概説
1576年に勃発した「天正伊賀の乱」を舞台とした歴史小説。
伊賀の忍「無門」を主人公としながら、和田竜作品特有の多角的な視点から描かれ、両陣営の状況をリアルタイムで把握しながらストーリーを追うことが出来る。
最大の見どころは“化かし合い”。
作中、実に中盤に至るまで巧妙に伏線が張られた計略に、残された資料から再現された現実的ながら目を疑うような忍術の数々、そして終盤の怒涛の展開とどんでん返しの連続と、読み手を決して飽きさせないスリリングなストーリーが展開される。
小学館から『ゲッサン』の連載作品としても出版され、さらに嵐の大野智主演による劇場版としても製作・放映された。
あらすじ
時は戦国。伊賀国は、小国ながらも忍び働きによって勝手気ままな暮らしをしていた。そんな伊賀国で随一の腕を誇る無門は、怠け者ながらも女房のお国にどやされ渋々百地家で仕事をこなす日々を送っていた。そんなある日、無門は百文の報酬で他家の忍びを殺める。しかし、それが伊賀の忍び軍団と伊勢の織田信雄軍との壮絶な戦いのきっかけとなるとは、この時は思いもよらなかった――。
登場人物
主要人物
無門(演:大野智)
伊賀国一の忍び。二刀を使い、その斬撃は目にも止まらないほど。性格は怠け者で飄々としており、斜に構えている。その一方で殺しや裏切りには全く罪悪感を抱かない残忍さと、目先のことしか頭にない単純さを持つ。ただお国には頭が上がらず、いつも彼女の機嫌をうかがっている。
お国(演:石原さとみ)
無門の女房(予定)。元々は安芸国の武将の娘で、ある任務で一目ぼれした無門に攫われ、金銭的な苦労をさせないとの条件で女房となった。武家の出身であるため、伊賀者の価値観には馴染めないでいる。美人だが気位が高く、(武家から見ると)稼ぎの少ない無門にいつも文句を言い、稼ぎがよくなるまで夫婦になるのは認めないと無門の家を占拠している。
文吾
伊賀の地侍百地三太夫に仕える下人。自分の命を第一とする性格で、殺戮を好み、嘘や裏切りを平気で行い、仲間を見捨てることに躊躇も罪悪感もない。ただしこの性格は彼一人に限らず、伊賀者ほぼ全員に共通する価値観。無門をライバル視しているが、その腕は今のところ遠く及ばない。後の石川五右衛門。
下山平兵衛(演:鈴木亮平)
伊賀の地侍下山甲斐の嫡男。無門が互角と認めるほどの二刀使い。殺しを嫌い、身内や敵にすらも情けをかける性格で、伊賀者としては「変人」。百地家との合戦で無門に弟次郎兵衛を殺されるが、それに対して恐ろしい程無感動な父や伊賀者たちに絶望して出奔。織田信雄に伊賀攻めを進言する。
伊賀者
伊賀の地侍で、伊賀の政治を決定する十二家評定衆のメンバー。無門の雇い主。下人を人とは思っていない酷薄な人物。自身の利益のために織田信雄との戦を画策する。
下山甲斐(演:でんでん)
伊賀の地侍で、十二家評定衆のメンバー。平兵衛の父。自らの子を謀略に利用し、子の次郎兵衛が殺された際も「次男は下人なので死んでも関係ない」と言い切る薄情な性格。百地三太夫と共謀して織田軍を挑発する。
音羽半六(演:きたろう)
伊賀の地侍で、十二家評定衆のメンバー。甲斐や三太夫の謀事は知らなかったが、その真意を知ると協力するようになる。他の地侍たち同様情は薄い。
木猿
古参の伊賀者で、土遁の達人。
伊賀の若い忍たちを、老兵ながら見守っている。
かつては柘植三郎左衛門の家臣だった。
鉄
伊賀で武器の制作や加工を生業としている少年。お国に家を叩き出された無門は、彼の家に居着いている。元々は近江国から流れてきた人物で、生粋の伊賀者ではないためか、恥や恩義といった感覚を持ち合わせている。
織田家
織田信雄(演:知念侑李(Hey!Say!JUMP))
織田信長の次男。伊勢の北畠家を乗っ取り、伊勢、志摩に駐在している。高圧的で神経質な若者だが、その裏では偉大すぎる父の影に苦しんでいる。そのため、父に禁じられていた伊賀攻めを独断で行おうとしてしまう。
日置大膳(演:伊勢谷友介)
信雄の家臣で、元北畠家の家臣。五人がかりでなければ引けないという弓を用い、源為朝にも例えられる強弓使い。一矢で敵の首を弾き飛ばせるほどで、人外じみた膂力の持ち主。道理や忠義を重んじる性格で、自分に旧主具教を殺させた信雄とは折り合いが悪い。
長野左京亮(演:マキタスポーツ)
信雄の家臣。大膳の親友で、彼と同じく元北畠家の家臣。信雄に心服しているわけではないが、主変えを戦国の習いと割り切っており、織田家には一応忠実。大膳と並び称される武人で、大太刀使い。一撃で木の幹を叩き切り、なおかつその後ろにいる人間も両断してしまう腕前。
柘植三郎三右衛門
信雄に仕える元北畠家家臣。中年だが老人のような性格や外見をしている。伊賀の忍びの出身であることから、大膳や左京亮には見下されている。実は平兵衛と同じタイプの「変人」。かつては十二家評定衆に名を連ねていたが、ささいな諍いで息子を殺され、誰もそのことを気にも止めなかったという経緯から伊賀を強く恨んでいる。平兵衛を信雄に引き合わせ、伊賀攻めを進言する。