概要
『ジョジョの奇妙な冒険』という、一世紀以上・何世代にもわたって「人間讃歌」を歌い続ける壮大な物語の、始まりと幕開けを告げる台詞。
顛末
そう…12年前 一八六八年の雨の日だった………
雨で崩れやすい崖でその日もまた、一台の不運な馬車が崖下に転がり落ちていた。
「ウヘヘヘへへへへへへ」
「おい見ろよッ! 事故だぜッ!」
しがない貧乏人のダリオ・ブランドーは、たまたまその現場を通りかかった。馬車が金持ちのものとみたダリオは、連れの女が止めるのも聞かずに馬車に近づいた。
赤ん坊を庇った貴族の女性と従者が亡くなっているのを見ると、ダリオは金品を漁り始める(薄気味悪い石の仮面には手をつけなかったようだ)。そのうち、貴族の男を見つけた。貴族の歯は歯医者に高く売ることができる。ダリオは男の歯を引っこ抜こうとした。
その時だ。
ガッギィ
なんとその男は生きていた!そして目を覚まし、ダリオの手を掴んだ!ダリオと女は盗みがバレるのではないかと慌てふためいた。そんな2人をよそに貴族の男:ジョースター卿は妻と子供の安否を問うた後、あろうことかダリオに感謝を述べた。ダリオを命の恩人と勘違いしているようだ。
「わたしの名はジョースター」
「命を救ってくれた礼をしたい」
「名のるほどのものじゃあありゃせんが ブランドーといいやす」
しめたとばかりに、ダリオは恩人のふりをした。
その後、卿からの礼金で酒場を立ち上げたが失敗し、ダリオは病に伏せていた。もう自身の先が長くないことを察したダリオは、息子のディオ・ブランドーに、一通の卿からの手紙を手渡す。そこへ行けば、きっとディオの面倒を見てくれるだろうからと。
「誰にも負けねえ一番の金持ちになれよッ」
程なくしてダリオは死んだ。ディオはその「遺産」を受け取ると、誰にも負けない男という野望を果たすためにジョースター家の養子になることを決意する。
ある日、ジョースター邸に少年を乗せた馬車が止まった。ジョースター家の一人息子であるジョナサン・ジョースターは、父の恩人の息子を迎え入れることを知っていた。馬車から降りてきた少年に、ジョナサンは問う。
「君はディオ・ブランドーだね?」
「そういう君はジョナサン・ジョースター」
かくして、メキシコから発掘された謎の石仮面にまつわる2人の少年と、彼らに連なる者達の数奇な運命を追う奇妙な冒険譚の幕が開けた。
余談
『ジョジョの奇妙な冒険』のこれまでの集大成を描く第6部「ストーンオーシャン」。
その締めを飾った台詞は、雨の中にぽつりと発せられた、1人だけど独りじゃあない少年の名乗りであった。作者が意図したのかは定かでないが、ある意味この台詞と対を成しているといえる。