概要
押切蓮介によるサスペンス・ホラー漫画。『ホラーM』(ぶんか社)にて2007年から2009年まで連載されていた。
『でろでろ』をはじめとする作者の作品では定番の「お化け」や「妖怪」といった怪異が一切登場せず、自身初となる「普通の人間が創り出す恐怖」を描いている。キャッチコピーは「精神破壊(メンチサイド)ホラー」。このため登場人物達のほとんどは、主人公やその家族を除き、深い心の闇を持っている。
2013年に作者から本作の完全版を出すと発表され、同年の三月に双葉社「アクションコミックス」より完全版の上巻と下巻が発売された。
2018年4月7日には、内藤瑛亮によって上記の完全版を基にした実写映画版(R15+指定)が公開される。
またそれ以前に、黒史郎により小説版が製作された。
ちなみに小説版および実写映画版の内容は、漫画版に比べて登場人物達の心情などが深く描かれているが、終盤は独自の展開になっている。
あらすじ
半年前、東京の学校から大津馬中学校に転校して来た主人公の野咲春花。彼女は「よそ者」という理由でクラスメイトから壮絶ないじめに遭っていた。
優しい両親や最愛の妹の祥子、クラスの中で唯一味方をしてくれる相場晄の支えを受けて、春花は家族に心配を掛けまいといじめに遭っていることを隠し、中学校卒業までの残り2ヶ月間を必死に耐えようとする。
しかし春花へのいじめは悪化していき、いじめの事実を知った家族の勧めで、彼女は登校拒否を行う。そんな中、いじめグループが春花の留守中に彼女の家に乗り込み、両親と妹に危害を加え、家を放火する事件が起こる。
妹は大火傷を負いながらも助かったが、両親は命を落としてしまう。やがて事件の真相が露見することを恐れたいじめっ子は春花に自殺するよう強要。だが、それがきっかけとなって春花は事件の真相を知り、家族を奪ったいじめっ子達に壮絶な復讐を開始する……。
登場人物一覧
主人公。東京からの転校生。家族を大切にする穏和で心優しい少女であり、いじめにも攻撃的にならず懸命に耐えていた。しかし、いじめグループによって両親を殺され、更には妹が瀕死の重傷に追い込まれるという惨劇を受け、冷酷な復讐鬼と化してしまう。
春花の最愛の妹。姉妹仲は良く、春花からは「しょーちゃん」という愛称で呼ばれるほど可愛がられていた。春花を支える存在だったが、いじめグループの放火に巻き込まれ、瀕死の重体に追い込まれる。その後も回想や幻として度々登場する。
春花の同級生で、彼女の恋人。春花とミスミソウを重ねて見ていた。彼自身も転入により大津馬にやって来た。このためか、閉鎖的な教室の雰囲気に染まらず、クラスメイト達とは一線を引いており、春花の味方として振舞っている。
春花の同級生で、クラス及びいじめグループの中心人物。近寄りがたい雰囲気の持ち主であり、担任すらも従わせている。ある理由から春花を目の敵にしているため、周囲を利用し陰惨ないじめを行う。
春花の同級生。暗い性格をした冴えない生徒で、春花の前に妙子達からいじめの標的にされていた。自分を女手一つで育ててくれた母・佐山敦子を大切に思っており、いじめを受けていることを言い出せずにいた。
春花の同級生。いじめグループの1人。酒飲みの両親(実写映画版ではチンピラ兼シンパパにあたる父)から虐待されており、その鬱憤を晴らすため、積極的にいじめに加担している。
春花の同級生。いじめグループの仲間。友人同士であるため二人で行動していることが多く、どちらもいじめの主犯というよりは、妙子もしくは吉絵の取り巻きに等しい存在。
春花の同級生。いじめグループの1人。家族もしくは友人達の前ではお調子者として振る舞うが、本性は面白半分で人を傷つけて排除する残酷な男子。
春花の同級生。いじめグループの1人。凶悪な目つきに違わぬ非道な少年で、愛用のボーガンで殺傷行為を楽しむサディストでもある。
