概要
落語の演目の一つ。
数ある落語の中でもかなりの長丁場のネタで1時間は優に越える。
それでいて起承転結というものが一切なく息つくまもなくバカバカしいギャグを繰り広げるナンセンスな噺で尚且つ主人公も目まぐるしく変わる。冗長な部分を削ったら数分しか残らないという。
その性質上アドリブの自由度が高く同じ演者であっても二度同じ形で演じることがないのも特徴で、演者のギャグのセンスや10人を優に越える登場人物を一人で演じる演技力が求められるなど相当な力量が必要となる。
あらすじ
※この噺は演者によるバラつきが非常に多く、省略されていたり下記にはないくだりがあるので注意。
ある日一人の男がサバに当たって亡くなった。あの世にて生前知り合いだった伊勢屋の隠居と出会い語らいながらフェードアウトする。
その頃娑婆では大金持ちの若旦那が行きたいところは行き尽くし、遊びたいことは遊び尽くし、次はあの世へ行こうと、取り巻きの太鼓持ち、芸者の一団と共にフグを食べて死亡、彼らは閻魔のお裁きを受けるために進んでいき、その途中亡者の着物を剥ぎ取るという奪衣婆のことを話していたが、三途の川岸に茶屋が建っており、奪衣婆のことを茶屋の娘に尋ねると、遥か昔に諸事情によりその役目を下ろされたと言う。
三途の川の渡し船にのると、船頭の鬼がそれぞれの死因にちなんだオヤジギャグや九九で渡し賃を請求する。
対岸へと渡ると、冥土筋という繁華街にたどり着き、亡者達はそこを見物した後、閻魔の庁へ行きお裁きを受けることに。
先代閻魔の千回忌にちなんで一芸に秀でた者は極楽に送られるという計らいによって、亡者達は一芸を披露しようとするも、下品で芸とは言えないもので閻魔もすっかり呆れていて地獄に落とす。
その後お裁きの最後に医者、山伏、軽業師、歯抜き師が呼び止められた。彼らは生前アコギな商売をしたり、観客を危険に晒す見世物をしていたらしくその罪で地獄行きに。
地獄に落とされた四人は転んでもただでは起きない文字通りの曲者でそれぞれの特技を活かし、地獄の責苦をのらりくらりとかわす。
釜茹でにされそうになっても、山伏が印を結んで丁度いい湯加減の文字通りの五右衛門風呂にし、針の山に登るよう命じると足の裏が頑丈な軽業師が他の三人を担いで山の針を全部折りながら登りきった。
地獄をバカにされて怒り狂った閻魔は巨大な人食い鬼である人呑鬼を呼び出して四人を食わせようと企んだ。
噛み砕かれそうになるも、歯抜き師が「虫歯があるから抜いてやる」と言いくるめて歯を全部抜いてしまった。怒った人呑鬼は四人を丸呑みにし、四人は噛まれずに済んだため、無傷で人呑鬼の体内へ。
体内には紐や袋がたくさんあった。医者曰く「身体のあちこちに繋がっておりいじると鬼に何か起きる」とのこと。
医者の言うとおり、紐を引っ張ったり、袋を押したりすると人呑鬼がくしゃみしたり、腹痛を起こしたり、笑ったり、泣いたり、怒ったり、屁を放り出し始めた。
オモチャにされて耐えかねた人呑鬼は肛門から四人を放り出そうとするも、医者の指示により肛門の上で井桁を組まれてしまいどうやっても出てこない。
人呑鬼は閻魔に泣きつき……
「閻魔大王様、ワシはもうアンタを呑んでしまう他ない。」
「ワシを呑んでどうするんじゃ!?」
「大王(大黄)呑んで、下してしまうのや。」
元ネタとした作品
まんが日本昔ばなし - 本作の後半部分を元にした「地獄のあばれもの」という話がある。地獄に落ちた面子は医者・山伏・鍛冶屋の3人になっている、人呑鬼が登場せず閻魔大王が3人を飲み込むなどアレンジが加えられている。また、最後は3人が地獄から追放される形で生き返る。
ららマジ - 第8章「都囃子」にて、「地獄八景亡者戯」にちなんで地獄の中を探索する話となっている。