概要
穢土に君臨する大天魔・夜都賀波岐の一柱。
大獄という名称はあくまで西側が便宜的につけたものであり彼の本来の名ではない。
黒い甲冑に身を包み、虎を模した兜で常に顔を隠す謎の人物。
等級
『太極・無間黒肚処地獄(たいきょく・むげんこくとしょじごく)』。
「唯一無二の終焉をもって自らの生を終わらせたい」というかつての彼が抱いていた渇望を具現化した理。
その能力は『その拳に触れたものが誕生して一秒でも時間を経ていたものならば、物質・非物質を問わず、たとえ概念であろうともあらゆるものを消滅させる』こと。
どんなものであれ、歴史を刻んでいれば強制的にその幕を引くというご都合主義の体現である。
大獄の拳を受けて無事でいられるのは以下のものだけ。
穢土のように発生から時間の停止した存在。大獄と同質の死そのものである存在。あるいは単に、彼ら天魔の源である夜刀の法を強度で上回る存在。この三つのみである。
よって、二十四にも及ぶ次元断層、衝撃を相転移する絶対障壁で防御しようが拳に触れた順に貫通。そのまま身体を触れられ死ぬ。
拳に触れたら駄目なら、こちらの攻撃が拳に接触しないように、肘から先の両腕を残して上半身を吹き飛ばせば良い。
というのは無駄だった。死をもって死を殺し、滅したはずの鎧が虚空から像を編み上げ再び、傷一つなく無傷の姿で立ち上がる。
斬首された頭部は大獄が何よりも奉ずる究極の死そのものであるため、甲冑の下にあるそれを見たが最後、前述した三つの例外のうち二つまでが無視される。
即ち、大獄に至高の死を与えた夜刀を上回る者でなければ回避不能。空しく滅ぶのみである。
下手をすれば穢土そのものを消滅させなねない、まさに幕引きの極致と呼ぶにふさわしい能力。
それは、名を無と号する、あってなきが如しもの。死の終着にある極点。無い。無い無い無い――血肉、大気、森羅万象、何一つ無い。死の後には骸が残る。だがこれは、形容すら出来ぬ虚無の深さ。絶無の波動に次などない。骸から蘇る抵抗や死を体得した事実さえ等しく蝕み消し去り消滅させ、ついには――死の領域さえ喪失し――死滅する。
その戦闘能力は非常に高く、億分の一まで薄められた残滓のようなものだとしても、覇吐達を無限に殺戮できる力を持つ。
随神相は三つ首の虎。死の息を吐き、口蓋から暗い破滅の力を凝縮し破壊光を放出する。蝦夷から不二霊峰まで総軍悉く滅せよと口蓋から放たれた滅亡の歪みは山脈すら滅する神の掃射。巻き添えに弱卒の屍を撒き散らし迫る破壊光は小国なら滅亡必至の烈しき負の閃光。
収束する波動に天地鳴動が引き起こされ攻撃の予備動作に生じる圧力だけで兵が次々と身体を潰され、ひしゃげて散る。
随神相の中は、硝子の壁と砂の大地で出来ている闘技場。世界の区切りが硝子で、上空から降り注いでいる砂の滝と一面へ敷き詰められた砂の海。眼下を埋め尽くす暗闇の砂漠は、等しく死の属性を帯びており、仮にここへ弱卒が紛れたならば、踵が接地した瞬間に物言わぬ屍となるだろう。
求道神である夜行でも、直立しているだけで、生命力を失っていく。そのため死界の砂を殴りつけ敵に浴びせると一時的に動きを奪うこともできる。ここで死ねば肉片ではなく砂となって、ここを満たす死の一つへと堕ちていく。
法則同士の戦いは、通常ならば優性が劣性を塗り潰し、原則、色は一つのみ。両立するなど出来ないのだが、夜摩閻羅天と無間黒肚処地獄は同色。ゆえにそれが成り立たない。異端にも似通った二つの太極。一つの地獄に対して発生源は複数という異常事態に、染料が地獄を満たし荒れ狂う。死滅と遺骸の過剰供給が生じ始めた。
その結果、合計して二百十七。殺し殺され殺し尽くした殺戮の結果、骸(すな)が満ちる。砂漠は徐々に上昇し始め、想定以上の圧力に異界それ自体が軋み、大獄の鎧にひびが入る――外界を区切る硝子に亀裂が走る。つまり満杯になると大獄は敗れる
正体
前作Diesiraeの登場人物であるゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲンの残滓が