春花の同級生。いじめグループの1人。真面目そうな風貌をしているが、真宮とつるんでおり、性格と嗜好は彼と同様に残虐である。
春花のクラスの担任教師。教育者とは思えないほど冷酷な性格をした事なかれ主義者。春花へのいじめを黙認するのみならず、受け持ちの生徒が次々に行方不明になっても関心を持たずにいた。ある意図があって教師になったようだが…。
- 主要登場人物達の保護者
春花の両親、久賀の父、妙子と流美の母、相場の祖母以外は、何かしらの歪みを抱えている者が多い。いじめっ子達の保護者の場合は(春花が遺体を隠していたことや人気のない場所が犯行現場だったため、見つからず)次々に行方不明になったことで本格的に物語に登場し、相場の保護者であった彼の家族は主に回想にてその存在が詳しく描写されている。
子どもを虐待する吉絵の両親、娘を自分の言いなりにさせる妙子の父、モンスターペアレントの久賀の母、妻にDVをしていた相場の父、夫婦関係に執着していた相場の母など、内面に問題を抱えた人物達であることが明かされている。
加えて直接登場していない他の保護者達も、吉絵の父が「自分達の子どもはいじめを受ける側ではなくやる方」だと認めていた際に誰も否定していなかったことから、子どもをそうと知りつつ放置していた事実が示唆されている。
終盤で担任教師の南を揃って糾弾するが、暴走した彼女により、吉絵の父は唇を引きちぎられ、久賀の母は眼球を抉られるという暴行を受けた(実写映画版は南の突然のカミングアウトに唖然とした)。子ども達の遺体が見つかった後、保護者達の多くはその死を悲しんだ。
小説版では親達が子ども達にしていた仕打ちを後悔する描写があるが、後に彼らの犯した大きな罪を知り、苦しむ生涯を送ることになるとも語られている。
- 野咲和生、野咲花菜
春花の両親。登場人物の保護者の中では、流美の母と並んでまともな人物。春花同様に家族想いで、共に娘のことを気にかけており、いじめの事実を知った後は登校拒否を勧める。しかしいじめグループが引き起こした放火によって二人とも焼死してしまう。
- 野咲満雄
春花の父方の祖父。春花同様に家族想いな人物。
東京在住だが、野咲家の悲劇を知り、大津馬にかけつけ、春花と祥子の保護者として春花と一緒に暮らすようになる。春花の卒業後は、彼女と祥子を連れて東京に戻る予定だった。
春花が復讐をしていることは勿論知らず、彼女の心情を慮り、深く干渉せずに見守っていた。しかし終盤では春花の恋人である相場から理不尽な理由で暴行され、意識不明の重体になってしまう。
その後、回復はしたものの、家族をその死に目にも立ち会えずに亡くし、春花の復讐を止めることも出来なかったという失意を抱えて帰郷した(本作の漫画版におけるラストシーンでもある)。
なお、漫画の完全版では「帰郷の途中で幽霊になった春花が現れて対話する」、小説版では「亡くなった家族の夢を見て意識が回復した」という場面が描かれ、僅かに救いのある展開となった。
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復讐の教科書…いじめられっ子の主人公がいじめグループからいじめ隠蔽の為に自殺を強要された末、復讐鬼に豹変する点が本作と共通しており、こちらは事故のショックで尊敬する担任教師と入れ替わった主人公が担任の身体や教師の立場を利用し、壮絶な復讐に動き出す。
十字架のろくにん…いじめられっ子の主人公がいじめグループの手によって両親を殺され、弟を意識不明の重態に追い込まれたため、祖父に引き取られる境遇が春花と似ており、いじめグループへの壮絶な復讐の実行も共通。そのため、一部のユーザーから「令和版ミスミソウ」と評されている。
着信アリFinal…クラスメイトからひどいいじめを受けた主人公が、いじめっ子達を次々と惨死に至らしめ、壮絶な復讐劇を繰り広げる点が共通している。しかし復讐劇の黒幕は…。