南京子
みなみきょうこ
演:森田亜紀
大津馬中学に勤務する教員(担当科目は不明)で、野咲春花や小黒妙子らのクラス担任を務めている。
明るい色の髪が特徴的な若い女性(実写映画版では役者のこともあり、黒髪の中年女性になっている)。喫煙者。
非常に冷淡かつ排他的な性格の持ち主で、春花が転入してきた日も歓迎するどころか、「クラスをかき乱すような真似はするな」と言い放ったほど。
加えて徹底した事なかれ主義者でもあり、教師でありながら春花のいじめを黙認し、彼女の父が抗議に来た際にも素っ気ない態度で追い返した。
また自己防衛のために、クラスのリーダー格である妙子を友達と呼んで彼女の顔色をうかがっている。
このため、保護者はおろか生徒達からの人望は皆無で、彼女を軽視して授業態度の悪い生徒もおり、特に妙子の友人(端役の同級生)からは、「イカレ教師」と酷評されている。当の京子の方も、問題を起こす生徒のことを不快感を抱き、内心では疎んじていた。
ただし、その一方で、少しでも悪口を言われたと感じると、時と場所を選ばず嘔吐してしまう(そのため、友達として接していた妙子からも「ゲロ教師」と見下されていた)など、根は非常に情緒不安定でもある。
作中では、クラスの生徒が相次いで行方不明になっても、上記の性格が変わることもなく、久賀を問題児扱いした挙げ句に彼の母を異常者呼ばわりしたり、娘が行方不明になり事情を聞きに自宅に訪ねてきた橘吉絵の父に「問題を起こす生徒はいなくなって結構」と言って追い返したりしていたが・・・・。
実は彼女もかつては大津馬中学校の生徒だった。
しかし身体が弱かったことに加え、同級生の高橋という女子生徒を筆頭としたクラスメイト達から、嘔吐してしまう脆弱性を面白がられたことがきっかけで、過酷ないじめを受けていた。
その内容は、「『ロッカーに閉じ込められる』『制服を剥ぎ取られる』『全員一斉に罵倒する』などの暴力的手段によるストレスを与えて無理やり嘔吐させる」という妙子が実行した春花へのいじめが可愛く思えてしまうほどの苛烈なものであり、それがきっかけで、登校拒否に追い込まれていた(小説版では、当時の教師も彼女のいじめを黙認していた上に、面白がっていたような描写もある)。
上述の過酷ないじめは、彼女の中で深いトラウマとなっており、卒業式にも参加しておらず、それによる虚しさから、「現在の生徒達を自分の学友として見立て、廃校寸前の学校から共に卒業することで、中学時代の辛い記憶を塗り替える」ために教師となった。
故に、生徒達自体には無関心で、冷酷な態度を貫いていた。
終盤に小黒妙子の遺体が見つかったことで、それまで行方不明になっていた生徒の保護者達によって警察署に呼び出され、一斉に責め立てられる。
その際にも、妙子のことを「友達」扱いしていたのは保身のためだと明かすなど、酷薄な言動を見せていた。
しかし、自身の素性を調べた上で「いじめられることを恐れるあまり、クラスメイトである子どもに手をかけたのでは?」と難癖をつけてきた橘吉絵の父の行動により、かつてのいじめの記憶がフラッシュバックしてしまう。
錯乱して保護者の一部に傷害を加えて逃げ出したところ(実写映画版では、自身の過去のカミングアウトを優先にしたため、暴行せずに終わっているが)、通りすがりの除雪車に轢かれ、身体を細切れにされて即死。焼死した春花の両親と匹敵するほど凄惨な死を遂げるという顛末を迎えた。
自己保身のために、クラス内のいじめを放置したことが、結果として自分自身の死を招くという皮肉な結果をもたらしてしまう。
全てが終わった後、情緒不安定な南を心配して独り彼女を庇ったにもかかわらず無惨な死に様を目撃した教頭は、複雑な心境で、卒業式を開催していた。
いじめに適切な対処をしなかったこと、生徒へ非情な態度を取っていたことなどから、「堕落した教師」または「教師失格」と言える人物にあたる。
ただし春花や流美同様、壮絶ないじめによって人生・性格を歪められた被害者の側面もあること(作中にて、久賀の母でありモンスターペアレントでもあった正絵を見た際のやり取りや心境からもそれが窺える)、問題のある保護者達に自分がしてもいない罪をなすりつけられ糾弾されたことなどには、同情の余地があるのも事実である。