンを助けた子供たちは、造成地でカネゴンに芸を覚えさせてお金を稼ごうと思い立つが、金欠による空腹で力の出ないカネゴンは芸に身が入らず堂々巡りだった。
この時、 ブルドーザーに乗ったヒゲオヤジと部下が襲来。すると、日頃からヒゲオヤジに頭にきていたアキラは対決を宣言し、子供たちはヒゲオヤジに向かっていく。
カネゴンも後を追いかけるが、地面にあいていた大きな穴にはまって動けなくなってしまう。
子供たちはブルドーザーにガラクタを結びつけ、怒ったヒゲオヤジと部下はブルドーザーから降りて子供たちを追いかける。
穴にはまって袋を被っていたカネゴンを見つけた二人は引っ張り出すが、子供が隠れているものと思っていたヒゲオヤジと部下はカネゴンを見てびっくり。
部下は穴に落ち、ヒゲオヤジは慌てて逃げ出すが、その時カネゴンの尻尾にヘビが噛みついてしまい、それを取ってもらおうと追いかける。
「ヒゲのおじさんちょっと待ってくれよ、ヘビ取ってくれよぉ~!」
「冗談じゃない、あんな化け物に捕まってたまるか!」
- このカネゴンが追いかけるシーンは一見ユーモラスなシーンに見えるが、金男の性格が変身の影響で変わった事が判るシーンでもあり、変身前のバザーが潰されて「ちくしょう! ヒゲオヤジおぼえてろっ!!」とガキ大将らしく強気で悔しがるが(この直後、左手の拾った直後の繭を降っては鳴り響いたお金の音を聞いて満面の笑みを浮かべる)、変身後は「ヒゲのおじさんまってくれよぉ~」とほとんど別人のように弱気な性格になっており、そのギャップに笑ってしまう程である。
ヒゲオヤジはブルドーザーに戻って逃げようとするが、慌てている事といつも部下に操作させている影響でうまく動かせない。
やっとエンジンがかかって動き出したが、ブルドーザーは回転して後ろに下がり、そのまま崖下に落っこちてしまった。
子供たちがブルドーザーを見に行ってみると、そこにはヒゲオヤジの姿がない。その時、崖の上からカネゴンの勝ち誇った姿があった・・・
「ワーイ、やっつけたぞ!」
すると、どこからかヒゲオヤジの助けを求める声が聞こえた。
声のする方を子供たちが見ると、そこには崖に引っ掛かって逆さになっているヒゲオヤジがいた。
「助けてくれ~!」
「あっ!ヒゲオヤジが逆さになってる!」
「ほんとだ!」
すると、突然バァーーン!!と威勢のいい轟音と共に天敵であるヒゲオヤジをやっつけた興奮するかの如く尻から火が吹いてカネゴンがロケットのように崖の上から空に打ち上がった。
シューーッと軽快なロケット音を上げながら上昇したカネゴンは上空でパラシュートが開いた。
「あっ、パラシュートが開いた!」
パラシュートと共に人影が降りてきた。地上に降り立ったパラシュートの傘の中で両腕を上げ下げしながらもがく人影を見た子供達はその傘を取り除いた。そこには元の姿に戻った元気印の金男がいた。
「ああっ!ぼくに戻ってる・・・! バンザーイ!!」
元に戻った金男は、友達の拍手に見送られて大喜びで家に帰っていった。
思いもよらないどんでん返し
「ワーイ! ワーイ! ただいま!!」
金男は跳び駆けながら喜んで家の門を開き、開いてあった玄関に駆け込むと、ガキ大将らしい素足履きの靴を脱いで裸足で玄関に飛び込むと父親の声が聞こえてきた。
「お帰り」
「ああーーっ!?」
父親の声を聞いた金男が瞳が小さくなる程の大きく開いた両目と、豚の鼻のように鼻穴を大きくした鼻に、虫歯の無い真っ白な上下の歯とのどちんこがハッキリと見える程に口を開け、画面いっぱいに顔アップして驚いたのも無理も無かった。
返事をしてソファーで新聞を読んでいる父親はカネゴンの姿をしていたのであった。
「ヒヒヒヒヒ・・・ウイヒヒヒヒ・・・」
「父ちゃん、だまって人の落としたお金ひろったね!」
金男は珍しく呆れた顔をしながら呟いたが、その落としたお金が銀行で貪り食った時に自分が落としたお金である事を知らなかったのである・・・
- この時の呆れ顔の金男の髪をよく見て見ると、変身直前の笑顔の髪を比較してみると変身の影響からか僅かに延びている事が分かる。また、画面いっぱいに驚いた金男のアップ顔とカネゴンのアップ顔(例:アキラの部屋の窓に外から寄りかかる時の顔)の変身のギャップに萌えてくるものがある!?
「オトウサン」
「アアーッ!かあちゃんも!!」
両親とも金男が落としたお金をネコババした事によって、子供達に逃げられて家に戻った直後、自らの力でカネゴンに変身してしまったのである。
恥ずかしげに笑う二匹のカネゴンを前に、金男は呆れながらも目の前がマックラになり、変身直前に両親に「親よりお金が大事」と呟いた事を後悔するのだった・・・
金男くん、もう一度カネゴンに変身してみる?
キミが変身してカネゴンが生まれたおかげで、一年も経たないうちにブースカとピグモンが生まれたからさ・・・