…貴方も、目の当たりにしてきたのではないですか?
黄金樹の世の欺瞞、矛盾…人の愚かしさと、塗炭の苦しみを
概要
『エルデンリング』DLCに登場する人物。
マヌス・メテルの大教会の玉座に座っており、クエストでは遺跡の地図を渡してくる。
性格はにこやかで人当たりもよく、教会にやってきた褪せ人にも友好的に接する。
どうやら元々はレアルカリア所属の輝石魔術師の一人だったらしく、いくつかの魔術もルーンと引き換えに伝授してくれる。
ここまで良くしてくれるのは本人いわく「ただあなたの助けになりたいだけ」との事で、遠回しに褪せ人を「星の輝きに導かれた存在」と呼称しておだてる振る舞いすら見せてくれる。
彼が褪せ人に渡した地図には「指の遺跡」という不思議な遺跡の道筋が描かれており、現地には「ヤツメ」という奇妙な生物や狭間の地でも見られた「ユビムシ」が大量に生息する。
ユミルはこの遺跡の最深部にてぶら下がる大きな「鐘」を鳴らすように依頼してくる為、彼の助けになりたいのであれば早速鐘を鳴らしに向かおう。
また、教会内には彼の部下である「夜の剣士ヨラーン」もおり、ユミルのクエストを受けると一部ボスにて召喚可能となる。
……さて、薄々察した人も多いであろうが、フロム作品のこの手のNPCの例に漏れず、非常に胡散臭い。
というのも、鐘を鳴らす度に彼は様々な話を褪せ人に聞かせてくれるのだが、その内容は端的に言えば「マリカと黄金樹はすでに壊れている」等のエルデンリング本編の終盤に判明する真実が主で、廃教会に住んでいる「ただの司祭」とは思えないような核心を突く内容ばかり。
しかも、小さなユビムシを抱きかかえて自分の子供のようにあやすという場面もあり、そのユビムシに語る内容もまた意味深なもの。
そんな人物がにこやかに褪せ人にアイテムをくれたり、魔術を教えたり、鐘を鳴らした報酬として貴重品をくれるのだ。あまりにも怪しい。
そして最後の鐘を鳴らす直前に、彼はある考察を褪せ人に述べる。
「世界が壊れつつある原因は、マリカや二本指が狂っていたからではなく、それらを導く役目を持っていた上位存在が狂っていたからだ」と。
彼が指示した最後の鐘がある場所は、なんとユミルの玉座の下に隠された巨大な空洞。
玉座の仕掛けを起動することで入れるその場所に向かうと、もう一人のユミルの部下である「夜の剣士アンナ」が突如として侵入し襲いかかる。
アンナを退け最後の鐘を鳴らし、その先で「未知との遭遇」を終えた褪せ人が地上に戻ると、今度はヨラーンが「ユミル様がお前のせいで嘆いている」と罵りつつ襲い掛かってくる始末。
立て続けに起こる不可解な事態にプレイヤーは困惑する中、ヨラーンも退けた褪せ人の前に現れたのは…
指の母、ユミル卿
…私の、輝ける星よ
見てください。私の指たちを
私は、本当の母になります
そして、母は一人だけでよいのです!
服の下より無数の指が生えた異形の肉体を晒し、褪せ人を消そうと襲いかかるユミルであった。
というわけで、まさかのボスとして立ちはだかるユミル。
ボスとなったユミルは指を用いた奇妙な魔術を用いながら戦う。
色んな意味で人間を辞めているのか、腹部からユビムシを出産するように召喚したり足元から岩で出来た指を周囲に生やしたりと、とにかく不気味な攻撃を使う。
挙動としては姿を消して瞬間移動(挙動としては「ミリアムの消失」に近い)を繰り返しつつ、接近拒否の「守り指」でカウンターしたり複数のホーミング弾を撃つ「輝石の多爪」でひたすら引き撃ちを行う。
とにかく逃げ回る上に定期的にユビムシを召喚するので、戦闘が長引くと多数を相手にする必要が出てくる厄介なボス。周回を重ねればユビムシも相応に固くなる。
それを防ぐためにも、如何にして遠距離攻撃の弾幕を凌ぎ、速攻で目の前まで接近するかが重要な戦闘となる。
耐久は低く強靭もあまり高くないため、懐に潜り込んだら一気に削りきってやろう。
撃破後の彼は「ユーリ」という者に詫びながら倒れていく。
男でありながらも「母」になろうとし、その肉体を人間離れした異形へと変じさせていたユミル。
彼が一体何を目的としていたのかは最後まで明かされなかった。
…ごめんね、ユーリ
貴方の母に、なりたかった…
ただ、教会の片隅の墓場にて、ユーリの名が刻まれた墓標が静かに佇んでいた。
そこに葬られた存在が人なのか、それとも「指」なのかはわからない。
撃破後に手に入るユミル装備一式の説明を見る限り、彼は元々レラーナに仕える魔術教授であったという。
だが、レアルカリアの魔術師たちが大切にしている「月」というものを彼は信じなくなっており、代わりに「指」に関連するものを信奉するようになった。
余談
常にユビムシを抱いている様子や終盤での戦闘時に「母」を自称する姿から、ユーザーの間では「ユビママ」という愛称で親しまれている。
彼が手のひらを返したように褪せ人に突如襲い掛かってきた理由は不明。
ユミルの言うとおりに各地の鐘を鳴らし、その果てに出逢った「ある存在」との接触を終えたあと、いきなりヨラーンから「お前のせいだ」と罵られて攻撃された挙句、
突然母を名乗りながらユミルが登場して襲い掛かるという意味不明過ぎる状況から、DLC一番の謎としてプレイヤーの頭を悩ませている存在。
鐘を鳴らすのはさておき、褪せ人が「ある存在」と出会う事が予想外だったのか、その「ある存在」を倒してしまった事が問題だったのか、
もしくはそれらも予定内の出来事で最後に褪せ人を始末することで、最終目的である「母」とやらになるのが目的だったのか、様々な考察がなされている。
戦闘形態の彼を模した服「指の長衣」には「私の指が、世界を救いへと導くのです」という気になる一文があり、マリカや黄金樹の導きが間違っていると断じていた言動を顧みても、黄金律の在り方に疑問を抱き、それを変えようとしていたのは確かだろう。
実は「母になる」という事を目指していたのは終盤にて襲いかかる前から示唆されており、ある段階で一度だけ教会の庭にあるユーリの墓の前にて独白するというイベントが発生する。
そこでは「もう少しで本物の母になれるから、そこでもう一度あなたを産んであげる」と口にしており、どうやら「ユーリ」という存在は彼が文字通り『産んだ』存在であるようだ。
また、この独白やボス戦時の彼は「女性口調」で喋っている。性別的な意味でも彼は「母」を目指していたのだろうか?
ちなみにこの段階でも彼は玉座を空にしているので隠しハシゴを出して指遺跡に入れるし、アンナも襲いかかってくる。
ここで勝とうが負けようが、後ほどユミルに話しかけると「さっき見たであろうものは忘れなさい(意訳)」「多分気のせいです(意訳)」と誤魔化してくるという小ネタがある。
「長生きの出来ない不完全な子供しか産めない」という要素や元々レアルカリアの魔術師であるという点、なにより「母」という要素はまるで月の名を持つ女王を思い起こさせるが、当然ながら深く語られてはいない。