概要
富山県に伝わる民話。
昔むかしある山奥の谷で十六人の木こり達と一人の飯炊きの爺さまが仕事をしていた。毎日毎日木を切る音が「コーン」「コーン」と木魂していた。
ある晩のこと。木こり達は小屋で晩飯を食べながら
「明日は、1番大きな柳の木を切ろう」
と話していた。
その夜のこと。
飯炊きの爺さまの夢の中に若く美しい女性が出てきて爺さまにこう言った。
「私は、谷一番の大きな柳の木の精霊です。どうか私を切り倒さないで下さい。でなければ皆さんの命もありません。」
それからというもの、爺さまは夢の女性が気になってとうとう一睡も出来なかった。
翌日、爺さまは十六人の木こり全員に「あの柳の木は切ってはいけない。」と言ったもののみんな年寄りの爺さまの話に聞く耳を持たなかった。そして、木を切ってると突然、「ギャーッ!」という叫び声が聞こえた。みんな背筋がゾワリとしたが、気のせいだと思い作業を続けた。
その晩、木こり達が晩飯を食べ終わるとなぜか突然強烈な眠気に襲われ、木こり達はみんな眠ってしまった。
爺さまだけが寝付けずにいると、突然、小屋の扉が音もなく開き一人の女性が入ってきた。爺さまは「誰だ」と叫ぼうとしたが声が出なかった。その女性はぐっすり眠っている木こりの一人に近づくとフッと息を吹きかけた。それを十六人全員にやり、最後は爺さまに近づいて来た。そして女性の顔見た爺さまはハッとした。その女性は夢に出て来た柳の木の精霊だったのだ。そして精霊は爺さまにニコッと微笑むと扉から出ていた。そして、爺さまはストンと眠りに落ちていった。
翌朝、爺さまはスッキリと目が覚め、木こりを起こそうとした。
しかし、木こり達は全員舌を抜かれて死んでいた…。
その後、この谷は十六人谷と呼ばれるようになった。
余談
まんが日本昔ばなしでこの話は屈指のトラウマ回と呼ばれている。
特に、木の精霊が木こり達を殺害するシーンはとんでもなくグロいことになっているので、閲覧の際には注意が必要。
また、ラスト等も少しアレンジが加わったものになっている。